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第22話 再会したって働きたくないでござる

 え!!!

 ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ絵ええええええええええ絵えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!


「ま、ま、ままままままままままま」


 驚愕する私に少女は近づき、私たちにだけ聞こえる声で言った。


「その歳でママママ連呼するなんて、いつからマザコンにでもなったの?ツッキー会長」

「まさか!!!ト、トモちゃん!?」

「シッ!声が大きい!」


 そう言って私の口を手で塞ぐ。

 いや、どう考えても遅いでしょ。これもう注目されてるなんてレベルじゃないよ。


 そんなことを考えながら私は前世の記憶を掘り起こしていた。


 私のことをツッキーと呼ぶ人物。

 それは前世において『絶対に働きたくないでござるSNS』の副会長にして私の親友であった友ちゃん……そう、朝霧友佳あさぎりともかだけだ。

 ツッキーというありきたりなあだ名を呼ぶのが友ちゃんだけというのには理由があった。

 それは私の前世における本名の所為だ。

 今まであえて思い出さないようにしていたが、私の前世における本名は山田やまだルナ。俗にキラキラネーム、DQNネームなどと呼ばれているアレである。

 私はこの名前のおかげで人生は困難を極めた。

 凄く日本人顔なのに名前は『月』と書いて『ルナ』。

 知ってる?名前って脱げない服みたいなものなんだよ。綺麗なお洋服は可愛いけど、学校には着ていけないでしょ?つまりはそういうこと。


 だから私は自分の名前が嫌いだった。



 でもそれ以上に名前で私の人格と親の人格を勝手に判断する会社には心底嫌気がさしていた。



 だから私は働かない。


 そんな会社なんてこっちから願い下げだ。


 ただ名前には不満だったけど、前世の両親のことが嫌いだったわけじゃない。そこは誤解して欲しくない。愛されていたという自覚はあるし、悪い人たちじゃないことくらいは分かっている。

 メディアやマタニティー雑誌の影響か。はたまた出産ハイによる影響かは分からない。

 でもこれだけは言える。

 社会が悪かったんだ。そしてそんな社会を作り出した大人たちは今や完全に他人事としてとらえている。

 確かに前世の日本は子供に対して優しかったかもしれない。でもそれと同時に責任すらも放棄しているように見えた。



 そして魔の高校・大学時代に知り合った人たちは私のことを一体何が面白いんだか『山田ルナ』ってフルネームで呼んでいた。

 向こうからしたら軽い気持ちなんだろうけど、言われる方は悪意しか感じなかった。

 ノリとか言われても嫌なものは嫌なんだ。


 しかしそんな私の気持ちを察してくれていた友ちゃんだけは、周りが何と言おうと私のことをツッキーって呼んでくれた。


 そしてそれが私には何よりも嬉しく、何よりも私の心を救ってくれた。


 人間一人でも心強い味方がいてくれればどうとでもなる。


 そう、今の私が捻くれることなく?生きていく?ことができるのも全部友ちゃんのおかげであるとさえ言える。


 うぅ、思い出したてたら何だか涙が出てきた。


 でもまさかまた会えるなんて……。


「友ちゃん!!!」


 私は起き上がり、友ちゃんに飛び掛って抱きついた。


「ちょ、ちょっと……」


 放さない!絶対に放さないから!


「あ゛、あ゛いだがっだよ~~~~!!!」


「全く……相変わらずしょうがないなぁ。ツッキーは」


 そう言って友ちゃんは私の頭を優しく撫でた。

 さすがは友ちゃん。幼い手から繰り出される愛撫はまさに至高!このまま寝たら天国へ行けること間違いなし!


 頭をぐりぐりと押し付けながら友ちゃんの手つきを堪能していると、突然その手つきがいきなり力強いものへと変わった。


 ガシッ。


 え?


「でもね」


 耳元で友ちゃんが少し低い声を紡いだ。背筋がゾクリと跳ねる。

 そしてそのまま両手で頭をガッシリとホールドされて…………って、あれ?


「私の記憶を消そうとした件については許さないわよ」


 こめかみに拳を押し付けられ…………。


「こ、これはまさか……」

「反省なさい」

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 そしてこの後、友ちゃんの気が済むまでうめぼしを受けるのであった。ぐすん。

 エ、エメラルダさん!オロオロ見てないで助けてくださいっ!

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