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異世界人にとって俺のレゾンデートルは?  作者: 遊司籠
第四章 自分に出来る事を編
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第2話 頑張る日々のドタバタ劇

 王都に帰還してからは自分に出来る事をしようとルークリシュアに師事して連日戦闘訓練に励んでいる。厳しい訓練をしている訳だが強くなっている実感は湧いてこないのは仕方ない事と思っている……自分が追い求めようとしている理想は今の所、ただの理想でしかない。

 しかし、諦めなければ辿り着けるんだとルークリシュアに教えられた。だから今は強く為る事、自分が望む意志の為に諦める事無く出来る事を積み重ねている。

 自分に出来る事を全てやる為に戦闘訓練以外にも2番隊の方々に魔法についても教えてもらったり対魔法戦闘訓練をさせてもらっている。

 初めはビックオ氏に師事するつもりだったのだが、彼は俺達が受けた任務で持ち帰った情報に興味をもったのか色々調べる為に自室に籠りきりになって、俺が教えを乞いに行った時など問答無用で門前払いをくらってしまった。仕方ないので2番隊隊長マーガレット・サルブフラインに教えを乞いに行ったのだが、彼女も忙しいとの事で教えを乞う事が叶わなかった。

 俺が使える魔法系スキルは『魔砲』しかないけど、どの様な魔法が存在するのか? どの様な攻撃が出来るのか? どの様に応用が利くのかを知る事も大事なんだと思う。

 知っているって事は強みになる。例え自分が魔法が使えなくても魔法について知っていると知らないでは戦いに雲泥の差が出てくるのだ。

 実際俺は葛木が使用した『ウインドスラッシュ』を知らなかった為に対処出来なかった……あの時、対処出来ていたなら結果は違っただろう。俺に出来る事を増やす為だったがマーガレット隊長に断られると思っていなかった……どうするか悩んでいた所に2番隊のラズリアット・ハーマインから声を掛けてくれた。

 何でもソルフィナ・ザワードと同期で仲が良いと言う彼女が、困り果てて立ち尽くす俺に親切心で多忙な隊長に代わり魔法について教えてくれるとの事。何故か彼女一人では魔法に偏りがあるとか何とかで2番隊の女性隊員数人が日替わりで訓練に付き合ってくれているのは目論見がありそうで後が怖いが教えてくれるのだから、今は厚意に感謝しておこう。

 マーガレット隊長も手が空いてる隊員が訓練を手伝ってくれている事には文句を言う気は無いと言っていたから気兼ねする事無く訓練に精を出せる。

 俺はルークリシュアとの訓練と並行して魔法の勉強と対魔法訓練を進めている。正直訓練ばっかしんどいけれど、自分に出来る事を全てやろうと決めたのだから弱音は吐けない……まぁ、吐く気はないのだが。

 だから今日も今日とて訓練に励もうと、いつもの様にベットの上で目覚めたんだが……何故か素っ裸のソフィが俺の隣で幸せそうに寝ていた。

 ……自分の潔白の為に先に言い訳をしておこう。俺は絶対ソフィに手を出してない! 昨日はルークリシュアとの訓練を終えた後、鴉隊の仕事の一つである王都見廻りをして夜遅く部屋に帰還して短時間で風呂に入って髪を完全に乾かすのも億劫だったからベットに直行したのだから! 因みに、この世界でも風呂は存在している。転移・転生者が昔から存在したのだから王都民も風呂に入る習慣がある。かなり昔は大衆浴場しか存在していなかったそうだがビックオ氏が各家庭に安定した水を供給出来るようにした御蔭で、今では各家庭で簡単とは言わないが風呂に入れる様になっている……話が逸れたね、元に戻そう。

 疲れもあったのかベットに横になったら寝ていて起きたらソフィが横に寝ていたんだ。何故ソフィが素っ裸で俺のベットに寝ているんだ? 最近は忙しいのか顔を出さないテレサが、部屋に突撃してきたら盛大に勘違いしてしまうだろうが! 俺の命が危険に晒されてしまう! ……何かフラグっぽい事を自分で考えてしまっている。このままではテレサが部屋に突撃してきてからの公開処刑の流れでは無いのだろうか? 身の危険を感じ、幸せそうな寝顔をしているソフィの肩を揺さぶる。


 「おい……起きろよソフィ」


 ゆさゆさと肩を揺らすと、俺の揺さぶりと連動する様にオッパイがフルフルと揺れる! 普段、胸部に着用する下着で乳房を支えられているはずなのだが、今は一糸纏わぬ姿の為か形の良い大きいオッパイが振動で揺れている!


 …………!


 “ゆさゆさ”……“フルフル”


 ……!!


 “ゆさゆさ”“フユンフユン”


 !!!

 

 ……こ、こいつ動くぞっ!!


 俺は侮っていた……ソフィも胸は大きいと予想していたが、裸眼で捉える俺の揺さぶりと連動するソフィのオッパイがこれ程までの破壊力を持っているとは!!

 俺はソフィを起こすという名目の下、緩急付けつつソフィの肩を揺さぶると……見事なまでに身体を伝わる振動に連動する様に、オッパイが緩急付けながらエロ素晴らしく踊る様子が視界を占領する! 弱く肩を揺すれば“フルフル”と、強く揺すれば“フユンフユン”と胸が振動に応えてくれる! ……徐々にソフィの肩を揺らすのが楽しくなってきた。本来の目的であるソフィを起こす事を忘れ無言で肩を揺らす事に集中する。

 うわーい! 素晴らしいぞーーー! 揺れるオッパイは何とも眼福で、俺の中に存在する理性が少しづつ崩壊を始めている事に気付く。……ソフィも寝ているし……少しくらいなら触ってもいいよね? そもそも俺のベット……男のベットに素っ裸で寝ている方が悪いのだ。何かされても文句は言えないだろう? 自分に言い訳する様に俺は悪くない、俺のベットに勝手に寝ているソフィが悪いと言い聞かせ、そっと手をソフィのオッパイに差し伸ばす。あと少しで触れるかどうかの時にソフィが起きないか最終確認の為、目線をソフィの顔に向けると……悪戯な笑みを浮かべたソフィと目線がぶつかり合ってしまった。


 起きてるじゃないですかーーー!!


 俺は慌てて手を引っ込め、何事も無かったかのように振る舞うべくソフィに笑顔を向けてみる。ばっちり見られている可能性の方が高いが完全に手を出していないので言い逃れが出来るはずだ!


「……おはようソフィ」


 取り敢えず冷静に挨拶をしてみる。


「おはようハル君。……どうしたんだい? 私は嫌がらないから続きをしてもいいんだよ? まぁ、君も男なのだから目の前に裸の女性が寝ていたら襲いたくもなるだろう……そうなる様に潜り込んだのだがね私は」


 俺の挨拶に悪戯な笑みを浮かべたソフィは応えてくれてはいるが、ソフィの言葉を信じるなら自分から俺に襲われに来るなんて裏があるとしか思えない。下手に手を出さなくて良かった……本当の所は手を出せなかったのだけれど。


「了承してない女性は襲いませんよ俺!」


 見苦しいけれど言い訳みたいに紳士振ってみる。しっかり俺がソフィの双丘を触ろうとしていたのは見られていたのだが、未遂なので何とでも出来るはずだ。


「ハル君が起きた時には私も起きていたんだよ? 無垢な子供の様に目を輝かせながら揺れる私のオッパイをガン見した上で触ろうとしてたのに? 嘘はいけないな……私は嫌がらないから了承なくても襲ってもいいんだよ?」


 ソフィが浮かべる悪戯な笑みが蠱惑的な笑みに見えてきた。ソフィがそこまで言うのだ……手を出してもいいんじゃないかと心が傾きかけた時、俺の部屋のドアがノックされる。


「チッ! 予定より到着が早い!」


 ドアのノック音を聞いたソフィが何か言って慌てているが俺はそれどころでは無かった。この状況下で人が俺の部屋を訪ねてくると思っていなかったので油断した! 誰が訪ねてきたかは知らないが今は不味い! 男の部屋に裸のソフィ……言い逃れも出来ない! もし、部屋を訪ねて来たのがテレサだったのら俺の死刑が確定してしまう!


「ハル君起きてる?」


 再度ドアをノックする音と共に、俺が予想もしていなかった人物……エレナさんの声が聞こえてきた。いつもならテレサが部屋を訪ねてきそうな状況なのにエレナさんが訪ねてくるとは思っていなかった。これはテレサが部屋に訪ねてくるより状況が不味いのではないのか? 俺の中に危機感が芽生えてくる。


「もぉ~……まだ寝ているの? 仕方ないな~、勝手に入るわよ」


 俺が危機感を抱いている間に勝手に部屋に入ってこようとするエレナさん。かなり不味い! 未だ素っ裸で俺のベットに寝転がるソフィを見られてたら言い訳しても通じそうにない! 慌ててベットから出ようとしたが時すでに遅しドアを開けて部屋に入って来たエレナさんと顔を合わせてしまった。

 部屋に入ってきて一番最初に見えたであろう光景……裸のソフィと慌ててベットから出ようとする俺を見て、エレナさんの表情が凍り付ていた。

 あぁ……だんだんとエレナさんの雰囲気がドス黒いオーラを纏い始める。目元は髪の陰に隠れ口元が痙攣している……表情が読み取り辛くなってはいるが、怒っているのは肌で感じられる。

 ヤバイ! 何とか言い訳をしなくては! 俺は慌ててベットから降り、エレナさんの前に進み出て言い訳の為に口を開く。


「これはですね! えっと、あれだ! あれなんですよ! エレナ隊長の考えてる様な事は一切ないので安心してください!」


 口を開いたのはいいが、言い訳にもならない言葉を並べてしまう。あぁ……上手い事言葉が出てこない! これでは逆に浮気現場を見つかった夫の行動ではないか。


「あら、おはよう。しかし、エレナ隊長も人が悪い。私達の逢瀬中に無粋にも部屋に入って来るなんて……。まぁ、今更ですから気にしませんが今後は気を付けてくださいね? もしかしたらハル君が汗を掻いて頑張っている所に来られたらハル君が可哀想でしょ? 私も楽しめませんしね」


 片腕で胸を隠しながら上体を起こしたソフィが、エレナさんを挑発する様に不敵な笑みを浮かべながら言葉を発している。俺としてはソフィの言葉の何処にツッコミを入れるべきか……取り敢えず全部にツッコミを入れたい! 堂々と誤解を招く言葉ばかりをツラツラと並べてくれやがりまして! 唯でさえ裸のソフィと一緒に居るってだけで誤解を招くのに! 何とか誤解を解こうと口を開こうとした俺をエレナさんは片手で押し退けてようとしてくる。押されるまま横にズレていれば良かったのだが、訓練の成果か上手い事身体に掛かる力を流してしまいエレナさんの前に立ったままになってしまった。

 俺を横に退かす事に失敗したエレナさんが、陰を落とし表情が読めなくなっていた顔を勢いよく上げる。俺に向けてくる目線は怒りやら嫉妬やらで黒く淀んでいた……メッチャ怖い! なんて目をしてるんですかエレナさん!!


「ハル――……お兄ちゃんどいて! そいつ殺せない!」


 名台詞キターーーーー!! とびっきり危険な言葉がエレナさんの口から発せられている! このままでは不味い! 現実と違いエレナさんもソフィもスキルが有るから本当の殺し合いになってしまう!!


「落ち着きましょうエレナさん! 取り敢えず落ち着いて話し合いをすれば誤解と分かりますから!」


 エレナさんの両肩に手を置き必死に声を掛ける。何とか誤解を解くんだ俺!


「愛し合う二人の間に入り込んでくる邪魔者が! 今更遅いのよエレナ! 既に数回身体を重ねている私は出来てる(・・・・)可能性が有るの……赤ちゃんが!」


 はい! 更に誤解を招く嘘をばら撒いてくれやがりました! コイツ馬鹿じゃねーの! なんでそんなにエレナさんを煽るの!


「…………後で『中に誰もいないじゃない』してあげる」


 アカン……アカン台詞が聞こえてきた! 

 このままではヤンデレの極み! アッーーーーーー! ってなるぞ!! 早くエレナさんの誤解を解かなければ……真実はいつも一つなのだから!


「エレナさん! ソフィの嘘に騙されていけないです! 俺とソフィは身体なんて重ねていないので当然彼女が妊娠している事実は有りません! 今日も勝手にソフィが俺のベットに潜り込んで来ただけで、一切その様な関係はございません! 事実無根のソフィの嘘です!」


 俺は必死にエレナさんに言葉を掛ける。

 何度も何度もソフィの言葉は嘘なんだと安心してくれとエレナさんに声を掛けた御蔭か、彼女の目に徐々に理性の光が戻りつつある。


「ハル君……本当?」


 俺に少しだが理性を取り戻した目線を向けてくるエレナさんが、不安げに声を出す。

 あと少しでエレナさんは元に戻ってくれるはず! 最後のダメ押しとばかりにソフィが口走った言葉を教えてあげる。


「ああ、本当だよ! それに今回はソフィが何か企んでいたんだ……エレナさんが部屋のドアをノックした際、到着が予定より早いって言っていたしね」


「あっ、あーーー!! 何で言っちゃうのよハル君!」


 ソフィが慌てて俺の言葉にツッコミを入れてくるが、そもそもソフィが誤解を招く事をしたり、言ったりしたから今の状況になったのだ。本当の事を言って何が悪い!


「ソフィ……言い訳を聞こうか? 事と場合によっては質の悪い悪戯として見逃してやろう」


 今度こそ俺を押し退けたエレナさんがベットのソフィの所まで歩いていく。後ろから眺めていてもエレナさんが纏うオーラが怒り一色に染まっているのが分かる。

 俺に助けを求める様にアタフタと身振り素振で何かを伝えようとしているが、分からないので首を横に振るとソフィも諦めたのか意を決したかの如く真面目な表情をしている。


「……既成事実さえ作ってしまえばハル君が私のモノになると思ってベットに潜り込んでました。それに私を抱いてる瞬間をエレナに見せつける事が出来れば揺るぎない事実として認められるかなって……」


 だからか! 何度も了承なしでも襲っていいと俺に言ってきたのは! 流されるままに俺が手を出していたら後々面倒な事に……。俺がソフィに手を出す所をエレナさんが目撃、二人は付き合っているの流れになってしまっていた可能性がある。

 別にソフィの事は嫌いではないが……良く知らない人と付き合う気にはなれない。テレサといいソフィといい俺ってモテている気がする……何か裏が有りそうだが、今の状況では聞けそうにないな。


「正々堂々とハル君を攻略して自分の虜にすればいいじゃない! こんな卑怯な手を使って恥ずかしくないのソフィ!」


 エレナさんの叱咤がソフィに飛ぶ。

 俺もエレナさんが言っている事は正しいと思う。ソフィだって見た目は美人さんだしオッパイもデカいから俺好みだ、小細工せずとも普通に俺に接してくれるだけでも好感度は右肩上がりよ?


「卑怯? ……女の戦いは最終的に……勝てばよかろうなのだァァァァッ! 勝てばァッ!」


 ソフィは開き直ったのかエレナさんの言葉に食って掛かる。

 勝てばよかろうなのだァァァァッ! ってソフィよ、君はエレナさんに勝てるのか? 今の状況を脱する事が出来なければ君に明日は来ないと思うのだけれど……。


「てめーの敗因は……たったひとつだぜ……ソフィ……たったひとつの単純な答えだ……てめーは私を怒らせた!」


 あぁ……可哀想に、オラオラの刑に処されるのは確定だな。

 俺は二人のやり取りを端目に見ながら指環の時計機能で時間確認をする。結構時間がたっていて、このままでは朝から始まる訓練に遅れてしまう。


「おっと! ルークリシュアとの訓練が有るから俺行きます」


 二人に訓練があるからと言葉を残して部屋から出ようとしたら、思いっ切り襟首を掴まれ部屋の中に引きずり込まれる。

 一瞬何が起きたのか理解できなかったが眼前にエレナさんとソフィの顔が迫って来ていた。


「「ルークリシュアって誰!」」


 先程まで睨み合っていたと思ったのに二人とも息ピッタリに俺に問い掛けをしてくる。

 そういえば二人の前でカナリア隊長の真名を口走ってしまった。人前でカナリア隊長の真名を呼ぶなんて失敗したなと後悔するも二人から新しい女の名なのか、どこの馬の骨だとか口早に質問が飛んでくる。

 このままではルークリシュアとの訓練に完全に遅刻してしまう。簡単にだが説明して逃げに徹しよう!


「カナリア隊長の……真名です。俺の口から聞いたとか言ってカナリア隊長を真名で呼ばないで下さいよ。バレたら不味いんですから、黙っていてくださいね!」


 俺は簡単な説明と口止めの言葉を二人に掛け、さっさと訓練場に向かう為に部屋から出ようとしたのだが、左右から腕を取られ部屋の中に連れ戻されてしまう。


「ハル君! いつからカナリア隊長を真名で呼んでるの!」


「お兄ちゃん! 竜人種を真名で呼ぶ意味知っているの?」


 鬼気迫るような二人の剣幕に俺はたじろいでしまい言葉も発する事も出来ずに口籠ってしまったのが、二人には気に入らないらしく二人が納得するまで怒涛の様に飛んでくる質問攻めは終わる事がなかった。

 何とか二人の質問攻めから逃げ出す事に成功したのだが……結局、ルークリシュアとの訓練に大幅に遅れてしまい今度はルークリシュアからの説教と質問攻めにあってしまった。

 ……今日は朝から災難続きで、テンションは下がってしまったが訓練は頑張ろうと思う。はぁ……今日も一日頑張りますか!

更新遅くなりました! 前回はシリアス全開だったので今回はネタを豊富に取り入れてみました! 少し分かり難いネタも含まれていますが、分かる人には分かるはず……。

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