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第9話 婚約したって働きたくないでござる

 屋敷を守っている護衛の騎士たちにメタルメアリの性能実験を付き合ってもらった。

 さすがに侯爵家の護衛だけあってみんな凄く強かった。

 というかこの世界の人はみんな本当に運動神経が良いね。

 いや、もう運動神経というか身体能力?

 もうほんとびっくり!

 でももっとびっくりしたのはメタルメアリの性能がそれをさらに上回っていたこと。

 だって身体の芯まで鉄だもんね!

 そりゃ勝てないよ!

 いくら剣で斬りつけられようと、魔法をぶつけられようとビクともするわけない。

 でもってメタルな肢体から繰り出される重くてすばしっこい攻撃により護衛の人たちはあっさりと制圧されてしまった。

 私はあまりの圧倒的な強さに驚愕。

 そしてその様子を見ていたメアリ本人は「当然です」と満足げな表情で頷いていた。


 まさかここに来てメタルメアリ最強説。

 ちなみにメタルメアリの稼動時間は一日でした。

 時間が経つとただの砂鉄に戻っちゃうんだよね。

 でもいいんだ。私には本物のメアリがいるから!


 さて、魔法も使えるようになったし、これからの人生どうやって働かずに生きていこうか…………と考えていると、ある日突然人生の転機がやってきた。


 私は魔王に呼び出され、魔王の書斎まで一人でやってきた。

 部屋に入ると既に人払いは済ませおり、部屋にいるのは私とパパの二人だけ。

 パパがかつてないほど恐ろしい顔で私のことを見ている。

 多分真面目な話なんだろう。

 パパは真剣になればなるほど、怖い顔がさらに凄味を帯びてくる。


「ルナ、大切な話があるんだ。顔を逸らさず聞いて欲しい」

「無理です」

「……じゃあ、顔を逸らしてもいいから聞いてくれ」

「はい」


 うん、お互い譲歩することは大切だよね!


「実は私の父、つまりお前のお祖父様がそろそろお前に会いたいと打診してきた」

「いいですけど、もしお祖父ちゃんの顔がまお……パパみたいに怖かったら全力で逃げ出してしまう自信がありますよ?」


 うん、本能からは逃れられないからね!


「…………………………………………」

「怖いんだ!?」


 やっぱり!魔王遺伝子…………恐ろしい子!


「さて、お前もそろそろ女の子に興味を持ち始める年頃だろう」


 突然魔王は話を逸らし、何の脈絡もない話題を振ってきた。

 女の子に興味って……。


「私まだ五歳ですけど?」


 まぁ私の場合年齢以前の問題もあるけど。


「というわけでお祖父ちゃんが良い子を見つけてきたらしい」

「それどう見ても政略結婚だよね!?」

「…………大丈夫。お見合いだ」

「何が大丈夫なの!?酷いよ!まお……パパはちゃっかりママと恋愛結婚してるのに私には政略結婚させるんだ!」


 もし政略結婚なんてさせられちゃったら将来侯爵家を継いで働いていくことが確定しちゃうじゃない!


「い、いや。心配しなくとも我がロルス家は結婚を政治の道具にしなくとも十分やっていける。だからこれはお祖父様にとってはただの善意。お前の許嫁いいなずけもお祖父様の親友の孫……という話だ」


 許嫁!?許嫁ってあの許嫁ですか!?親が勝手に結婚相手を決めるあの!?他人事ならロマンチックな出来事にさえ見えるあの!?現代社会では絶滅してしまったとさえ言われているあの!?


「ってことはお祖父ちゃんはもう結婚の約束を交わしてるの!?私まだどっちとも会ったことないのに!」

「それはまぁ……許嫁だし……」


 そうだよね。パパの言っていることは決して間違ってはいない。でも。でもだよ?


「相手の子が可哀相だとは思わないの!?私だったら心の底からお悔やみ申し上げるところだよ!」


 こんなに顔の怖い男の許嫁になるなんて、もしトラウマになって男性恐怖症にでもなったら一体どうするつもりなの!?

 人間は中身だっていうけど、当然中身だって自信はない。

 前世では恋愛のレの字だって経験したことなかったし、働きたくないって本気で思ってるし!


「それが先方は乗り気らしい」


 ない!それは絶対ない!


「それ絶対お祖父ちゃんの顔にビビってるだけだから!恐怖に震えてる姿が頷いてるように見えただけだから!完全に勘違い!」

「と、とりあえず会うだけ会ってみないか?」

「とりあえずで心に消えない傷を負っちゃったらどうするつもり!?」

「そ、そこまでロルス家の顔を毛嫌いしなくとも……、もしかしたらママみたいな人」

「いないから!ママみたいな人、他に存在しないから!パパが恋愛結婚できたのだって星を掴むような話だったんだからね!」

「そこまでなのか……」

「きっとパパも自分の顔に慣れちゃって、周りには私たちの顔を全然気にしないママやメアリが常にいるから分からなくなってきてるんだよ。ほら、もう休もう?ね?」


 私は優しい声色でパパの目を見ないように語りかけ、そっと手を引いてあげた。


「そう……だな。俺も少し疲れているのかもしれない」

「話は聞かせてもらったわ!」


 この声は……。


「ママ!?」


 振り返るとなんとそこにはソルを抱えて仁王立ちするママの姿があった。

 そしてその後ろではメアリが深いため息を付いている。

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