第五章 セカンドハーフ Ⅴ
ジョンスとサニョンは龍介とリョンジェと同じ、黒髪と黒い目のアジア系っぽい見た目だった。
「お前のアタックが相手を混乱させたみたいだな」
リジルもこれは認めざるを得ないようで、ふてぶてしい態度ながら肩をたたき、
「よくやった」
と、とりあえず称えてくれた。
龍介はジェザとともにゴール前付近に着き、相手選手の集まる中、これをかく乱するかのように前後左右を駆け巡ったが。ヴァゼッラの選手はまんまとかく乱させられたようで、それがオウンゴールにつながったようだ。
やらかした選手は愕然とし、崩れ落ちた。
これで3対2の1点差まで差を縮めた。もう一息だ。
合間に飲み物で水分補給をし、位置について試合が再開された。
「守るな、攻めろ!」
ヴァゼッラの監督は叫んだ。守備を固めて点差を守ろうとも思ったが、相手は果敢に攻めてくる。ならば、下手に守らず攻め続けてもう1点を取ってやると、意気込んだ。
「油断したようだな」
ヴァゼッラの監督、フォソンは独り言ちた。
あの異世界から来た選手は、ぱっと見普通の小柄な若者だが、秘めるものがあると認めざるを得なかった。
今度はヴァゼッラの選手たちが強く出た。少々強引でもボールを奪い、相手を倒してファールを受けることに対しても物怖じしない。
審判は意図的でなかろうがひどい接触に対してイエローカードを出す。そういったところも龍介の世界と同じだ。ともあれ、そういったファールを恐れず向かってこられるのはやっかいだ。
時間は?
大型ビジョンもスピーカーもないが、大きなのっぽの時計がピッチ脇に置かれて、振り子を揺らす。それは職人の手による精巧な機械式の時計だった。
その時計は45分刻みのサッカー用に作られている時計だった。針の位置を見れば、45分のレギュラータイムの残りは5分。アディショナルタイムがどのくらいか、長くてもあと10分弱か。
「10分あれば点を取れるぞ!」
それぞれが声を掛け合い、気持ちを奮い立たせる。
ヴァゼッラの選手たちの猛攻をどうにか防ぎながら、攻撃の機会をうかがう。しかし、なかなか反撃に転じることができない。
猛烈なシュートが何度も何度も放たれて。それをひたすらに跳ね返すことの繰り返し。一方的な展開だった。
ルーオンが前に進み出てボールをパンチングで弾く。しかし弾かれたボールはすぐさま他の選手によってシュートされた。
「いかん!」
疲れもあって判断力の鈍りは否めない。ルーオンは4点目を覚悟した。が、咄嗟にゴールに飛び込む影があり。ボールはゴールラインをまたぐ直前に蹴り上げた選手がいた。




