耳そうじ
掲載日:2020/05/26
ふわ、ふわ、ふぅっ…
僕は今、耳掃除をしてもらって、いる。
ムチムチした、膝の上。
目を閉じて、ただ至福を感じ、彼女に身をゆだねている。
こんなにも、耳掃除が気持ちがいいだなんて。
こんなにも、幸せな気分になれるだなんて。
耳が幸せ過ぎて、涙が出てくるよ。
「ねえ。」
ふぅわっ
「幸せ…?」
「うん。」
「今、私、あなたの耳、独り占め、してるのがうれしいの。」
耳掃除をすることが幸せなのか…それは、それは。
かわいいやつめ…。
「ねえ、聞いても、いい?」
やさしく、僕の耳の穴をなでていた梵天が、ぴたりと、止まる。
「うん…?」
「はるかって、誰…?」
!!!!!!!!
「私、今、あなたの鼓膜と一番近い位置に耳かき棒、ツッコんでるのよね…。」
「ちょっとグイってしただけで。」
「どうなっちゃうんだろうね?」
「ねえ。」
「なんて、こたえる?」
「なんて答えたら、あなたは助かるのかなあ…?」
…僕は微塵もうごけない。
一言も、話せない。
命が、危ない。
何も、出来ず。
時間が過ぎて。
僕の失ったモノは、なんだと、思う…?




