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きさらぎ駅 0番線  作者: 臥亜


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9/9

構造封鎖

23:59。

はじめて、秒針が進む。

だがそれは、

時間が再開したのではない。

観測が完了しただけだ。

表示板。

M

N

R

_

最後の行が、確定する。

文字は見えない。

だが、登録は済んでいる。

四人目。

第四の観測者。

真壁の録音は停止した。

七海の研究ノートは空白になった。

掲示板“M”のログは、

23:58で途切れている。

誰も「完了」と書いていない。

完了を書けるのは、

作者だけだからだ。

しかし。

その作者は、

ここにはいない。

奥付を思い出してほしい。

そこに書かれていたはずの名前。

今、

思い出せない。

ぼやけている。

読んだはずなのに。

検索しようとしても、

なぜか指が止まる。

存在していたはずの人間が、

構造から削除されている。

これは失踪ではない。

削除でもない。

置換だ。

作者は、

四人目の観測者と

位置を交換した。

書く側から、

観測される側へ。

だから今、

あなたが立っている場所には、

かつて作者が立っていた。

本は、ここで終わる。

物語は、ここで閉じる。

ゼロ番線は封鎖される。

終電が到着する。

ドアが開く。

誰も降りない。

誰も乗らない。

だが、発車する。

ページをめくると、白紙だ。

そこに文章はない。

あなたの視線だけがある。

それで十分だ。

観測は継続している。

本を閉じる。

カバーの手触り。

紙の重み。

部屋の静けさ。

現実に戻ったと、

思う。

だが、ひとつだけ違う。

23:59。

時計が、

一瞬止まる。

すぐに動く。

00:00。

日付が変わる。

何も起きない。

それで正しい。

構造は封鎖された。

観測は完了した。

作者は存在しない。

もし、この物語を

誰かに勧めるなら。

あなたは、どう説明するだろう。

「怖かった」と言うか。

「よくできていた」と言うか。

それとも、

言葉を選べずに黙るか。

その沈黙が、

最後のログになる。

これで終わりだ。

この物語には、

もう書き手はいない。

あなたが最後の読者であり、

最後の証人であり、

最後の主語だ。

23:59。

発車ベルは、

二度と鳴らない。

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