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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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突風剣

 敵の姿を見つけたセシルは、走っている馬の上で立ち上がると、腰に吊るした二本の剣の内、一本を引き抜いて振りかぶると馬の背を蹴って大きく飛び上がる。


「いっけええええええええええええええええっ!」


 空高く舞い上がったセシルは、気合の掛け声と共に、辺りに注意を全く払っていない様子の兵士目掛けて投げつける。

 空を切り裂くように一直線に飛んだ剣は、兵士の一人の背中に直撃し、革製の鎧を貫いてその体を吹き飛ばす。


「よしっ!」


 剣がしっかりと命中したのを確認しながら馬の背に華麗に着地したセシルは、もう一振りの剣を抜き、兵士たちに向けて掲げる。


「総員、構え!」


 セシルが声をかけると、全員が一斉に愛用の武器を構える。

 誰一人として、馬の速度を落とすことなく追従してくるのを確認したセシルは、犬歯を剥き出しにして獰猛に笑うと、剣を振り下ろして全員に攻撃を指示する。


「さあ、私たちの力を見せてやるのよ。総員、突撃ぃぃぃっ!」


 その声に全員に「おおっ」という鬨の声が重なる。



 兵士たちはようやく敵襲に気付き、慌てて迎撃態勢を取ろうとする。


「はあああああああああぁぁっ!!」


 だが、そこへ矢のような勢いで突撃してきたセシルが、すれ違いざまに剣で一人の兵士の首を刎ね、あっという間に通り過ぎる。

 さらにセシルの後に続いてきた仲間たちがそれぞれ手にした武器で兵士たちに攻撃を加え、反撃を受ける前に離脱していく。



「……チッ、お前たち、少しは落ち着くんだ!」


 そんな中、部下の一人を盾にして攻撃を凌いだ兵士長は、腰に吊るした紋章兵器マグナ・スレストを引き抜く。

 緑色の刀身が露わになると、部下たちが慌てたように兵士長から距離を取る。

 するとそこへ、セシルに続いてやって来た二人が、手にした槍で兵士長に襲い掛かってくる。


「何処のどいつか知らないが……」


 一斉に伏せる部下たちを尻目に、兵士長は紋章兵器を腰だめに構えると、緑色の刀身が光り出し、剣先が三メートルほどまで伸びる。


「タダで済むと思うなよ!」


 兵士長は、戦斧ハルバードほどの長さになった紋章兵器をまるで重さを感じさせない速度で、勢いよく振るう。


 瞬間、緑色の軌跡が迫りくる二人と二頭の馬に重なる。


 槍を手にした二人は、兵士長に攻撃を仕掛けることなくそのまま通り過ぎると、暫く勢いのまま進んでいたが、馬の首、両腕と胸部に亀裂が入ったかと思うと、糸が切れた操り人形のようにそれぞれのパーツがバラバラになって崩れ落ちる。


「なっ!?」


 その様子を、通り抜けた先で踵を返して見ていたセシルが驚愕に目を見開く。


「――っ、よくも!」


 だが、すぐに目に光を取り戻すと、絶命した二人の仲間の敵を討つために勇猛果敢に兵士長に向けて突撃する。


「姉さん、無茶はダメだよ!」


 仲間がバラバラにされるのを同じように見ていたブレットがセシルを止めようと叫ぶが、


「何言ってんの。このまま帰れるわけないでしょ!」


 仲間が殺されて頭に血が上っているのか、セシルはブレットの忠告を聞き入れようとしない。


「……もう!」


 それを見たブレットは、危険だと判断しつつもセシルを救うために動き出す。



「フン、この威力を見て、逃げなかったことは褒めてやろう」


 二人殺されて尚、臆することなく突撃してくるセシルに一定の敬意を表しながら兵士長は再び紋章兵器を腰だめに構える。

 突撃してくる少女は、一瞬にして兵士の一人の首を刎ねたことから、相当な実力者だと思われるが、紋章兵器『ラファーガ』の前では無意味だった。

 実に三メートルもの長さの刀身は、その全てが一撃必殺になりうる切れ味を誇っている。

 緑色に輝く刀身の正体は、周囲の空気を極限まで圧縮した風の刃で、極薄の刃はあらゆるものを切り裂く威力があるにも拘らず、重さは全くない。

 取り込む空気の量を増やせば、刀身をより長く、強力なものへと進化させることができるが、長時間の使用や、刀身を伸ばし過ぎると自信の呼吸をするための空気がなくなってしまうというデメリットがあった。

 刀身三メートルという長さは、使い手に支障が出ないギリギリの長さだった。


「すうううぅぅ……」


 兵士長はやって来るセシルが相当な実力の持ち主であると肌で感じたので、ラファーガの刀身をさらに伸ばすために息を大きく吸う。

 ここから先は無呼吸で戦わなければならないが、剣を振るうのは一回でいい。そう判断してのことだった。

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