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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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VSラファーガ

 兵士長がセシルの姿を認めた時、セシルもまた、兵士長の姿を捕らえていた。


紋章兵器マグナ・スレストを持つ隊長は私が惹きつけるから、皆は他の連中の掃討に集中して!」


 そう言ったセシルは、弓兵に肉薄しようとしていた最後の兵士を斬り捨て、紋章兵器、ラファーガを構えている兵士長へと突撃する。

 すると、兵士長の前に何人もの兵士たちが立ち塞がるが、


「邪魔よ!」


 その全てをセシルは一刀の名の下に次々と斬り伏せていく。


「この女っ!」


 舞うように切り結ぶセシルに、兵士長は一気に距離を詰めてラファーガを横一文字に振るうが、セシルは仰け反って斬撃を紙一重で避ける。


「んなっ!?」


 完璧に間合いを見切られたことに兵士長は驚愕に目を見開く。

 セシルが兵士長と切り結んだのは一度だが、その一度の攻撃で、セシルにとっては十分だった。


 必殺と成りえる攻撃が避けられたことで、兵士長は体制を崩している。


「もらった!」


 兵士長の首を刎ねるため、セシルは愛用の剣を振るう。



 次の瞬間、甲高い音とともに天高く飛ぶものがあった。



 だがそれは、兵士長の首ではなかった。


「なん……ですって!?」


 兵士長の首が落ちなかったことに、セシルは驚きを隠せないでいた。

 その手に握る愛用の剣は、刀身が半ばから先がなかった。

 それを認めると同時に、彼方に折れた破片が落ちたのを見る。

 一体何が起きたのか。それを理解するのはそう難しいことではなかった。


「……そういうこと」


 そこには、自分の首を守るようにラファーガを構える兵士長がいた。


「おらぁっ!」

「……チッ」


 体制を取り戻した兵士長が再びラファーガを振るうのが見えたので、セシルは慌てて距離を取る。


「もう、そんなの反則じゃない!」


 必死に逃げながら、セシルは思わず愚痴をこぼす。

 自分の剣が真っ二つに折られたのは、自分の切っ先がラファーガの刀身とぶつかったからのようだった。

 こちらから攻撃を仕掛けたはずなのに、刀身同士がぶつかっただけで一方的に負けてしまう。

 それはつまり、勝つ為には一度も切り結ばずに兵士長の体だけを切らなければならないということだった。


「だったら……」


 相手の動きを封じた上でその首を刎ねればいい。そう判断したセシルは、死んだ敵の槍を拾うと、


「やああああああっ!」


 気合の掛け声と共に槍を投擲する。


「――っ、このっ!?」


 セシルの奇襲に、兵士長は一瞬だけ顔を強張らせるが、冷静にラファーガを振るって槍を真っ二つにしてみせる。


「舐めるな!」


 そのまま兵士長は、突撃してくるセシルを迎え撃とうとするが、飛来する槍の影に隠れて、もう一本の槍が飛んで来ていることに気付いていなかった。


「あがっ!?」


 すんでのところで槍の飛来に気付き、致命傷だけは避けることに成功するが、兵士長は肩に槍の一撃を受けて堪らず膝を付く。

 その隙をセシルが逃すはずもなく、


「もらったわ!」


 残るもう一本の剣を大上段に振りかぶって兵士長へと斬りかかる。

 紋章兵器を持つ、この男さえ倒せば自分たちの勝ちは揺るぎない。そう思うセシルだったが、


「こいつっ!」

「やらせるか!」


 兵士長の部下たちが、次々とセシルへと捨て身の特攻を仕掛けてきたのだ。

 殆どの者は、セシルを援護する矢によって射抜かれていくが、それでも何人かは矢の雨を抜けてセシルに肉薄していく。


「このっ、邪魔をするな!」


 武器を捨て、飛び付こうとしてくる兵士たちをセシルは次々と斬り捨てていくが、捨て身で迫りくる敵の方が遥かに多く、


「ちょっ、こいつ……どこ触っているのよ!」


 セシルの体は、あっという間に四人の兵士によって拘束されてしまう。


「お前たち、よくやったぞ!」


 それを見た兵士長は、痛む肩に顔をしかめながらラファーガを腰だめに構えて力を解放する。

 瞬間、周辺の空気がラファーガに吸収され、緑色の光を放ち出す。


「な、何……体が引っ張られる?」


 ラファーガが放つ強烈な光に吸い込まれるような感覚に、セシルは全身が粟立つのを自覚する。

 ここにいては危ない。そう思うが、四肢に組み付いた兵士たちは、セシルが動けないようにがっちりと組み付いて、女一人の力では引き剥がせなかった。


「ちょっと、あんた達、このままだとあんたも死ぬけどそれでいいの!?」


 必死の抵抗を試みながら、セシルは組み付く兵士を説得すべく話しかけるが、誰もその問いに耳を貸してはくれない。

 それどころか、


「いいかお前等、そのまま押さえつけとけ! そこのクソ女を真っ二つにできたら、お前等の家族の安泰は保証してやるからよ」


 兵士長がそう言うと、セシルに組み付いた兵士たちは、それぞれが歓喜の雄叫びを上げながらセシルを押さえつける力をさらに加える。


「く、狂ってるわ……」


 これから殺されるとわかっているのに、兵士長の命令に従順に従う兵士たちの姿に、セシルは戦慄を覚える。

 頼みの綱は自分の後方に控える仲間たちだが、その仲間たちは自分たちに迫りくる兵士たちを追い払うのに精一杯で、とてもじゃないがセシルを援護する余裕はなさそうだった。


「ガハハハッ、これで全員、仲良く二つになれるな!」


 薄くなる空気の中、兵士長は血走った目で獰猛に笑うと、大きく息を吸ってさらにラファーガの力を解放させて活動できる限界の長さ、六メートルまで伸ばす。

 兵士長は勝ちを確信して犬歯を剥き出しにして獰猛に笑うと、無言のまま長大な長さとなったラファーガを横薙ぎに払った。

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