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65、魔の森の結界


『もう、みんなどこに行ったのよぉ』

 困惑に満ちた声を上げてメネは周囲を見回した。


気が付けば一人、見知らぬ森の中にいた。

慌てて飛び回り必死に皆の姿を探すが見つからない。

そんな時だった…。


『え?』

 近くにある木の幹に唐突にぽっかりと(うろ)が現われたことに目を見開く。


『まさか…』

 驚いた様子で見つめていたら、いきなりグイグイと目に見えない力で洞の中へと引き寄せられる。


『あれぇぇっ』

 時代がかった悲鳴を上げるメネの姿は洞の中へと消えた。



『此処は…精霊界』

 到着した先は見覚えのある何も無い白い空間。

茫然とするメネの前に神々しい光の玉が現れた。


『せ、精霊王さまっ』

 慌てて空中で土下座態勢になると苦笑を含んだ声が掛けられる。


『そう畏まらずとも良い。面を上げよ』

『は、はいぃ』

 ギクシャクした動きで顔を上げたメネに向かい精霊王が言葉を紡ぐ。


『其方には辛い役目を負うてもらい、すまなかった』

『と、とんでもございません』

 ブンブンと首を振るメネに、しかしと精霊王は申し訳なさそうにその身を明滅させる。


『仲間のことを監視し、情報を渡す…さぞ心を痛める日々であったであろう』

 だがメネは真摯な眼差しで静かに言葉を返す。


『過分なお言葉をありがとうございます。確かに後ろめたくはありましたが、過去に私の主も同じ事をしておりました。その辛さを分かち合えたようで…嬉しかったのも本当でございます』

 その顔には懐かしむような表情が浮かんでいる。


『それに一番辛い思いをしていらしゃるのは精霊王さまでは?』

 逆にそう問いかけられて精霊王からため息混じりの声が漏れ出た。


『そうだな、今回のことはすべて私の不徳だ。関わったすべての者たちに深く謝罪したい』

 心底悔いている口調に、いえっとメネが慌てて言葉を継ぐ。


『精霊王さまに責はありません。すべては『人の欲』が齎したものです』

 メネの言に精霊王は頷くように光を揺らす。


『ああ、それ故に我らではどうすることも出来なんだ。人が因であるものは人でなくては落着せぬ』

 憂う精霊王にメネが毅然と言い返す。


『大丈夫でございます。カナエならば必ず事態を解決してくれます』

 言い切るメネに、そうだなと精霊王も笑みを刷いた声で同意する。


『そのカナエだが…行方が分からぬ』

『はい?』

 思わず頓狂な声を上げるメネ。

しかしそれも無理はない。


この世界の出来事すべてを把握していると言っても過言ではない精霊王が分からない。

そんなことが起り得るのか。


『魔の森の中心に広範囲に結界が張られている。どうやらカナエはその結界内に居るようだ』

 続けられた話にメネは納得の頷きを返す。

それならば行方が知れないのも仕方がない。


『だが他の者たちの居所は分かる』

『ど、何処でございますか?』

 意気込んで身を乗り出すメネに精霊王はエルデとターリクにリシュアンがいる位置を教えた。


『お任せください。彼らと合流してカナエの下へと向かいます』

『頼む。彼らの肩にこの世界の存亡がかかっておる』

 切なる声にメネは深々と頭を下げた。


『はい、必ず。この世界を守って見せます』

 そう宣言するメネの前に黒くて丸い穴が広がる。


『その先にリシュアンが居る』

『ありがとうございます。行ってきます』

 笑顔を浮かべるとメネは穴の中へ飛び込んだ。


すぐに閉じた穴の跡を精霊王は祈るように見つめ続けた。




「クソっ、腹減った」

 悪態を吐きながらエルデはその場に大の字に寝転がった。


転移トラップで飛ばされて早2日。

最初に手に入れた肉はとううの昔にすべて腹の中だ。


それから幾度も魔物と戦ったが、残念ながらドロップされるのは魔石ばかりで肉は一度も無かった。

おかげで朝から魔法で出した水以外は何も口にしていない。


「最後に喰った朝飯…美味かったな」

 カナエが作ってくれた料理を思い出していたら大きく腹の虫が鳴いた。


「マジで何か食い物を見つけねぇと」

 かと言って安易にそこらにある草や木の実を口には出来ない。

迂闊に食べて酷い目に遭ったのは一度や二度では無いのだ。


「やっぱ『鑑定』がねぇのは困りもんだな」

 あの白い部屋での選択で戦闘に役立つものばかりを取ってしまった事が悔やまれる。


「けどいつまでもこうしちゃ居られねぇし」

 はあっと大きく息を吐くとヨッとエルデは身を起こした。


「…何だ?」

 不意に彼は此方に近付く気配を感じ取った。

魔物ではないが…しかしこんな森の奥に人が居るとは思えない。


そんなことを考えながら剣の柄に手を置き、身構える。


「やっと見つけたっ」

『もうっ、やたらと動き回るんじゃないわよっ』

「そうだぞ。最初の地点でじっとしてろ」

 顔を見るなり文句を言われたが、当のエルデはそれどころではない。


「お、お前ら…」

 感極まったようにリシュアン、ターリク、メネの顔を見回す。

その後に紡がれた第二声は…。


「腹減ったっ」

 言うなり腹部を押さえて座り込んでしまう。


『エルデちゃんらしいわね』

「だな」

 呆れるメネと肩を竦めて同意するターリク。


そんな彼らとは違い、リシュアンはすぐさまマジック袋からクッキーやチョコバーを取り出す。


「すぐに何か作るから、それまでこれ食べてて」

 差し出された菓子をエルデは目を潤ませて受け取る。


「おう、助かったぜ」

 感激した様子でそう言うと、すぐに手にした菓子にかぶり付く。


『本当にお腹が空いてたのねぇ』

「元々竜人は大食漢だからな」

 物凄い勢いで消えて行く菓子たちを眺めながらメネとターリクが感心したように呟く。


「でもこうしてちゃんと会えて良かったよ」

 取り出した鍋に水とスープの素、乾燥野菜に干し肉、レトルト御飯を入れて簡単な雑炊を作りながらリシュアンがホッとしたように笑みを浮かべた。


『ええ、精霊王様に教えていただいた地点に行っても姿は無いし。凄く探したのよ』

「お前の事だから魔物にやられることは無いだろうが…万が一ってのがあるしな」

 続けられたメネとターリクの言葉に、悪いとエルデは素直に頭を下げる。


迷子の鉄則である『その場を動かない』ということをしなかった為に心配と余計な手間をかけてしまったことに気付いたからだ。


「エルデが謝ること無いよ。いきなり一人で知らない場所に飛ばされたら、じっとしてなんていられないもの」

「お前、ホントに良い奴だな」

 鍋を掻き回しながら笑うリシュアンにエルデも嬉しそうな笑みを返す。


「ところでカナエは?」

 姿が無いことに問いかけると。


『それがねぇ』

 メネがため息混じりに精霊王から聞いた事を伝える。


「森の最深部か…だったら早く行ってやらねぇと」

「ああ、カナエの結界は強力だしアンもいる。身の心配は無いが」

 同じようにため息を吐きつつターリクがそう言うと、それを受けてメネも言葉を綴る。


『あの子を一人にしておくと別の意味で心配だわぁ』

「うん、何をするか分からないからね」

 過去の行状を思い返してメネとリシュアンは揃って深い息を吐いた。


「んじゃあ、飯を食ったらすぐにカナエのところに向かおうぜ」

 エルデの言に全員が頷いた。




「それじゃあ、出かけますか」

 アンに通じる扉を出ると、うーんと大きく伸びをしてから一歩を踏み出す。


「此処から真っすぐだね」

 転移は出来なくなったが羅針盤としての機能は大丈夫だったので、それを頼りに最深部を目指す。


黙々と歩いていると以前のように絶え間なく魔物が襲って来る。

けれど私が遣ることは同じだ。


「結界っと」

 いつものように結界で囲んで中の酸素を抜くとうい簡単なお仕事で終了。


落ちている魔石の大きさで何となくクラスが分かるが、最深部に近付くにつれてSやSS級ばかりになって来た。


まあ、魔石はアンに貢げばいいし、たまに出る爪や牙、毛皮なんかのドロップ品は取っておいて後で換金しよう。


お肉は時間停止付き冷蔵庫に直行だな。

何故か高クラスの魔物の方が美味しいので食材のドロップは大歓迎だ。


そんなこんなで歩き続けていたら夕方になった。


だいぶ進んだとは思うが、人族の小娘の足での移動なので進捗は芳しくない。

今日は此処らで探索終了としよう。



「おわっ!?」

 アンのところに戻って一息ついていたら、いきなり目の前にステータス画面が現れた。


「…レベル100?」

 なんと何時の間にかレベルがとんでもないことになっている。



 〈 カナエ(ユズキ) 〉


 16歳

 Lv. 3 (100)


 HP 150 (19500)/150 (19500)

 МP 120 (24300)/120 (24300)

 攻撃力 100 (29000)

 防御力 130 (∞)


〈スキル〉

 『アイテムボックス』『一般教養・礼節』『家事』

 (『空間魔法』『異世界常識』『鑑定』)


〈称号〉

 (『異世界人』『料理研究者』『報復者』)『精霊の友』『毒使い』『策略家』『人たらし』『自己否定者』『名の��̃�』


〈ギフト〉

 無し (『家』(進化可能物件・精霊化中))



改竄の腕輪の効力で見掛けは普通の人族の数値になっているが、本来のものは…アホかと言いたくなる。

だいたい防御力の (∞)って無限大ってことか?

ふざけてるだろ。


しかも知らないうちにおかしな称号が増えている。

最後のなんて文字化けしていて読めないし。


これについてはいろいろと文句を言いたいが、その前に全部サクッと隠しておくことにする。

他人に知られたら不味いことになる気しかしないからね。


アンの方も前にメネが言っていた通りに精霊化が進んでいるみたいだ。


こっちも知られたら何かと面倒くさいことになると思うので、私の真のステータス画面は極秘情報&門外不出だな。


そんなことを考えていたら壁にあるテレビの画面が突然光った。



「ハーイ、神様通信の時間だよー」

 画面に出てきたのは胡散臭さ100パーセントの笑みを張り付けた金髪碧眼の男。


「初めまして…かな?名無しさん。いや、ちゃんとカナエと呼ぼう」

 どうやらこの通信は私にだけのものらしい。

まあ、すべてのスマホは破壊したから他が知る由もないからね。


「こっちの世界に来た痕跡がまったく無いから死亡判定を下した訳だけど…そうじゃ無かったんだね。そのうえ僕の計画を(ことごと)く邪魔して回れる明敏な人物だったとはビックリだよ」

 肩を竦めながらクソが心底驚いたような表情を浮かべる。


「そんな君に御褒美というかラッキーチャンスを上げよう」

 めいっぱい腕を横に広げて満面の笑みを向けて来た。


「僕と直接話す権利を君に上げよう」

 その申し出にしばし唖然となる。

一体何を考えているのか…まったく分からない。


創造神の眷属であるクソなら目障りな存在など簡単に亡き者に出来るだろう。

それなのにわざわざ会うとは…そんなことをして奴に何のメリットがある?


考え込む私の耳にクソの言葉が届く。


「けど来られるのは君だけだよ、他には用は無いからね」

 そう片目を瞑るとクソは面会場所を口にした。


「なるほど…そういうことか」

 嗤いを浮かべる私の前でクソが楽し気に手を振った。


「それじゃあ待ってるよ」

 楽し気に笑うクソの顔が徐々に画面からフェードアウトして行く。


「いいだろう、受けて立つ」

 二ッと笑うと勢い良く椅子から立ち上がる。

いろいろ準備しないといけないからね。


首を洗って待ってろっ。



読んでいただきありがとうございます。

次回「66話 謎解き」は金曜日に投稿予定です。

よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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