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第十三章 運命の入れ替え戦! Ⅸ

「前に出ろ! ラインを上げろ!」

 フォザンはさっきの笑顔とは打って変わっていかめしい面構えになり、チームメイトたちに前出ろと叱咤した。


「この試合で勝って昇格するぞ!」

「死ぬ気で、いや、この試合で死ね! 死んで上がれ!」

 ツートップのコバクスとニッケがそう叫んでチームメイトを叱咤し、「おう!」という返事が返ってきた。無口なダライオスも無言ながら頷いた。


 フォザンはボールを思いっきり蹴り上げて、センターラインまで上がったディフェンダーにパスした。

 相手がずんずん前に出て、シェラネマーレの選手たちは後ろに下がらざるを得なかった。


「試合で死ねだなんて」

「それだけ必死なんだ、お前も必死になれ!」

 龍介が相手の言う事に驚いたのを見て、ジェザが叱咤する。

(これがプロか……)

 一試合一試合全力で、とは言うものの。観念でしか理解していなかったと痛感した。


 そうする間にもファセーラの選手たちはパスをつなぎながら前に出る。

「ボランチのダライオスの動きをよく見ろ! ダライオスにパスさせるな!」

 ルーオンがフィールドプレーヤーの選手たちにコーチングの叱咤を飛ばす。

 ボランチとはポルトガル語でハンドルを意味し、フォーメーションの中心にいて文字通りハンドルのようにチームの動きを制御する役割を負う。

 ここは異世界だが、龍介の世界の言葉も取り入れられていた。 


 ダライオスは無口ながらも真ん中にいて、必要に応じてボールを四方八方に渡してファセーラの試合展開を大きく左右してきた。

「皆そう言うんだなこれが」

 ニッケがルーオンのコーチングを聞いて、少しばかり苦笑いする。が、よく見ているとは言わない。


「ダライオスはオレは引き受けているから、他はツートップを抑えろ!」

 リョンジェが皆にそう言う。

 ファセーラの前進の原動力は、ダライオスとコバクス、ニッケの3人。ダライオスだけ抑えても意味がないと、リョンジェは言った。

 他のディフェンダー、ウォーラにジョンス、サニョンがそれぞれコバクスとニッケに目を光らせる。


「監督、いいんですか?」

 ドドパがレガインに問う。

 気が付けばレガインは声を出さず、シェラネマーレの選手たちを静かに見守るのみ。


「そうだな。あいつらの自主性に任せてみようか」

 試合を見ながら、レガインも思うところがあるようだ。それはドドパも同じで、余計なことは言わない。


「くそ、割り切って守りに入ったか」

 ファセーラは押してゆきたいが、ダライオスのみならずツートップのコバクスとニッケの前にも立ち塞がり。行く手を阻んで、好きなように動かせない。

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