第十三章 運命の入れ替え戦! Ⅶ
自陣に戻ったリジルが迫る。ギャロンにトゥーシェンも。だが、ボールは思いっきり逆サイドに向けての長い横パスが放たれた。
ボールの向かう先にはコバクス。相手が左サイドを、自分から見て右サイドのボールに意識がゆき、ザンジャとウォーラら左手の選手も左手からやや移動し真ん中のへんにいた。
そこでスペースが明き、すかさずコバクスが駆け込んだわけだ。
「初歩的なミスするな!」
レガインは叫んだ。ドドパは邪魔にならないように余計なことは言わなかったが、同じことを考えていた。
(だから入れ替え戦を戦うことになったか)
プロになるくらいだから素質はあるのだが、何かが決定的に欠けていることは否めなかった。
そんな選手が多数を占め、そうでない選手は数えるほどしかいない。
何が欠けているのかを言葉にするのは難しいが、運動神経ではない、創造性や想像力の部分で引けを取っているようだ。
創造性や想像力が、次にどう動けばよいのかを導き出すのだから。
ボールはよく飛んで、コバクスの足元に落ちた。ザンジャとウォーラが迫ったが。その時にはドリブルでゴール目掛けて駆けた。
ゴール手前には相手ディフェンダーが詰めているが、ダライオスとニッケもすかさず紛れ込んでいた。
龍介も戻って守備に加わる。
「ダライオスはオレに任せろ!」
そう言うのはリョンジェだった。ダライオスは油断ならぬ選手。それをリョンジェが引き受けると言い、ぴったりと張り付く。
そういう役割分担をはっきりさせるのも、大事な戦術だった。
コバクスはルーオンから見てゴールのほぼ真横の線上にいる。そこからゴール手前のダライオスにボールをパスするかと思われたが。
なんと自分の左足で打ってきた。
ボールは勢いよく、ゴールの右上隅を狙って飛んだ。
「させるかあ!」
ルーオンは跳躍し、ボールを掴み取ろうとし。そこにダライオスやニッケたちも迫るが、すんでの差でルーオンがボールを掴み取った。
「うおおッ!」
ダライオスとニッケと、守備のジョンスとウォーラとルーオンとが、空中でもみくちゃになりながらひと塊にぶつかり。
ルーオンとジョンスは体勢を崩して横になり、肩から着地するように落ちた。他は足から着地して、ゴールから離れる。
「いってえ」
やや打ったようだが、ジョンスとルーオンは痛みも少なくすぐに立ち上がった。
ルーオンはボールにしがみつくように腕を回して抱えているが、片手を離して無言ながらジョンスと手をたたき合い互いに励まし合った。




