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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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騎士の矜持と届かぬ想いと

 教会が奏でる一日に始まりを告げる鐘の音と共に、ユリウスたちはアクイラ城を出立した。


 朝日を受けて颯爽と走る二頭の栗毛の馬を先頭に、四頭の葦毛の馬が引く煌びやかな意匠を凝らした馬車が続く。

 さらにその後ろには幌のついた簡素な馬車が続き、荷台には何やら荷物が満載されていた。

 馬は地面を踏み固められて造られた幅の広い街道を、十分に風を感じられる速度で駆けていた。

 先頭の二頭の馬にはセシルとブレット。残念ながらユリウスは一人で馬には乗れないので、ブレットの後ろに乗せてもらうという情けない姿となっていたが、セシルたちにとっては既にお馴染みの姿なので、いまさら指摘する者もいない。

 その後ろの豪奢の馬車には、当然ながらプリマヴェーラが収まり、傍付きのメイドたちも同乗している。

 最後の幌付きの荷馬車には、ファルコが用意した物資が乗せられており、目的地である街のために用意した支援物資だという。


 今日の目的地は、馬車で三時間ほど移動したところにある町で、プリマヴェーラによる治療と、支援物資による炊き出しを行うのだという。

 その町は、つい最近にあった大雨によって土砂崩れが起き、山沿いで栽培していた田畑が全滅したのだという。

 怪我人も多く出たようで、街はほぼ壊滅の危機に陥ってしまったのだ。

 やっとの思いでアクイラまでやって来た街の人の声を聞き取ったプリマヴェーラは、すぐさま支援活動に出ることを申し出たというわけだった。


 ユリウスたちの役目は、そこで万が一が起きないようにプリマヴェーラを護衛することだ。


「といっても、おそらく私たちの出番はないわ」


 プリマヴェーラの乗る馬車を後ろに従えながら、馬上のセシルが隣で同じように馬を駆るユリウスたちに話しかける。


「前回の事件を受けて、今回は万全に万全を期して、騎士団の仲間たちが前入りして町を警戒しているの」

「ちなみに今回行くところはどんな場所なんだ?」

「パロマというこれといった特徴もない小さな町よ。人口も百人をようやく超える程度だから、不審者の侵入なんて絶対に許さないわ」

「なるほど……だけど一ついいか?」

「何?」

「人口が百人いる程度なら、それは町ではなくて村というのではないのか?」

「……う、うるさいわね。昨日の会議でそう言ってたから私のせいじゃないわ!」


 ユリウスの指摘に、セシルは顔を赤くして反論する。


「それに、別に町だとか村だとかどうでもいいでしょ。それともユリウスは、百人程度で街を名乗るようなところは、守る価値もないとか言うつもり?」

「そんなつもりはない。ただ、いくら何でも厳重や過ぎないかと思ってね」

「それは認めるわ。でもね……」


 セシルは前を見据えたまま、悔しそうに歯噛みする。


「私たち騎士団にとって、その国の王族を誘拐されるということがどれだけの屈辱かわかる? そんな屈辱、私を始めて全員が二度と味わうわけにはいかないと決めているのよ」

「……なるほど、よくわかったよ」


 ユリウスは適当に相槌を打って話を打ち切ると、小さく嘆息する。

 つまりこれは、セシルたちにとっては、前回の失態を取り返す為の場というわけだ。


(だけど……)


 騎士団がそういった態度だから、プリマヴェーラが護衛を断ったのではないかとユリウスは考える。

 プリマヴェーラは民に治療を施すのと同時に、民たちとの触れ合いを楽しんでいるのではないかとユリウスは考えている。

 そのような場に、厳つい顔をした男たちが自分たちを睨むように立っていたら、果たして本音でプリマヴェーラと話すことができるだろうか。

 言うまでもなく、そんなことは無理だろう。

 だからこそ、ファルコはどうにかユリウス、セシルとブレットの姉弟だけは許容して欲しいと説得したようだが、実際はプリマヴェーラに内緒で現地に兵士たちを配置しているのだという。

 百人程度しかいない村と呼んで差し支えないのない街であるならば、確かに不審者の侵入は完璧に拒めるかもしれないが、街に住む人たちからしてみれば、果たして不審者はどっちになるだろうか。

 自分の紋章兵器があれば、プリマヴェーラに万が一が起きる可能性は限りなく低いが、


(これは、どちらにしてもひと悶着あるかもな……)


 ユリウスは慣れない馬上で痛む尻を擦りながら、これから起こるトラブルを思って小さく溜息を吐いた。

最近、すっかり更新が遅れてしまい申し訳ございません。柏木サトシです。


実はここ最近の更新が遅いのには訳がありまして……普通に仕事が忙しいというのもありますが、新企画の準備のため、そちらの方に注力していたからです。

そして、その甲斐もあって見事、企画が通りまして次の本を出せる目処が立ちました。

前のシリーズの打ち切りから実に二年……長かったですが、ようやくここまで来れたことを嬉しく思います。


ただ、今後はそちらの原稿にかかるため、こちらの更新は暫くお休みさせていただくことになりそうです。

次の本の売り上げ次第では、もう次の本を出せないという可能性も十分にあると思いますので、悔いのないように最高に面白いエンターテインメント作品に仕上げたいと思います。

とりあえず原稿が一段落つきましたら、こちらの更新の再開いたしますので、今しばらくお待ちいただけると幸いです。


また、本の発売時期や、細かいことが決まりましたら、またこちらでお知らせさせていただきますので、何卒宜しくお願い致します。

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