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第十二章 守るべきもの Ⅳ

「承知しないとは、どういうことですか?」

「ふん、言うものだな。なんなら己の命を懸けてここにいるサポーターに詫びる覚悟があるのか」

 貴族なのに柄が悪いサポーターが嫌味を言う。それを鋭いまなざしで睨み返す。


「ちょ、ちょっと、なんか……」

「う、うん、大変なことに……」

 テンシャンとローセスが心配そうに眺める。同じように穏健派の人たちも、心配そうに事の成り行きを見つめていた。


「その前に、ひとつ言いたいことがあります。先週の試合で狼藉を働いた者らがいると」

「なに、へぼオーナーのくせに、サポーターを責めるのか。そうなったのも自業自得ではないか!」

「おお、言ってやったぜ。それがどうした!」

 詰め寄る者たちは当事者だった。自ら告白するところ、反省のはの字もない。


 平民のみならずシェラーンと同格の貴族もいて、恵まれた環境で教育も受けたはずなのにと、なんとも情けなかった。

「あれ、ゴール裏はなにやってんだ!?」

 シェラネマーレのゴール裏の騒ぎはピッチからもわかった。龍介やリョンジェ、カージェンは練習を止めてゴール裏を見た。


「お嬢さま! お嬢さまがゴール裏に!」

「ほんとだ!」

 シェラーンがゴール裏座席で数名のサポーターと対峙しているではないか。警備兵も駆けつけ、一触即発の事態だ。

「黙れッ!」

 詰め寄るサポーターにシェラーンは一喝した。


「どのような理由であろうと、乱暴狼藉は許さん! 私は確かにへぼオーナーだ。しかし、クラブを守る責任がある!」

 威風も堂々とそう宣言する。が、詰め寄るサポーターらも引き下がらない。

「こやつ、サポーターに命令するのか。入場料を払っている客に向かい!」

「金を払えば神になれると思っているのか。思い上がるな!」


 シェラーンは詰め寄る者たちを見据えて。右手を横に伸ばし通路出入り口を指し示して、

「お前たちはサポーターでもなんでもない。出てゆけ!」

 と叫んだ。


「金を払っているのだぞ。返してもらえるのだろうな」

「いいや、返さぬ。入場料金は罰金として徴収する」

「何ッ!」

「ふん、物は言いようだな。なんとけち臭い」


 返金はシェラーンも考えたが。金銭的な損がないとなればつけあがることは考えられた。そこで、反省を促す意味で返金はしないことにした。

 だがそれに対して、詰め寄る面々は目を血走らせてさらなる怒りをあらわにするのであった。

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