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第11話 大魔王がいても働きたくないでござる

 あくる日、私は魔王と一緒に王都へと向かった。

 旅……というか王都への旅行は四日間にも及んだ。

 道中山賊に襲われそうにもなったけど、なぜか馬車を見るや否や逃げていってしまった。

 王都へと到着すると、まず私たちはお祖父ちゃんの屋敷へと向かうことになった。

 お祖父ちゃんの屋敷に到着すると、うちにいる以上のメイドたちが道の両脇に並んで私たちを出迎えてくれた。

 日本人の感覚からしてこれはないなって思ったよ……。


 メイドさんたちの視線が一斉に私へと集まる。

 そして若いメイドさんたちが一斉に顔を青ざめた。

 うん、仕方ない。本能だからね。

 その本能に抗ってまで働いているのは、お祖父ちゃんの人柄の良さか、はたまた賃金の良さか、はたまたメイドさんたちの精神力の強さによるものか。

 パパを見てても分かるんだけど、うちの家系ってみんな一途なんだよね。

 だからメイドさんがいくら可愛くても絶対に手を出すことはないし、顔も百パーセント恐怖で出来ているから嫌らしさが微塵もにじみ出てないし、若い女の人も安心して働けるんだと思う。

 なんたって異世界だからね。

 身分差もあるし、貧富の差だって現代日本とは比べ物にならない。だからお金に困った若い女の子が安心して働ける場所って凄く貴重なんだと思う。

 その証拠に年配のメイドさんたちは私の顔を見ても表情すら変えていない。

 凄いよね。この顔って慣れることができるんだ。もしかして私も元々こっちの生まれだったら慣れられたかな?


 そんなことを考えていると、メイドたちの間から一人の男の人が歩いてきた。

 パパと違って深い皺の刻まれた顔。

 見た目はまだ40台くらい。白髪がちらほらと見える。

 この人が私のお祖父ちゃんかな?

 そう思って見ていると、男の人は私たちを見て口を開いた。


「よく来てくれたな。クロード」

「お久しぶりです。父さん」


 やっぱりお祖父ちゃんだ。


「それに……」


 お祖父ちゃんがこちらへと目を向けた。

 私はお祖父ちゃんの目を見てしっかりと挨拶した。


「初めまして。ルナ・ロルスです」


 そう言うとお祖父ちゃんは笑って答えてくれた。


「ああ、初めまして。私がロルス家現当主のデューク・ロルスだ」

「デュークお祖父様?」

「デューで構わない」

「デューお祖父様?」

「お祖父様か……良い響きだ。遠いところからよく来てくれたな。さぁ挨拶はこれくらいにして中へ入ろう。長旅で疲れただろう」


 私たちはデューお祖父様に促されるまま屋敷へ足を踏み入れた。

 さて、私がなぜあれほど怖がっていたお祖父様の顔を直視することができたか疑問に思う人もいることだろう。これは決してお祖父様の顔が怖くなかったわけではない。

 多分怖い。超怖い。

 でも私はここへ来る前に一つの秘策を用意していた。

 それが私のオリジナル魔法『エンジェルフィルター』である。

 これはママの持つ特殊能力『天使フィルター』から案を得て開発した魔法で、対象物より視覚的危険因子を取り除いてしまう効果を発揮する。

 これを使えばどんな悪人が意地の悪い顔をしたところで発動者には普通に見える。

 お祖父様の顔にびびってしまっては、将来とんとん拍子に跡を継がされることは必至!

 だから私はこの魔法を発動することができた。

 効果時間は一日。毎朝かけることでパパの顔すら見れることになる優れものなのだ!

 最初は一般的に知られている恐怖抵抗を向上させる魔法『レジストフィアー』を使ってみたんだけど、恐怖への抵抗力が上がったところで怖いものは怖い。無駄に耐えられるようになった分、寿命がガリガリ削れていく結果にしかならなかった。

 だからこそ私は『エンジェルフィルター』の開発に踏み切ったのだ!

 開発といっても、働きたくないって想いを込めて魔法を発動しただけなんだけどね!


 そういうわけでお祖父様の顔を見ても大丈夫になった私は、パパと共にリビングルームらしきところへと通された。

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