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【3巻発売中】私の推しは魔王パパ  作者: 夏まつり
3章 アルカディア王国へ

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03-04 予定外の同行者(1)


 ニコルは目の前に建つ小さな家屋を見上げる。カーテンから明かりは漏れてはいるが、中の様子は窺い知れない。


 辺りを見回してみた。街灯に照らされた道路を歩いている者はなく、立ち並ぶ家々の窓もちらほら明かりが消え始めている。誰にも見られていないことを確認してから、ニコルは家屋の扉を開けた。


 すると入ってすぐのテーブルに腰掛けていた女性が、軽く手を上げる。


「よーっす、ほんまに一人で来てくれるとは、どうもありがとうな」


 今朝書店で会った魔族の女性だ。室内にも関わらず、耳を塞ぐような形状の帽子を着けている。あれなら聖職者以外からは普通の人間に見えるのだろう。ニコルは己の杖を握りしめながら後手で扉を閉めると、それ以上中には入らず女性を見据えた。


「どういうつもりですか、こんな時間に一人で来いなどと」


 ニコルが日中に町を歩いていたら、小さな子供からメモを受け取った。書かれていたのはこの家屋の住所と、話がしたいから夜に一人できて欲しい旨の内容だった。


 ニコルに紙を渡した子供は間違いなく人間だったし、念のため事前に調べたが、この家屋の所有者もアルカディア王国に戸籍を持つ男だった。ただし実態として住んでいるわけではなさそうだ、ということはほとんど家具のない室内から見て取れる。


 屋内の気配を探ってみたが、自分たち以外には誰もいなさそうに思えた。あの魔族の少女もここにはいないようだ。


「手紙に書いたとおり、少年と話してみたいと思ってな。こっちも一人やし丸腰や。情報交換せえへんか?」


 女性は椅子に座ってニコルに手招きをする。けれどニコルは彼女の側に行くことはせず、扉に背を預けて腕を組んだ。


「僕は教団の人間ですよ。魔族の言葉を信じるとでも?」


「じゃあ何しに来たん? こんな町中で戦う気はないやろ?」


 女性が呆れたような顔で言う。確かにこんなところで魔族相手に戦いを仕掛けるつもりはない。人口の多いこの首都でそんなことをしたら、一体どれだけの人間が巻き添えを食うかわかったものではないからだ。


 何かの罠かと最初は考えた。魔族にとってみれば、顔を知ってしまったニコルなど邪魔でしかないだろう。いや、今でも何かの罠かと思っている。


 けれど人間の子供を使って手紙を渡してきたことにも、待ち合わせ場所に首都の家屋を指定してきたことにも、このまま放置するのは危険だと感じたのだ。この魔族は当然のような顔をして人間に紛れている。その気になれば身を隠しながら人間を殺して回ることも容易だろう、と。


「じゃあまずはうちから話そか。可能な限り何でも答えたるで。うちはカルラ、五天魔将の一人や。名前と身分を明かすのは、まあうちなりの誠意やと思ってや」


「なっ――」


 五天魔将といえばたった五人しかいない魔王の幹部だと言われている。そんな魔族が我が物顔で国の首都を歩いているなど、驚異以外の何物でもない。


「……この家の住人は?」


「そんな警戒せんとってーな。この家は賃貸に出とったのを、普通に金を払って借りとるだけや」


「……」


 それはつまり最近王都に立ち寄ったわけではなく、相当前から王都に出入りしていた、ということだ。まったく王都の司教も司祭たちも何をしているのだろう、とニコルはため息をつく。そして目の前の魔族を睨んだまま言った。


「では伺いますが、ナターシア内部の争いとは何なのですか」


「今の魔王はこれまでと(ちご)て平和主義やねん。人間と共存したいと本気で思とる。けどまあ、それをよしとしない奴らもおってな、反旗を翻して結界も壊しよった」


 先日会った魔王の姿を思い出す。信じがたい話ではあるが、明らかな力の差がありながら決してこちらに手を出そうとしなかった彼が平和主義者だという、彼女の話に矛盾は感じない。


「その反旗を翻したという者たちの目的は? 自分たちが魔王になることですか?」


「そうかもしれんけど、違うかもしれん。うちらが知りたい」


「……、では、その者たちにどう対処するおつもりです?」


 ニコルの問いに、カルラはうーんと唸りながら腕を組み、天井を仰いだ。


「うちのボスの意見は〝早期に捕らえたい〟かもしれんけど、うち個人の意見としては、捕らえる必要性は感じんな。あれだけやらかしたんや、見つけ次第処刑したい」


 内部で何があったのかはニコルには知るべくもないが、裁判もせず処刑とは物騒なことを言う――いや、相手は魔族だ。人の常識など通用はしまい。


 ニコルはカルラをじっと見つめる。嘘をついている風ではないが、信用はできない。しかし彼女がわざわざ危険を犯して接触してきてまで嘘をつく、その理由もまた見つけられないのだった。それに彼女の話が本当なのだとしたら、魔族の二陣営を衝突させておくのが人間にとっては一番良いのではないかと考え、ニコルは息をついた。


「……で、あなたは何が知りたい、と?」


 するとカルラはにいと笑ってニコルを見た。


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