仕掛け
ラパン王国に侵攻して二日目、ユリウスたちの姿は小高い丘の上にあった。
「こうして改めて見てみると……壮観だな」
思わず身震いをしたユリウスの眼下には、戦の準備を整えた部隊が整然と並んでいた。
総勢二千名弱、これら全てを自分の指揮で自在に動かせると思うと、心が躍るのは無理もない話だった。
ユリウスたちは今、丘の上に本陣を置き、その下に槍兵と弓兵を中心に舞台を展開させていた。
正面には深い森があり、森の向こうに敵国の部隊が展開している旗がいくつも見て取れた。
森を挟んで部隊を展開したのは、奇襲される危険こそあるが、それ以上にメリットがあるというユリウスの提案で決まったのもだ。
「ユリウス、こっちも準備整ったわ」
するとそこへ、一晩寝てすっかりと血色が良くなったセシルが話しかけてくる。
「私たちは別任務だって聞いたけど?」
「ああ、君たちには馬を使って連中の裏側に回ってもらいたい」
「裏側って……」
命令を聞いたセシルは、目の前に広がる森を見て絶句する。
森の広さは、ここから見える範囲では終わりが見える様子はない。
「ちょ、ちょっと待ってよ。もしかして、この森をグルっと回って反対側に回るの?」
「何を言っているんだ」
「そ、そうよね……」
流石にそんな無茶は言わないか。そう思うセシルだったが、
「それ以外に反対側に回る術なんかないだろう?」
「…………そうよね」
儚い希望をあっさりと打ち砕かれ、セシルはがっくりと肩を落とす。
だが、すぐに気を取り直して顔を上げると、頭をガリガリと掻きながら諦めたように呟く。
「あぁ……もう、わかったわよ。こうなったらやってやるわよ! でも、こんな任務押し付けてくるぐらいだから、それなりに意味のある作戦なんでしょうね?」
「ああ、もちろんだ」
ユリウスは当然だとばかりに大きく頷く。
「セシルの部隊は、全体の中で二番目に重要な作戦だ。逃げようとする敵を、一人残らず駆逐するんだ。方法は、君に一存する」
「二番目って……まあ、いいわ。今度は例の紋章兵器を使う奴にあったら、全力で戦っていいんでしょ?」
「ああ、対処法は以前話した通りだ。手段さえ間違えなければ、必ず勝てる相手だ」
「任せて。今度はしくじらないから!」
セシルはバシッ、と拳を打ち鳴らして気合を入れ直すと、仲間たちに指示を出すために移動する。
任務内容を聞いたセシルの仲間たちは、ユリウスに向けて静かに頷くと、馬を駆って颯爽と出発していった。
「……いっちゃったね」
セシルが立ち去った後、ユリウスの隣にブレットがやって来て心配そうに話しかけてくる。
昨日、失った二人と三頭の馬の補充を行ったものの、今回、セシルの部隊の中に弟であるブレットは、別の任務があるからと舞台から外されていた。
「姉さん……今度は大丈夫だよね?」
「心配するな。少なくとも、死なない為の処置は打った。後は、あいつ次第だ」
「まあ、ユリウスがそう言うなら信じるけどさ」
それでもまだ心配なのか、セシルが立ち去った方向を見続けるブレットに、ユリウスは元気づけるように背中を強く叩きながら話しかける。
「そんなことより、ブレット。お前こそ大丈夫なのか? 今回の作戦は、お前たちが肝なのだぞ?」
「うう、わかってるよ…………はぁ」
ブレットは胃の辺りを押さえると、深々と溜息を吐いた。
どうもいつもお世話になっております。柏木サトシです。
今回、いつもより内容が薄くて申し訳ないです。
昨日の夜から少し体調を崩していまして、大事を取って休むことにしました。
ここ最近は可能な限り毎日投稿を心掛けているのですが、明日の投稿はもしかしたらお休みさせていただくかもしれません。
ただ、思ったより早く回復できれば、しっかりと投稿させていただきたく思います。
今の話は、書いていて非常に楽しいので、できればキリのいいところまで短いスパンで投稿していければと思っていますので、これからもどうぞよろしくお願いします。




