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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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夜へ行く

 その日の夜、セシルとブレットが寝静まったのを確認したユリウスは、昼間の謎を解くために行動を開始する。


「さて……と」


 宿の主人に風に当たってくると言って外に出たユリウスは、これからどうするかを考える。


 この街の秘密に迫るカギは、路地裏で出会ったあの少女にあるだろう。

 あの少女は、裏路地が危険な場所であると知っていたにも拘らず、一癖も二癖もあるような危険人物を相対していた。しかも、連中から逃げる手際も手慣れたもので、何処まで逃げれば二人から逃げられるのかも知っている様だった。

 そして極めつけは、路地裏で別れたと思った少女がプリマヴェーラの傍にいたということ。

 この国の王族であるプリマヴェーラの傍に付くことが許される立場ということは、彼女はこの街でそれなりの地位にいるか、もしくはプリマヴェーラと懇意な間柄であることが伺える。

 本来の護衛である自分たちを差し置いてまで、この街に住む少女を傍に置くプリマヴェーラにも何かしらの秘密がありそうだが、それを知るためにも、ユリウスは少女を探すことにする。



 今後の算段を決めたユリウスが歩きはじめると、


「……ちょっと、こんな時間に何処行くつもりよ」


 ユリウスのすぐ真上から可愛らしい声が響く。

 同時に、人影が上から降って来てユリウスの進路を塞ぐように立ちはだかる。


「情報収集に出かけるつもりなんでしょ。だったら私も行くわ」


 そう言ってニヤリと口の端を吊り上げるのは、もう寝たと思ったセシルだった。


「……驚いたな」


 突然現れたセシルに、ユリウスは素直に驚く。


「熟睡していると思ったのに、どうして僕が出ていくのに気付いたんだ?」

「簡単な話よ。あんた、プリマヴェーラ様が紋章兵器を使った時、様子がおかしかったでしょ? その後は何を話しても上の空だし……口答えしないあんたを見て、今晩、絶対何かすると思って寝たフリをしていたのよ」


 どうだ。と言わんばかりに決して豊かではない胸を張るセシルだったが、その時、彼女のお腹から「ぐぅ~」と可愛らしい音が聞こえる。

 思わず赤面してお腹を押さえるセシルだったが時すでに遅し。バッチリその音を聞いたユリウスが呆れたように嘆息する。


「……なるほど。つまり、腹が減って眠れなかったわけだな」

「んなっ!? 違うわよ!」

「はいはい、まあ、そういうことにしておいてやるよ」


 ユリウスは肩を竦めながらまだ何か言いたげなセシルの肩を叩くと、


「それより行くなら早く行くぞ。明日も朝は早いのだからな」


 夜明けまでに全てを終わらせると一方的に告げて歩き出す。

 それを受けて、セシルは苛立ちを露わにするが、


「…………フン、ようやくいつも通りになったじゃない」


 どこか嬉しそうに唇の端を吊り上げると、勝手に行くユリウスの後に続いた。



 セシルが追いついてきたのを確認したユリウスは、彼女に気になっていたことを尋ねる。


「それより、情報収集の方はどうだったのだ? まさか、余計なことを口にして、僕たちの正体がバレるようなことはしていないだろうな?」

「……あんたね。私を何だと思っているのよ」

「決まっている。ただの脳…………冗談だ」


 思わず振り上げられた拳を見ておとなしくなるユリウスを見て、セシルは盛大に溜息を吐く。


「はぁ……いくら何でも私はそこまでバカじゃないわ。これでも、そういった訓練もキチンと受けているんだからね」


 そう言うと、セシルは手に入れてきた情報を話す。

 その殆どが、ユリウスが手に入れてきた情報と差異がなかったが、気になる情報もあった。


「行方不明?」

「ええ、連れが行方不明になったって人がいたの」


 大事とも思える内容だったが、セシルはさして気になった様子も見せることなく続ける。


「だけど、その行方不明になった人って所謂、問題のある人っていうか……いなくなっても誰も気に留めない人だったの」


 普段から素行の悪い人間だったので、何かしらの事件に巻き込まれたとしてもおかしくはない。そういった諦めにも似た感情で話されたという。


「まあ、この街の秘密と関係ないと思うけど、それ以外にはこれといった気になる情報はなかったわね」

「そうか……」


 セシルはたいして気にしていない様子だったが、ユリウスにはその行方不明になったという人物の行方が気になっていた。

 これはますます、少女に治安が悪いと言われた路地裏へと行く必要がありそうだった。

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