推理披露
投稿が遅れて申し訳ありません。柏木サトシです。
前回の投稿から随分と間が空いてしまいましたが、まだ完全回復とはいかず、また、色々と仕事が立て込んでおり、まだ暫くは十分な執筆時間の確保はできそうにないです。
それでも毎日少しずつは書いておりますので、週、2、3回を目安に投稿できるように頑張っていきたいと思いますので、今後とも何卒宜しくお願い致します。
この作品はまだまだ当面の間続くと思いますので、気長にお待ちいただければと思います。
「フフッ、君は意外に素直なんだね」
突然声を上げて笑い出すファルコに、ユリウスは怪訝そうに眉を顰める。
「……どういう意味です」
「顔、さっきから感情が表情に出ているよ」
「――っ!?」
そこでユリウスはしまったと口を押えるが、それもまた表情に出したのと同義と気付き、悔し気に歯噛みする。
(クソッ……悔しいけど、相手の方が一枚上手だ)
これ以上は取り繕っても仕方ないとユリウスは判断し、思い切ってファルコに質問してみることにする。
「じゃ、じゃあ、紋章兵器でないのなら、どうして僕の考えていることが……その、わかるのですか?」
「そうだね。最初に言っておくけど、僕は人の考えが読めるわけじゃないんだ」
「違うのですか?」
「うん、違う。思考を読むのではなくて、僕のはただの経験則からくる推測だよ」
「経験……則?」
「そう、人には感情毎に現れる癖があってね。本人は必死に隠しているつもりでも、案外表に出ていたりするんだ。僕はそれを読んでいるんだよ。例えば君は、さっきまで警戒していたのか指を絡ませていたけど、今は取り繕ってもしょうがないと割り切ったのか、拳を握り締めている……攻撃的に出る人に出る特徴の一つだ」
「えっ? あっ……」
そう言われてユリウスは、自分が力いっぱい拳を握りこんでいたことに気付く。
「…………」
腕をどうしたらいいかわからなかったが、とりあえずファルコの見える位置に置いておくと碌なことにならないような気がしたユリウスは、黙って腕を自分が座っているベッドにかけられたシーツの中へと隠す。
「…………まあ、そういうわけだよ」
だから別にたいしたことじゃないと肩を竦めるファルコだが、ユリウスは出有って間もない自分の考えをここまで的確に読めるようになるまで、一体どれだけの努力を重ねてきたのだろうと思う。
例えば自分は産まれてからほぼ毎日、それこそ四六時中ヴィオラと顔を合わせているが、彼女の所作を見て、彼女の考えていることを的確に当てることはできるだろうか。
(いや、できない)
当然ながら嬉しそうだとか、悲しそうだという感情を読み取ることはできる。だが、それは表面上のことであって、頭の中で何を考えているかまではわからない。
それをファルコはたった数分、ユリウスと会話しただけでユリウスの癖からその心情を察知してみせたのだ。
ファルコは自分を卑下しているようだが、ユリウスにとって彼の在り方は、とても多くのことを学べそうな気がした。
(……この人なら)
自分の復讐の足掛かりになる後ろ盾として申し分ない。そう考えたユリウスは、そのことをファルコ伝えようとするが、
「そういや話が逸れてしまったけど……」
その前にファルコが話しを切り出す。
「霧の山賊団について僕の考え、聞いてもらってもいいかな?」
「……ええ、どうぞ」
ユリウスが首肯すると、ファルコはニヤリと口の端を吊り上げて笑う。
「実を言うとね……僕は霧の山賊団はまだ全滅していないと思うんだ」
「ど、どういう意味ですか?」
「我々の追撃を縫って、生き延びた者が実はいたんだよ!」
そう言うとファルコは立ち上がり、演劇の公演のように身振り手振りを交えながら話しだす。
「その者は霧の山賊団を裏から操っていた真の頭目。仲間を甘言で死地へと追い込み、自分は彼等を裏切るタイミングを虎視眈々と狙っていたんだ」
「……どうして、そんな真似を?」
「理由はいくつかある……彼等に個人的な恨みがあった。他にも恨みを晴らしたい者がいるが、力が足りないからさらなる力を求めて自分が仕える相手を見定めていた。その折に、僕の妹に目が止まったとかかね?」
そこまで言えば、もうわかるだろう。そう言ってファルコはユリウスを指差す。
「……そう、ユリウス。霧の山賊団の真の頭目は君だよ!」
「…………」
その問いにユリウスは感情を表に出さないように無言で応えた。
少しでも口を開けば、すぐさま看破されそうな気がしたから……。




