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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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最後の抵抗

 一方、隣の部屋ではまだ膠着状態が続いていた。


「おのれ……舐めた真似を」


 先程から何度か攻撃の隙を伺って仕掛けようとするナルベだったが、その度にヴィオラが何処からともなく取り出した暗器による牽制攻撃によって未然に防がれていた。


「さあ、早く逃げないと、この国の姫を守る騎士様たちがなだれ込んで来ますわよ」


 ユリウスが所定の位置に辿り着くまで時間を稼ぐことが目的のヴィオラは、余裕の表情でナルベたちを挑発する。


「三人がかりであれば勝てると踏んだのでしょうが、所詮は山賊、ということですね」

「……どういう意味だ?」

「互いに犠牲を出すなら自分以外の誰か……そう考えているから、ちっとも連携が取れていないことに気付いていないのですか?」


 ヴィオラは「ああ」と得心がいったように手を打つと、クスクスと笑いをこぼす。


「だから山賊なんてやっているんでしたのね。学がないお馬鹿さんたち」

「こいつ! 言わせておけば」


 度重なるヴィオラの挑発に、山賊の一人に我慢の限界が訪れる。


「よせ、さっきと同じ轍を踏むつもりか!?」


 飛び出した男にナルベが強い口調で警告を発するが、


「止めないでくれ! 頭の命令でもこれだけは聞けねぇ!」


 男は自分の武器である刃こぼれした曲刀を構えると、自分を散々馬鹿にしたヴィオラへと向かう……のではなく、


「おい、何処へ行くつもりだ!」

「キャアアアアアアアアッ!?」

「ヘヘッ、こいつを見ろ!」


 山賊たちがヴィオラに気を取られている隙を見て、逃げようとしていたメイドの首根っこ捕まえた男は、メイドの白い首に曲刀を当てて下卑た笑みを浮かべる。


「どうだ。こいつの命が惜しかったら、おとなしく武装を解くんだ」

「わ、私のことはいいですから、姫様を助けて!」


 悲痛の叫び声を上げながらメイドは男の手から逃れようと暴れ出す。


「こいつ、おとなしくしろ!」


 必死に逃げようとするメイドを、男は力任せに押さえつけにかかる。


「いい加減にしないと殺すぞ!」

「構いません。私だけ助かっても意味がないですから……だから、早く!」

「……ええ、言われなくても」


 メイドの願いに、双眸を細めたヴィオラは、スカートを翻して左右の手にナイフを四本取り出すと、


「一切の遠慮はしません!」


 もがき続ける二人目掛けて三本を一息に投げつける。


「あっ……」

「あがっ……ぐっ!」


 三本のナイフのうち一本はメイドの額に刺さり、一瞬にして絶命させる。

 残りの二本は男の右肩と右足に刺さり、男は堪らず膝を付く。


「クソッ、まさか人質ごと殺そうとするな……がっ!」


 痛みと憎しみが混じった顔で顔を上げた男の額に、四本目のナイフが突き刺さる。

 男は驚愕の表情を浮かべたまま、どう、と仰向けに倒れる。


「……やれやれ」


 男を倒したヴィオラは、一緒に殺したメイドを一瞥する。

 その顔は血でまみれていたが、何処か誇らしげで微笑さえ浮かべていた。


「……まあ最も、最初から生かして返すつもりはありませんでしたけどね」


 山賊たちと面識があると聞かれた以上、あのメイドが生きていたら後々面倒なことになるかもしれない。

 故に最初から殺すつもりであったのだが、最期に山賊を一人道連れに死んでくれて助かった。

 ヴィオラは、そんなメイドの小さな勇気に感謝しながら再びナルベたちと対峙する。



「馬鹿が……人質っているのは、取る価値があって初めて役に立つんだよ」


 部下が暴走している間、ナルベは何度もヴィオラに対して不意打ちを仕掛けようとしたが、結局動くことができずに悔し気に歯噛みする。


「か、頭……それで、これからどうするつもりですか?」


 これで残った山賊は二人、最期の部下となった男は不安そうにナルベに尋ねる。


「話だと外には俺たちを狩るために兵士たちがわんさか来てるって話じゃねえか! 俺たち、ここから生きて出られるんすか!?」

「わかってる。その方法を今、考えている!」

「クソッ、せめてあいつが人質を取った時に、お姫様の身柄を確保しに行っていれば……」

「それこそ無駄だ」


 ナルベは油断なく武器を構えているヴィオラを憎らしそうに睨む。


「あいつ……お前が少しでも姫様のいる部屋に行こうものなら、その背中に確実にナイフを投げつけてやがったぜ。なあ、そうだろ?」

「さあ、どうでしょう?」


 会話を交わしながらも、両者の間には互いの隙を突いて相手の命を奪ってやろうという目に見えない攻防が繰り広げられていた。

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