快活少女
ご無沙汰しております。柏木サトシです。
新作の原稿の方が一段落つき現在は絶賛改稿中ですが、少し待ち時間ができたので、こうして生存報告だけはしておこうと思い、投稿できる分の原稿を書いてみました。
完成までには、まだまだ手がかかりそうなので、こちらの投稿を再開するのはもう少し時間がかかりそうですが、新作の方は自分では結構な自信作になったと思います。
自分の最も得意なジャンルで勝負させていただくので、これが全く世間に響かず、作品が売れない。話がつまらない。ヒロインに全く魅力がない。と言われたら色んな意味で諦めがつくと思います。
と言っても、小説を書くことを辞めることはないと思いますが、商業作家として活動することは、もうないかと思います。
そんな覚悟を持って書いた作品は、来年の桜が咲く少し前には皆様にお届けできるかと思います。
発売前にはファミ通文庫のHPで試し読みとかできるようになると思いますので、色々と決まりましたらまた改めてお知らせいたします。
こちらの方も、時間を見てぼちぼち再開していきたいと思いますので、これからも何卒よろしくお願い申し上げます。
王族を直接守るのは初めてというセシルは道中、これでもかというくらい辺りを警戒しながら進んでいた。
草の根一本見逃さないようにと、キョロキョロと首を巡らせ、一秒たりとも同じところを見ないセシルを見ながら、ユリウスは呆れたように前のブレットに話しかける。
「…………あんなに無駄に力を入れていると、町に着く頃には、体力が尽きてしまうのではないのか?」
「ハハハ、まあ、仕方ないよ。姉さん、憧れのプリマヴェーラ様の護衛に就くことができて、昨日の夜は殆ど寝れていないみたいだからね」
「おいおい、そんなんで護衛の仕事なんか務まるのか?」
「さあ、多分大丈夫じゃないかな? 姉さんは、ボク等と違って体力は無尽蔵にあるタイプみたいだからね」
「……まあ、確かに」
セシルの脳筋っぷりを色々な意味で理解しているユリウスは、頷くことしかできなかった。
屋外であれば、自分の紋章兵器の力を使えば不意を打たれる心配は殆どないのだが、ここでそれを言って自分の余計な労力が増えるのは嫌なユリウスは、監視はセシルに任せて自分は目的地までのんびりと景色でも楽しもうと思った。
(だが、それにしても……)
先程のブレットの言葉を聞いて、ユリウスは改めて思ったことがあった。
「ブレット、君とセシルは本当に双子の姉弟なのか?」
見た目こそそれなりに類似点が多いセシルとブレットだが、その中身は表と裏、白と黒、明と暗と言われても過言ではないくらい正反対だ。
「ハハハ、よく言われるよ」
歯に衣着せぬユリウスの言葉に、ブレットは思わず苦笑する。
「まあ、ボクがこんな性格になったのも、姉さんの影響が大きいのかな?」
ブレット曰く、物心ついた時からセシルは口よりも手が早く動くタイプの人間だったという。
「ボクが考えている間に姉さんはいつも危険に飛び込んでいくから、自分から前に出ていくことが苦手になっていったんだと思う。よく奥手だと言われるけど、それって慎重ってことだろう? その言葉は、ボクにとっては最高の褒め言葉だよ。そういう意味では、ボクとユリウスは似ているのかもね。だからなのかな? 姉さんがユリウスと簡単に打ち解けられたのは」
「……もしそうだというなら、貴様には生き方を改めてもらわねばならないな」
「あっ、酷いな。それ、どういう意味だよ」
「そのままの意味だ。ブレットの性格が変われば、僕があの脳筋女に絡まれることもなくなり、平穏に過ごせるだろうということだ」
「ハハッ、何だよそれ……っていうか、ユリウスってボクにだけなんだか厳しくない?」
「そんなことはない。ただ、そう思うなら、貴様は今すぐにでも生き方を改めるべきだな。でないと、いつまでも不遇な目に遭うぞ?」
「もう、それ以上酷いこと言うと、姉さんに告げ口するよ?」
「…………っていうのは冗談だ。気にするな」
セシルの名前を出した途端、あっさりと引き下がるユリウスを見たブレットは、
「プッ、ククク…………ハッハッハッ!」
堪え切れず、大声で笑い出す。
「……フッ」
ブレットに釣られるようにユリウスも思わず吹き出す。
その様子は、正に仲の良い友達のようだった。
だが、そんな仲睦まじい姿も、時と場合を選ぶべきだった。
何故なら、今は大切な任務中で、すぐ隣に二人の天敵ともいえる人物が控えているからだ。
「ちょっとそこの二人、何、マヌケな顔して笑ってるのよ。大体、あんたたちはね……」
当然ながら二人の不真面目な態度に気付いたセシルが、やって来て、グチグチと文句を言い始めたのだ。
「全く、あんたたち二人は、私がいないと真面目に任務に就くこともできないのね。そもそも……」
セシルの口撃は止むことを知らず、ユリウスたちは暫くの間、セシルに並走されながら揃って小言を聞く羽目になるのだった。
結局、移動中は終始セシルの小言に付き合うことになったが、幸いにもこれといった問題は起きることもなく、ユリウスたちは目的地であるパロマへと辿り着いた。
街の入口が目視できるところでプリマヴェーラの乗った馬車が急に止まり、馬車からプリマヴェーラが出て来てユリウスたちに話しかける。
「皆様、こまでの案内ありがとうございます。私はここで失礼しますので、お三方は好きに過ごして下さい」
「えっ!? そ、そんな困ります!」
プリマヴェーラからの突然の解散宣言に、セシルが悲鳴のような声を上げる。
「私たちは、プリマヴェーラ様を城まで無事に送り届ける任務を受けております」
「ええ、ですから帰りにまたお願いしますので、明日までご自由になさって結構ですよ?」
「い、いえ……そういうわけではなくてですね……」
「お話は後ほど伺いますよ。それでは、ごきげんよう」
プリマヴェーラは一方的に話を打ち切ると、馬車の中へと戻って御者台に乗るメイドに向かって馬車を出すように指示を出す。
あそこまでキッパリと拒絶された以上、下手にプリマヴェーラの後に続くわけにはいかず、セシルは唇を噛み締めてプリマヴェーラを見送った。
「それで、これからどうするんだ?」
早々に主から見放され、途端にやることがなくなったユリウスが呆れたようにセシルに尋ねる。
「好きに過ごしていいと言われたんだ……今日は帰るか?」
「ふざけないで、そんなことできるわけないでしょう!」
ユリウスの軽口に、セシルが眦を上げて怒りを露わにする。
「この町にプリマヴェーラ様がいる以上、ここを離れるわけにはいかないわ……こうなったら町を隅々まで見て回り、不審者がいないかどうかチェックしましょ」
「そうか、頑張れよ」
気合を入れ直すセシルを見て、ユリウスは馬から降りて早々に立ち去ろうとする。
だが、
「何言ってるの……」
とっとと逃げようとするユリウスだったが、先回りしたセシルによって首根っこを掴まれてしまう。
「あんたも来るのよ」
「ぐえっ……」
いくら同じ年頃の男子より肉付きが悪く、細身のユリウスとはいえ、それを片腕で軽々と持ち上げるセシルの膂力に、ユリウスは戦慄する。
「もう一度言うわ。あんたも来るの。いい?」
「わ、わかったから……放して……死ぬ……」
「フン……」
ユリウスの必死の懇願に、セシルは鼻を鳴らしながら乱暴に手を離す。
「がはっ……ゴホッゴホッ! クソッ、怪力女が……殺す気か?」
「心配しなくてもちゃんと手加減してあげてるわ。第一、あんたがちゃんとに行動してたら、私もこんなことしなくていいのに……ユリウスはどうしてこんなに不真面目なのかしらね? ファルコ様もどうしてこんな奴を登用したのかしら?」
「フン……それこそ気の迷いってやつではないのか?」
「……あんたが自分でそれを言うの?」
「実際、僕は戦闘では何の役にも立たないからな。僕に出来るのは、お前たちを手足のように使うだけさ」
そう言うと、ユリウスはセシルに背中を向けて歩き出す。
「ちょっと、何処に行くのよ」
「行くって、決まっているだろう」
ユリウスは街を顎で示すと、退屈そうに嘆息する。
「遺憾だが、街を見て回るのだろう?」
「――っ、あんた……」
セシルは一瞬、驚いた表情を見せた後、ニヤリと口の端を吊り上げて笑う。
「とっとと、そう言えばいいのよ」
そう言うと、セシルは颯爽と馬から飛び降りて手綱を引いてブレットへと手渡す。
「じゃあ、私はユリウスと先に街に入っているから、後のことはよろしくね」
「……はぁ、そんな気はしていたけど、了解だよ」
姉の理不尽さに慣れているブレットは不承不承ながら頷くと、二頭の馬を連れて宿屋へと向かう。
それを見送ったセシルはユリウスの手を取ると、手を引いて歩き出す。
「それじゃあ、すぐに行きましょ」
「あたたっ、痛い! そんな力強く引っ張るな!」
「ハハハッ、聞こえな~い」
ユリウスの抗議を無視して、セシルは今にも駆け出しそうな勢いで街に向かって突撃していった。




