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第5話 怖くても働きたくないでござる

 最近ずっと王都へ行っていたパパがようやく帰ってくることとなった。

 パパが帰ってくるという報告があってから屋敷の雰囲気がガラッと変わった。

 ママは舞い上がり、執事やメイドの人たちは揃って緊張しているのだ。

 ママ専属のメイドであるメイリだけはいつも通りケロっとしてるけどね。


 私としてもパパとは初対面だ。

 正直に言おう!

 私は心底ビビっている!

 だって鏡で自分の顔を見るだけでも怖いのに、これの元の遺伝子とか見たら絶対気絶するって!

 現代っ子を舐めるな!暴力や脅しには耐性ないんだからね!

 平和万歳!戦争反対!


 というわけで私は非暴力、完全服従を心に誓った。

 だって怖いもんね。今日の私はイエスマンだよ。まだしゃべれないけど。

 ここで迷うのは笑顔を見せるかどうか。

 自分でも引くほどの笑顔。下手に見せると反抗の意思ありと判断されてしまうかもしれない。

 まだハイハイすることすらできないから隠れることもできず、じっとベッドで坐して待つしか選択肢はない。

 とりあえずパパが部屋に入ってくるまで心の準備をしておこう。

 と思っていたらママに抱きかかえられた。


「ルナ。玄関で一緒にパパをお迎えしましょうね」


 そう言って極上の笑みを浮かべるママ。

 余計なお世話をおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 ここでいいから!私はここで待ってるから!

 私はママの腕から抜け出そうと必死になって身をよじった。


「あら、ルナもパパに会えるのが嬉しいのね!」


 ないから!それは絶対にないから!

 これどう見ても嫌がってるでしょ!ぐずってるでしょ!

 しかし私の抵抗など無駄でしかなかった。

 ママは見た目も天使だが、中身も天使なのだ。

 全てを良い方にしか解釈しない。性善説どころか全人類生涯善説。どんな極悪人に対してもきっと止むに止まれぬ理由があったのだろうと手を差し伸べてしまう人。

 天然で利用されやすい。

 私はこれを『天使フィルター』と呼んでいる。


 はっ!?もしかしてママってパパに騙されて結婚しちゃったんじゃ!?

 …………ありえる。

 自分の顔から判断するとパパはママの濃厚な天使遺伝子を食い尽くすほどに邪悪な悪魔遺伝子の持ち主だ。

 天使を騙すことなど造作もなかっただろう。

 全ては自らの欲望のために。

 くっ!この性犯罪者!女の敵!パパはきっと私の働きたくないドリームの一番の障害になるに違いない!

 それでも私は負けるわけにはいかないのだ!働かないためにも!


 テンションが上がってきた!今なら例え相手がパパであろうとも迎え撃てる!当方に迎撃の準備アリ!


 そう思っていた時期が私にもありました。


 ママ…………三時間も前から玄関で待ってるなんて気が早すぎるよ…………。

 そう、三時間という長い時間は私のテンションを平常に戻し、悪い想像を次々と浮かび上がらせ、恐怖のどん底に落とすには十分な時間であった。

 というか天使みたいに繊細な身体をしてる割には結構体力あったんだね、ママ。


 そして遂に敵が現れた。

 屋敷中のメイドたちが玄関前の道の両脇にずらっと並んでいる。

 三十人くらいいるんじゃないだろうか。

 そしてその一番奥……ではなく、待ちきれずに一番前まで行って私を抱いたままパパを出迎えるママ。


 そこへ豪華な馬車が一台、馬に乗った騎士らしき人を二人ほど引き連れてやってきた。

 馬車を運転する人も騎士もなかなかのイケメンである。

 というか日本人の私からすればこの世界の人はみんなイケメンに見える。

 地球で言えば北欧系。だからなんとなくイケメンには見えるが、それはきっと見慣れない所為でもあるんだろうな、と思う。

 正直、外国の人たちに囲まれてるみたいで落ち着かない。

 髪の茶色いメアリでさえ顔は北欧系だからね。全然落ち着かないよ。


 そして馬車が私たちの数メートル手前で停止した瞬間に、馬車のドアが蹴破られた。

 え、蹴破られた!?

 自分で言っておいてなんだけどおかしいよね!?ドアは蹴って開けるものじゃないよね!?


「ロザリー!!!」

「クロード!」


 馬車から飛び出した黒い影が物凄い勢いでママに抱きついてきた。

 ちょ!潰れる!

 私は予想される衝撃に思わず目を閉じた。

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