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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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疑惑の街

どうも、いつも大変お世話になっております。柏木サトシです。

ようやく新作の方も一段落がつき、これから暫くは、こちらの作品に注力できそうです。

ただ、暫く離れていた為、情報整理をしながら書いていきますので、可及的速やかに更新していくつもりですが、過度な期待をせずにのんびりと待っていただければと思います。ただ、年末年始で可能な限り書き溜めたいと思うので、その辺りは比較的頻繫に更新したいと思います(希望的観測ですが)


さて、個人的な話で恐縮ですが、新作の方は何事もなければ来年の二月末に皆様の下へお届けできそうです。

タイトルも決まりまして、次回作のタイトルは「パパ、大好き!と愛娘に言われるためならば、俺は世界を敵に回しても構わない。」になりました。

非情に長いタイトルですが、色々と考えた結果、これが一番いいだろうということになり、この長いタイトルになりました。そのうちファミ通文庫のHPの方で試し読みができると思うので、よかったらチェックしてみてください。

疲れた心に染み渡るほっこりとした作品になったと思いますので、そういった作品が好きな方は、期待していただければと思います。

こちらの作品共々、これからもどうぞよろしくお願いします。それでは、本編の方をお楽しみください。

 街を囲む城壁で簡単な質問にいくつか答え、ユリウスたちはパロマの街の中へと入った。


「…………驚いたな」


 パロマの街に入って暫くして、壁の向こう側からではわからなかった街の様子を見たユリウスは驚きで目を見開く。


「聞いた話では、人口は百人程度と聞いていたが……」


 そう言うユリウスの目の前には、入り口から続く目抜き通りに溢れかえった人々の姿が映っていた。

 人々の多さもさることながら、建ち並ぶ建物は二階、三階建てといった高層のものが続き、そこかしこから商人たちの威勢のいい声が聞こえる。

 純粋に街の規模からいえば、以前、プリマヴェーラを巡ってナルベたちと争ったスワローの街には劣るものの、パロマの町はそれと遜色ないほどには見事に発展していた。

 事前に聞いていた情報との余りの乖離に、ユリウスは胡乱な目で隣に立つセシルに文句を言う。


「おい、聞いていた情報と全然違うぞ。どこの街の人口が百人足らずだ? もしかしてお前の頭は、百までしか数えられないのか?」

「し、失礼ね。もっと数えられるわよ! でも、どうして……聞いた話では、パロマは自然が美しい長閑な街だって話だったのに……」

「大方、何十年も前の話でした。とかいうオチではないのか?」

「そんなはずはないわ。だって、その方は一年前に訪れたと仰っていたわ。その時は確かに何の変哲もない街だったって……」

「ふむ……」


 セシルの様子を見る限り、嘘を言っているとは思えなかった。

 では、セシルにパロマの街の情報を教えた者が嘘の情報を吹き込んだのだろうか。


(いや、その可能性もないだろう)


 そもそも、パロマの街に着けばすぐにバレるような嘘を吐くメリットがない。

 普段からそういう冗談を言う人物という可能性もあるが、そういう人物から寄せられた情報であれば、セシルもここまで驚いたりしないだろう。


 だとすれば、考える可能性はひとつしかなかった。


「……ここ一年で急激に変化したのだろうな」

「えっ?」

「セシルに話した奴が嘘を吐いていないのならば、この街の急激な変化は、ここ一年の間で起きたということだろう」

「で、でも、そんなことあるわけ……」

「金と資材、それに人材があれば不可能ではないだろう。後は、どうしてそんな急激な変化が起きたのかだが、それは街の人間から聞けばいいだろう……というわけだ。行くぞ」

「う、うん……」


 先程とは打って変わり、意気揚々と歩きはじめたユリウスの後を、セシルは置いていかれないように慌てて追いかけた。



「それで、一体どうするつもりなの?」


 歩きはじめたユリウスに、後ろから置いていかれないようについてくるセシルが訪ねてくる。


「情報収集って言ったけど、あてはあるの?」

「そんなものはない。そういうのは、自分からつくるものだ」


 そう言うと、ユリウスは近くの青果店へと足を運ぶ。

 大きく深呼吸を一つし、余所行きの愛想の良い顔を作ったユリウスは、威勢のいい掛け声で客の呼び込みをしている中年の男性店主へと話しかける。


「こんにちは、精が出ますね」

「おう、いらっしゃい。今日はリンゴのいいのが入ったんだ。間違いなく美味いから、買わないと損するぜ」

「それじゃあ、リンゴを五つもらえますか?」

「あいよ。即断してくれるたぁ、兄ちゃん気持ちのいい奴だな」


 ユリウスの態度に気を良くしたのか、店主は山と積まれたリンゴの中から、特にお勧めだという品を五つ選んで紙袋へと詰める。


「ありがとうございます。確かにこれは美味しそうだ……」


 料金を払いながら、艶やかな赤色のリンゴを見てユリウスは顔を綻ばせる。

 紙袋を大事そうに脇に抱えるユリウスに、店主が世間話をするように気さくに話しかけてくる。


「見ない顔だけど、兄ちゃんは旅人か何かかい?」

「ええ、そんなものです。そう言うおじさんは、この街で働いて長いのですか?」

「俺かい? 俺は、生まれも育ちもこの街だよ。この街のことで知りたいことがあるなら何でも聞いてくれよ」

「そうですか……それじゃあ、早速一つ、お聞きしても良いですか?」

「おう、何だい?」

「実は、知人からこの街に聖女様がいらっしゃると聞いたのですが、それっていつなんですか?」

「そうかい……兄ちゃん、ついてるな」


 ユリウスの質問に、店主はニヤリと笑みを浮かべると、人差し指を立てて得意げに話す。


「実を言うと、聖女様がいらっしゃるのは今日なんだよ。多分、もう街に入っているんじゃないのか?」

「本当ですか!? 急いで来たかいがありました」

「全くだ。これも聖女様の思し召しかもな」


 店主は二カッと白い歯を見せると、バシバシとユリウスの背中を乱暴に叩く。


「街の中心にでかい広場があるんだがな。そこで聖女様が迷える子羊たちを救ってくださるから、ぜひとも見て行ってくれ」

「わかりました。ありがとうございます……でも、流石ですね」

「ん? 何がだい?」


 小首を傾げる店主に、ユリウスは両手を広げて活気あふれる街を示す。


「この街ですよ。これだけ大きな街なら、聖女様が来るのも納得です」

「ハハハッ、まあな。この街も昔は小さな街だったんだけど、聖女様が来るに相応しい街にしなきゃってみんなで協力して、少しずつ大きくしていったんだ」

「それは凄い! それだけ手がかかっているなら、皆さんのこの街への想いもひとしおでしょうね」

「まあな。それで、この街には旅人のための宿屋も多いから、兄ちゃんも今日はこの街に泊っていくといい。良かったら俺のお勧めの宿屋を教えてやるよ」

「本当ですか!? ぜひともお願いします」

「ああ、任せておけ」


 気を良くした店主は厚い胸板をドン、と強く叩くと、ユリウスに自分の薦める宿屋を紹介してくれ、さらに夕食を食べるのは何処が良いとか、危険だから近づかない方が良いという場所を事細かに教えてくれた。



「何から何までありがとうございました」

「いいってことよ。兄ちゃんも元気でな」


 満面の笑顔で手を振ってくる店主に、ユリウスは何度も頭を下げながら青果店を後にした。

 ユリウスはそのまま何食わぬ顔で暫く歩を進め、青果店が見えなくなったところで、後ろを振り返ってことの成り行きを見守っていたセシルに向かってリンゴの入った紙袋を放り投げる。


「と、まあ、こんな具合だ」

「……し、信じられない」


 ユリウスの手腕に、大きな目をまん丸に見開いたセシルが呆れたように言う。


「人当たりのいい笑顔に、真っ当な言葉遣い……あんたにそんな常識的な行動ができるなんて夢でも見ているのかしら?」

「ハッ、言ってろ。これぐらいは当然の処世術だ」

「……それが当然だと思うのだったら、少しは私に気を使ってくれてもいいんじゃないのかしら?」

「お前は馬鹿か? どうして僕がお前みたいな脳筋女にこびへつらう必要があるんだ。敬って欲しかったら、最低でも一国の姫ぐらいになってみせるんだな。まあ、もっとも貴様が一国の姫でも、そこに価値を見出せなければ、敬うつもりはないがな」

「こ、こいつ……言わせておけば」


 余りの物言いに額に青筋を浮かべるセシルだったが、ユリウスはそれを無視して青果店店主とのやり取りについて話す。


「そんなことより気付いたか?」

「何よ! もう、あんたが余計なことを言うから、何の話だったか忘れちゃったわよ!」

「……やれやれ」


 これだから脳筋女は……そう言いたい気持ちをグッと抑え、ユリウスは店主との会話で気付いた違和感について話す。


「あの店主、この街は、聖女様をお迎えする相応しい街にするために、皆で協力して少しずつ大きくしていったと言ったんだ」

「えっ、それっておかしくない?」

「そうだ。お前の聞いた話では、この街はたった一年で急激に変化したはずなのに、だ」

「これってどういうこと?」

「わからん……だが、何か裏がありそうなのは確かだな」


 これは面白いことになってきた。

 ユリウスは口には出さずにそう思うと、乾いていた唇をペロリと舐める。

 明日まで退屈極まりない時間を過ごさなければならないと思ったが、面白い展開になってきたようだ。


「さっきの店主の言葉の真偽を確かめるためにも、もっと色んな人から話を聞こう」

「そうね。私も何だか気になってきたし……話だけでも聞いてみましょ」


 ユリウスの提案に、セシルも異論はないようだった。

 二人は効率よく情報を集めるために手分けすることにし、落ち合う場所を決めてそれぞれ行動を開始する。


「やれやれ、ようやく一人になれた」


 セシルの背中を見送ったユリウスは、緊張から解き放たれたかのように大きく嘆息し、凝り固まった方をほぐすように回す。


「さて……のんびりしたいが、時間もないし僕も行くか……」


 一体何を隠しているかわからないが、必ずこの街の秘密を暴いてみせる。

 今後の目標をはっきりさせたユリウスは獰猛に笑うと、新たな情報を求めて活気あふれる街へと足を踏み出した。

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