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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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消える力?

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


どうも、柏木サトシです。

新年あけて一発目の投稿です。

今年は、色んな面で勝負の一年となりそうですが、皆様はいかがでしょうか?

私、個人的としても新作の発売がありますが、ラグビーのワールドカップや、贔屓にしている中日ドラゴンズに入団した根尾君の活躍や、与田監督新体制の行方など気になることが多々ある年になりそうです。

他にも新元号に変わったりと、時代の節目と言う意味でも大きな一年になりそうですが、物書きとして大きく飛躍する一年にしたいなと思っています。

そんな数多くの気になることがある2019年ですが、こちらの投稿も頑張って続けていきたいと思いますので、本年もどうぞよろしくお願い致します。

 セシルから散々叩き込まれたボディーブローは、完璧な角度で男の鳩尾へと吸い込まれた。


 これでこの男は、暫くは立ち上がることもできまい。

 そう思うユリウスだったが、


「……痛ぇな。おい!」

「えっ?」


 倒れるはずの男が憎悪に満ちた目で、ユリウスのことを睨んでいた。

 男は殴られた腹部を押さえながら、取り落とさなかったナイフを振り回す。


「おらぁっ!」

「うわっ!?」


 紋章兵器マグナ・スレストのお蔭でナイフの軌道が見えていたので、間一髪のところで回避することはできたが、少しでも反応が遅れていたら致命傷を受けていたことにユリウスは肝を冷やす。


「散々舐めた真似してくれたんだから、きっちりと落とし前をうけてもらうぞ!」


 完全に頭に来ている様子の男は、鬱憤を晴らすかのようにめちゃくちゃにナイフを振り回しはじめる。


(クソッ、あの脳筋女。これが決まれば僕でも簡単に勝てるって言ってたじゃないか)


 間一髪でナイフを避けながら、ユリウスはここにはいないセシルに向かって悪態を吐く。


「オラオラ、ちょこまかと逃げ回ることだけかよ!」

「チィ…………」


 必殺のカウンター攻撃で倒せなかった以上、ユリウスに男を倒し切る術はなかった。

 セシルやブレットたちと同じ騎士という立場にいるユリウスだったが、これといった武器の携帯はしていない。

 その理由として、最初から戦う気がないというのもあるが、下手に武器を手にして余計なヘイトを買う必要がないだろうという判断と、自分が携帯している武器を相手に盗られてそれで殺されでもしたら、間抜けにも程があるという理由からだった。

 しかし、こんなことなら最低限の武器は携帯しておくべきかもしれない。


 男の堂に入っていない素人同然の雑な攻撃を避けながら、ユリウスは今の状況を打破する方法を考える。

 一旦、逃げると見せかけて、セシルと合流するべきだろうか。あの脳筋女ならば、この程度の男たちを一掃することも容易いだろう。

 後は男たちを適当に挑発して、上手く女性から引き剝がすことができれば……そんなことをユリウスが考えていると、


「こっち!」


 男たちに追い込まれ、泣いていたはずの女性が勇猛果敢にもユリウスの手を取って暴れる男から救出してみせる。


「なっ!? 君は?」

「話は後! とにかく付いてきて!」


 ユリウスの言葉を無視して、女性はその可憐な見た目からは想像もつかないような強い力でユリウスを引く。


「なっ!? おい、ちょっと待て!」


 追い詰められ、泣いていたはずの女性がまさかこんな積極的に動いてくると思っていなかったのか、男たちが慌ててユリウスたちの後を追いかけるが、彼我の距離は既にかなりのものとなっている。

 不意を突いたアドバンテージを活かし、女性は狭い路地を右へ左へと、追跡者たちが追えなくなるようにと次々と折れ曲がるようにして進む。


(こいつ……)


 狭い路地を迷うことなく進む女性に、ユリウスが怪訝な表情を浮かべると同時に、


「ここに隠れて!」


 いきなり女性に路地の一角へと押し込まれ、後頭部を強かに打ち付ける。


「あがっ!? こ、この……うぷっ!?」


 目の前に星が散り、涙目になりながらユリウスが文句を言おうとするが、それより早く女性がユリウスの口を押えて自分の体を押し付けるように密着してくる。


「静かにして……ここなら多分、見つからないから」


 そう言う女性が言うこの場所は、建物の構造の関係で出来た人一人が入るのがやっとの隙間で、他所からは死角となって見えない場所だった。

 当然ながら人一人入るのがやっとの隙間なので、必然的にユリウスと女性は密着することになるのだが、ユリウスとしては気が気でなかった。

 ユリウスの左目の紋章兵器は、壁をすり抜けて真っ赤に光る男たちの様子を映し出している。

 男たちは闇雲に探していると思いきや、一つ一つの路地を入念に調べて回っているようで、このままここにいてはいずれ見つかってしまう可能性は十分にあった。


(そのことを伝えるべきだろうか……でも、どうやって)


 その気になれば右目の力を使い、上空から男たちの動きを見ながら逃げることも可能だろうが、その為には、女性に自分の紋章兵器のことを説明しなければ納得してくれないだろう。

 そうこうしている間にも、男たちが徐々に迫って来ている。どうにかしなければと思うユリウスだったが、


「ちょっと、変なところ触らないで?」


 ほんの少し身動ぎしただけで女性から抗議の声が上がり、ユリウスは眉を顰める。


「そう言う場合じゃないだろう。連中、近くまで来ているぞ」

「大丈夫よ。ここなら見つからないから」


 余程自信があるのか、女性の顔には随分と余裕が浮かんでいる。


(どういうことだ……何故、こいつはここまで強気でいられるんだ?)


 女性の自信に、ユリウスが戸惑っていると、左目の映像にある変化が起きる。


「……何だと?」


 ついさっきまで真っ赤に光っていた男たちの姿が忽然と消えてしまったのだ。

 一体、どうして。まさか、紋章兵器の力が消えてしまったのか。そう思い、何度も左目を擦っていると、女性が不思議そうに見上げてくる。


「どうしたの? その目、痛むの?」

「い、いや……そういうわけじゃないんだが……どうやら本当に無事に気に抜けたみたいだな?」

「わかるの?」

「……直感だ。おそらく、もう問題あるまい」


 そう言ってユリウスは女性を押し退けると、何が起こったのかを確かめるために男たちがいた場所へと向かおうとする。

 だが、そんなユリウスの手を、女性が強く引いて諫める。


「ちょ、ちょっと待ってよ。せっかく助かったなら、あいつ等がいる方向に行かなくていいでしょ!」

「だが、本当に無事になったかどうかの確認ぐらいはしたい」

「やめてよ! ここってば、この街でも相当治安が悪い場所なんだからね。そんなところに、君みたいな弱っちい奴がいったところで、碌なことにならないわよ」

「むっ、それはそうだが……」

「でしょ? せっかく拾った命なんだから、早いうちにこんなところおさらばしちゃいましょ。ほら、私が送ってあげるからさ」


 そう言うと、女性はユリウスの手に自分の手を絡めて強引に歩きはじめる。


「…………やれやれ」


 その有無を言わさない強引さに、ユリウスはおとなしく従うしかなかった。

 ユリウスが観念すると、女性は安心したようにやや力を緩め、快活に笑う。


「そういや一応、礼を言っとく。助けてくれてありがとうね」

「……別に、たまたまだよ」


 ユリウスがぶっきらぼうにそう告げると、女性は呆れたように小さく嘆息した。

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