表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生音楽家 ~男女比が三毛猫の世界で歌う恋愛ソング~  作者: 赤野用介@転生陰陽師7巻12/15発売
第2巻 ツチノコ無双

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/79

第51話 ドラマ第1話・放送翌日

 月曜日の朝。

 撫子高校の教室には、週明け特有のざわめきと活気が広がっていた。

 土日を挟んで、話題は豊富。

 さらに数日話していなかったので、話し足りない。

 かくして女子達は、椅子を方々に回転させて周囲とおしゃべりをしていた。

 俺を前後に挟む席の咲月と小春も、声を掛け合っている。


「どじっ子めー」

「ごめーん」


 咲月の抗議は、土曜日の撮影についてだ。

 ドラマでは、小春の転倒によって咲月が噛まれて、感染している。

 二人が脱落するのは台本で決められていたことだが、二人は役に成り切って抗議と謝罪をしていた。


 もっとも二人は、具体的に何がどうなったとは言わない。

 クラスには、所属事務所の判断でドラマに出演しない同級生が居る。

 撮影カメラに映らないように廊下側の席になっており、非出演者達に対しては、ドラマの内容を話すことはできない。


 ――俺達は窓側の席だから、廊下側には聞こえないだろうけど。


 咲月と小春は、かなり慎重を期している。

 もちろん、放送されたドラマについて話すのは自由だ。

 ドラマ第1話は放送されており、クラスの話題を席巻していた。


「もう視聴率が出ていたよ」


 小春がスマホを見せてきたので、俺は画面を覗き込んだ。


――――――――――――――――――

【芸能速報】ドラマ『セカンドフレア』が驚異の初回視聴率26.7%!

      若い男性の連続ドラマ出演は、"50年振り"


 昨夜21時から放送が開始された撫子テレビのドラマ『セカンドフレア』第1回が、初回視聴率26.7%を記録し、テレビ界に激震が走っている。

 ドラマの初回視聴率が26.7%以上を記録するのは、2003年以降では初。エンターテイメントが多様化した近年、届かない数字となっていた。

 最大の話題は、主演を務める森木悠(15)だ。

 30歳以下の男性が連続ドラマに出演するのは、実に50年振りとなる。


 ドラマは『2度目の太陽フレアで変異したウイルスがX染色体に結合し、感染者がゾンビ化する世界で、高校生達が感染者の押し寄せる学校からの脱出を目指す』という斬新な設定。

 主演の森木は、登録者1200万人の動画配信者、2曲のミリオンヒットを記録した作詞作曲家、ダブルミリオンを出した歌手、CM出演経験もある。

 メインヒロインは、5歳からテレビ番組のレギュラーを務めてきた大人気マルチタレントの緑上優理が担う。

 ドラマ主題歌とエンディング曲には、いずれも森木が作詞作曲してミリオンヒットを記録した『白の誓い』と『歩んだ道』が採用されており、出演者には『歩んだ道』のボーカル桃山咲月(15)も名を連ねる重厚な布陣だ。


 社会評論家の三宅和子氏は「テレビから若い男性の姿が消えて半世紀。多くの視聴者にとって、実際の若い男性を見ること自体が新鮮な体験です。さらに二度目の太陽フレアという設定も、視聴者の関心を引き付けています」と分析する。

 SNSではトレンドを席巻。撫子テレビの公式サイトには、視聴者のコメントが10万件以上も寄せられるなど、世間の大きな反応も見られた。

 テレビ関係者は「森木悠さんの出演により、テレビドラマの可能性が広がった。もっと色々な番組にも出て頂ければ」と評価している。

 ドラマ『セカンドフレア』は、毎週日曜日の夜21時から全12話を放送予定。

 芸能ニュースオンライン 7月7日  7:50

――――――――――――――――――


「何か凄い評価だな」

「それはそうだよ。26.7%なんて、バラエティ番組でも過去30年間でトップ3に入るよ。最近だと、多分無いよ」


 視聴率について、タレントの小春が力説した。


「それって、記事にあるエンターテイメントの多様化が理由か」

「そうそう。昔と違って、今は渋いんだよ」


 現役タレントが言うのであれば、そうなのだろう。

 視聴率が下がって、テレビCMの単価も下がって、芸能人への報酬も下がる。

 昔は景気の良かった芸能界も、今は極一部を除いてカツカツだ。

 すると過去と比べても高い視聴率26.7%は、大事件なのだろう。


「一応、俺の動画チャンネルでも、テレビを見るように誘導したりはした」


 テレビは見ずに、動画だけを視聴する層も居る。

 そんな動画勢に対して、放送前に動画で、テレビを見てねと宣伝してみた。


「20時台に宣伝していたね」

「何だ、チェックしていたのか」

「もちろん。ドラマ共演者だからね」

「それは熱心だな」


 勉強熱心な小春に、少し感心した。

 もっとも小春は、子役からタレントという1割以下の登竜門を突破している。

 道化師というボケ役での突破だが、サーカスでもピエロが一番難しくて、賢い人でなければ担えない役割だ。


「お見それした」

「全然、もっと熱心に勉強する人は沢山居るから」

「それは大変な世界だ」


 ドラマのシナリオに物申せる立場だが、必要なこと以外は自重しようと思った。

 もっとも、現在の生き残りは4人。

 主演の俺とメインヒロインの優理、そして山岳部の千尋と運転手役の元部。

 第9話まで撮影が終わっており、残りは3話分なので、今更何かは出来ない。

 放送回では、7月から9月初めまでが終わっている。


 ――前任の男性俳優、あとちょっとだったんだけどなぁ。


 あと少しの我慢で、撮影は終わっていたはずだった。

 第10話は車で移動して、現地の宿に到着するまでだ。

 第11話は、主演があまり登場せず、宿の人達が全滅するシーンが中心になる。最後のほうで俺達が到着して、日本刀を持っていた感染者と出会い頭に遭遇して、押さえ込んで日本刀を奪い、倒す。

 撮影シーンは、とても少ない。


「赤目四十八滝って、伊賀忍者の修行場なんだよな」

「忍者の博物館があって、忍者の服や手裏剣、本物の日本刀もあるみたいです」


 俺の呟きに咲月が反応した。

 ちなみに口調は、ドラマに登場していた幼馴染みの咲が脱落したからか、咲月の丁寧語に変わっていた。

 元々、学校生活とドラマの使い分けで混乱しないために、呼び方や口調をドラマ側に統一していたのだ。

 咲の役割が終わったことで、口調を元に戻したらしい。

 確かに咲は死んだ。

 だが俺は、何となく抵抗した。


「本物の刀も買えるらしいな」


 ふと、咲月に対する敬語を止めてみた。

 すると咲月は、目を少し開いて驚きを示した後、相変わらずのポーカーフェイスで話しを続ける。


「刀はお土産として買えて、一振りで数十万円から百万円するそうです。購入後は銃刀法所持許可の手続きもしてくれるそうですよ」

「それは完全に本物だな」


 咲月への敬語を止めたら、どんな反応になるのか。

 そんな風に思いながら咲月を見ると、アイコンタクトで、どちらでも大丈夫ですといった表情を浮かべていた。


 ドラマでは赤目四十八滝の忍者博物館に行った宿の客が、日本刀を手に入れる。

 だが取りに行った時に噛まれて、宿に戻って発症し、従業員や客を噛んだ。

 それによって宿の従業員は、俺達が到着した時には全滅している。宿泊予定の宿のみならず、赤目四十八滝は壊滅である。


 最終回の第12話では、日本刀を手に入れた感染しない俺が、なんとか感染者を排除して定住したという結末になる。

 ストーリーを思い浮かべていると、スマホが振動した。


「あぁ、監督からメールだ」


 画面を覗き込むと、昨日送った曲を採用するという内容だった。

 ぜひ使いたいから、正式に曲にしてくれと依頼している。

 俺は自分のスマホを咲月に差し出した。


「……ジャパン交響楽団に依頼ですね」

「そうなるな。連絡を頼む」

「分かりました。黒原マネージャーに伝えます」


 咲月はサブマネージャーとして、業務提携しているアーティストの俺からの依頼に応じて、マネージャーの黒原へのメールを打ち始めた。

 結局咲月は、揺らがなかった。

 なんとなく、咲月の頰を引っ張ってみたいと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の投稿作が、TOブックス様より刊行されました。
【転生陰陽師・賀茂一樹】
▼書籍 第7巻2025年12月15日(月)発売▼
書籍1巻 書籍2巻 書籍3巻 書籍4巻 書籍5巻 書籍6巻 書籍7巻
▼漫画 第2巻 発売中▼
漫画1巻 漫画2巻
購入特典:妹編(共通)、式神編(電子書籍)、料理編(TOストア)
第7巻=『七歩蛇』 『猪笹王』 『蝦が池の大蝦』 巻末に付いています

コミカライズ、好評連載中!
漫画
アクリルスタンド発売!
アクスタ
ご購入、よろしくお願いします(*_ _))⁾⁾
1巻情報 2巻情報 3巻情報 4巻情報 5巻情報 6巻情報 7巻情報

前作も、よろしくお願いします!
1巻 書影2巻 書影3巻 書影4巻 書影
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ