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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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破壊の跡で

 ユリウスの提案もあったので、ファルコは村を訪れる者はそれなりに腕の立ち、戦闘経験が豊富な人材を選んだ。

 さらに実戦経験こそ乏しいが、上に立つ者が現状を知らないのは問題だと、ファルコも同行することになった。


「……うっ!?」


 村の門を潜ったファルコは、広場に広がる光景を見て、思わず口を手で覆う。

 そこには首から上が無い死体が十数人、折り重なるようにして転がっていた。

 辺りに無造作に転がる首から上の顔は、まるで誰もが自分に起きたことを理解していないのか、誰もがキョトンとした表情をしていた。

 だが、広場にある死体は、まだ人間の形を留めているだけマシな方だった。

 それ以外は、体を真っ二つにされて内臓をまき散らした死体や、どうやったらこんな殺し方ができるのか、頭から盾に真っ二つに割られた見るもおぞましい死体もあった。


「こ、こんなことが、戦争だというのか……」


 一目見ただけで絶命していると分かる死体の数々に、ファルコは眩暈を覚え、堪らずその場に膝を付きそうになる。


 だが、


「座るな。ここは適地だぞ」


 その前にユリウスの咎めるような声が響き、首根っこを掴まれて倒れられないように支えられる。


「それに、大将が敵地で座るなどの醜態を晒しては部隊の士気に関わる。お前だけは、何があっても平気な顔をしていろ」

「……わかった。すまない、めんどうをかける」

「気にするな。とりあえず、僕はもう少し村の様子を見てくるから、お前はここで立っていろ」

「ああ……わかった」


 青い顔のままようやく頷くファルコに「無理だけはするなよ」と釘を刺し、ユリウスは名も知らない村の中の様子を見るために動きはじめる。



 村の規模は、全部合わせても二十世帯もない小さな村だが、至る所に手が加えられており、村人たちがこの村を愛し、大事にしていたことが伺える。

 だが、今はその全てが無残に壊されていた。

 しかも、破壊のされ方も特徴的で、何か鋭利な刃物でも使ったのか、切られた断面はとても滑らかだった。


「これは……紋章兵器マグナ・スレストの力なのか?」


 一体、どんな力の紋章兵器が使われたのかはわからないが、おそらくは武器、それも刃物の形をした紋章兵器を使われたと思われた。

 まるでバターでも切るかのように綺麗に切り取られた断面を撫でながら、ユリウスは相手の紋章兵器の特徴を考察する。


「断面図から見て射程は五~十メートルといったところか……刃が巨大化するのか? それとも斬撃を射出するような力でもあるのか? それとも……」


 村中に残る破壊の跡を見ながら、ユリウスは相手の力を測っていく。

 これが相手の紋章兵器のポテンシャルの全てではないかもしれないが、射程と威力がわかるだけでも相対した時の勝率は大きく変わるだろう。


 その後もユリウスは、少しでも相手の力を見極めようと、汗水垂らしながら念入りに観察していった。



「これは……どういうことだ?」


 村中の破壊の跡を確認したユリウスは、破壊の跡にある共通点があることに気付く。

 それは人や物、そして家までもが、二つに分けられて壊されていることだった。

 全てが綺麗に真っ二つにされているかと思いきや、破壊の大小は様々で、いくつかの家は、二つに割ったことで満足したのか、少し修繕すればまだ十分使えるものもあった。

 そして、そのこだわりが幸いしたのか、


「――っ、誰か! 誰か来てくれ!」


 殆ど壊れていない家の中で、右足を失っている中年女性を見つけたユリウスは、大声で救援を呼ぶ。

 その女性は、血を流し過ぎた所為か気を失っていたが、弱々しくも脈は僅かにあり、急いで応急処置を施せば、助かるかもしれなかった。


 程なくして現れた救護隊に、ユリウスは中年女性を託すと、自分はファルコの下へと走る。

 血相を変えてやって来たユリウスを見たファルコは、驚いた様子で話しかける。


「ユリウス、どうしたんだ?」

「生存者を見つけた」

「ええっ!? ほ、本当か?」

「ああ、情報を聞けるかもしれない。だが、状況は一刻を争う」

「それじゃあ……」

「ああ、プリムにひと働きしてもらおう」

「わかった。すぐに手配する」


 ファルコはすぐさま頷くと、部下にプリマヴェーラを連れてくるように指示を出した。

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