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第26話 成長しても働らかない勇気!

 当然私は入学するまでの間、トモちゃんに呼ばれて度々子供のお茶会なるものにお招きされた。

 そこで色々と情報交換することができたんだけど、何でもトモちゃんは私よりも早くこっちの世界に転生して生れ落ちたらしい。

 向こうでどんな死に方をしたのかとか、何歳まで生きたのかとかしつこく聞いてみたけど、それだけは絶対に教えてくれなかった。

 代わりに教えてくれたのは現世で何があったのかということ。


 トモちゃんも私と同じで前世の記憶をまるっと持って転生した。

 つまり私と同じ見た目は子供で頭脳は大人、そしてこの世界ではチート級の知識を持ってるってことだ。

 とは言え、私は自分の専門分野以外はからっきしなので、はっきり言ってそのチートも生かしきれていない。せめてググール先生さえいてくれれば…………。


 そして当然ながらトモちゃんは私までこの世界に転生していたとは思いもしていなかったらしい。

 そりゃあそうだよね。私だってまさかトモちゃんがいるなんて思わなかったし。

 しかしそんなトモちゃんに一つの魔法が襲い掛かることになる。


 そう、何を隠そうその魔法とは私が勢いで発動した『ロストメモリー』である!


 それによってトモちゃんは私のことをすっかり忘れていたらしいんだけど、あのお披露目パーティーで私を見た瞬間に全て思い出してしまったらしい。

 本当に不思議な話だよね。前世の私とは見た目が違いすぎるっていうのに。

 トモちゃんが言うには、私の珍妙な気配が全身から滲み出てたからすぐに分かったらしいけど、本当に失礼な話だ。

 私は動物か何かか。


 そんなわけで全部思い出して激怒したトモちゃんに文字通り蹴り飛ばされて今日に至る。

 基本的にトモちゃんは私に対するツッコミに容赦がない。トモちゃんは何事にも容赦のない女なのだ。

 うぅ…………トモちゃんの愛が重いでござる。


 しかしさすがは『絶対に働きたくないでござるSNS』の副会長。王女様などという公認エニートに転生しているとは!(全国の王族の方々に非常に失礼です)

 せめて私も女として産まれてきていればと何度涙を飲んだことか……。


 しかしそんな私にトモちゃんは目を逸らしながら言った。


「ツッキー……、その顔で女に生まれても結婚、できないと思うけど……」


 私たちの間に沈黙が流れた。

 顔を伏せて気まずい雰囲気を耐えしのぶトモちゃん。

 うん、言いにくいことでも笑って誤魔化すことなく教えてくれるトモちゃんはまさに友達想いの容赦なき親友。

 きっとこの目から溢れだして止まらない熱い涙も、トモちゃんの友情に感極まって出ているのだろう。

 そうだ。きっとそうに違いない。ぐすん。




 はい!というわけでやってまいりました小学校デビュー!


 しかしながらお祖父様は仕事で忙しいので入学式には家族は誰も来ていない。

 出る気満々だったパパとママにも丁重にお断りした。

 幼いソルを連れての長旅も不安だし、正直精神年齢○○才である私にとって入学式なんて一喜一憂するようなイベントでもない。

 大学の入学式だって親呼ばなかったしね。

 むしろこういうイベントって来賓やら校長先生によるありがたい話が長すぎて、嫌なんだよね。

 そんなことを考えていると、名前を呼ばれたトモちゃんが壇上の上がってぺこりとお辞儀をした。なんとトモちゃんは新入生を代表して宣誓をすることになっていたのだ。

 その姿はまさに殺伐とした現代社会に降り立った一羽の天使。緊張している様子は全くない。

 来賓として入学式へと参加している国王陛下は既にデレデレだ。

 そしてトモちゃんは遂にその小さく可愛らしい口を開いた。


「厳しい冬の寒さも緩みを見せ、春の訪れを感じられる季節となりました。本日はこのような入学式の場を設けていただき誠にありがとうございます。新入生を代表し心からお礼申し上げます」


 え……。


「ちょうど私たちがこの世に生を受けた六年前、我が国では竜の出現に見舞われ、多くの者に深い悲しみがもたらされました。今もなおそのときの爪痕は残り、復興が思うように進んでいない地域もあります。だからこそ私たちは、そのような年に生まれてきた意味をしっかりと考え、この国の新たなる希望となれるよう勉学に勤しみ、この国を竜より守り抜いてきた英霊たちに恥じる事のないような学生生活を送る事をここに誓います。入学生代表トモカ・シルヴァニア」


 ……おい、小学生。ちょっと待て。

 そんな挨拶する小学生いないから!

 ほら、みんなぽかーんとしてる。

 トモちゃんはそんなトモちゃんの所業に驚愕している私を見て壇上から自信満々に微笑んでいた。

 いや、微笑んでるなんて言えば聞こえはいいが、要するにドヤ顔をしている。


「さすがトモカじゃぁ。王族として立派に勤めを果たして……はっ!まさかこれを機にトモカに惚れる者が出て来る可能性が…………、早急に軍事会議を開いて対策に当たらねば……」


 ちょっとまてーゐ!

 おいそこの親馬鹿!いや、馬鹿親!

 入学式の挨拶って別に王族の勤めじゃないし、いきなり軍事会議とかぶっ飛びすぎでしょ!

 しかもそれって確実にお祖父様が呼ばれるよね?

 孫の入学式に来れないほど忙しいお祖父様の手を無駄なことで煩わせるなあああああああああああああ!


 やばい…………この国の国王はモンスターペアレントだ…………。


 でもね、王様。そもそもトモちゃんに虫除けはいらないと思うよ。

 何と言っても轟沈娘だからねぇ。


 まずトモちゃんはフラグをばっきばき折りまくる。

 頭はいいし、鈍いってわけじゃないんだけど、計算とかじゃなく遠まわしのアピールには全く気づかない。


 例えばゼミの飲み会でトモちゃんにアピールしようと料理を取り分けてあげたり、飲み物がなくなるタイミングに店員さんを呼んであげたりしても、それがアピールだとは思わない。

 トモちゃんにとって相手の世話をするというのはごくごく自然な行為だから、それが異性への好意であることに全く気づかない。

 仮にその後でトモちゃんを誘ったり告白したりなんかしても、「え?急に何?」って感じでついていけず、男は轟沈。


 トモちゃんに対する愛情表現はストレートじゃなきゃ意味がないんだよね。

 で、極稀に今時珍しく搦め手を全く使わずストレートに愛情表現をする男子が稀にトモちゃんと付き合うことになったりするんだけど、そういう男子は得てして真面目でプライドが低くない。

 トモちゃんの世話焼きっぷりははっきり言ってヒモを飼ってるレベル。うん、世話を焼かれてた私が言うんだから間違いない。

 外見、成績、そしてその献身っぷりが完璧すぎて、男は自分がこんな子と付き合っていいんだろうかと疑問を抱き始める。

 もしヒモ男だったら気にせず付き合えるんだろうけど、真面目な男?はせめて何か一つでもトモちゃんに対して誇れるものが欲しいと、頑張って頑張ってストレスで轟沈。結局それどころかあまりの世話の焼かれっぷりに自分がダメ人間に思えてくるとかなんとか。

 とは言えそれで勝手に諦めてトモちゃんを傷つけるのは本当に許せない。


 あれ、でも子供って欲求にストレートだからもしかして恋愛に発展することもあるのかな?

 それはそれで見てみたい気がする。

 ふふっ、男になったこの私が男の子たちを審査してやろうじゃないか!

 トモちゃんとお付き合いしたければ私と勝負しろ!ってね。

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