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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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血潮舞う

「今の、何だったんだ?」

「さあ……」


 門の近くで互いの恋愛観について言い争っていた山賊の男たちは、今しがた通り過ぎた鏑矢の音と、その後に起きた異変に大いに戸惑っていた。

 鏑矢の音が響いた途端、二人が絡んでいた兵士二人は揃って「呼び出しがかかった」と言って弾かれるように男たちから離れて何処かへ行ってしまった。

 それだけでなく、列が進まないことに苛立ちを露わにしていた商人たちも、鏑矢の音を聞くや慌てたように自分が所属している商館へと駆け込むか、荷物を捨てて門から出て行ってしまった。

 さらに、去っていった兵士たちが操作したのか、門が突然閉まってしまい、残ったのは訳が分からないと混乱する男たち、同じように困惑したように周りを見やる一部の商人たちだった。


「なあ、どうするよ?」

「どうするって……まだ撤収命令は出てないだろう?」


 作戦では王女誘拐が成功したら、その時点でゼゼをスタートとして撤収命令をリレー方式で出すことになっている。


「撤収命令が出たら後は逃げるだけなんだ。だから……」

「ああ……ここはもう少し様子を見よう……」


 撤収命令が出るまでは持ち場を死守するように言われている二人は、素直にその命令に従うことにした。


 そのまま誰が聞いているかもわからない押し問答を繰り返していると、何処からともなく地響きと共に馬の蹄の音が聞こえてくる。


「おい、何か来るぞ?」

「何だよ次から次へと……」


 何が起きているかわからないが、とりあえず与えられた使命を果たそうとしていると、蹄の音はどんどん大きくなってくる。

 そしてとうとう通りの向こうから馬に乗った騎士の姿が見えた途端、男たちは驚愕に目を見開く。


「おい……あれ、本物の騎士だろ? ヤバくねぇか?」

「でも、俺たちは何も悪いことはしてねえ流石の奴等もいきなり手を出してくることはないだろう」

「ハハ……そ、そうだな。そう……」


 自分を安心させるように言葉を紡ごうとする男の言葉は、風切り音を響かせながら飛来した一本の槍によって遮られる。

 槍は男のすぐ脇に着弾し、石で出来た地面を貫通して深々と刺さっていた。


「ヒ、ヒイィィィ!」


 僅か数センチの差で命拾いした男は、顔面蒼白となって悲鳴を上げる。


「ヤ、ヤバいヤバイって!」

「と、とりあえず逃げるぞ!」

「でも何処へ!?」

「わからん! でも、そこら辺に残ってる奴等に紛れれば時間稼ぎにはなる」


 何処から情報が漏れたのか、相手は確実に自分たちに狙いをつけている。そう判断した男たちは、近くにいる商人たちを盾にするために竦みあがっている商人の一人に近付く。


 だが次の瞬間、その商人の首に深々と飛来してきた槍が刺さり、飛んできた勢いを殺すことができず商人の体が面白いように吹き飛ばされる。地面をゴロゴロと何メートルも転がり、ようやく勢いが死んで止まった時には、商人の体はあちこちがあらぬ方向に曲がり、糸が切れた操り人形のようになっていた。


「お、おい……俺たちだけを狙っているんじゃなかったのか!?」

「わ、わからねぇよ! 今はとにかく逃げ……」


 逃げよう。そう提案しようとした男の首から上がいきなり弾け飛ぶ。

 男の背後から物凄い勢いで迫って来た騎士が振るったハルバードが男の首を胴体から永遠に切り離したのだ。

 一人目の男を殺した騎士は、白銀の鎧を返り血で汚しながらも、もう一人の男を殺すために馬を旋回させる。


「クッ……クソったれがああああああああああああっっ!」


 武器を所持していない男は、仲間の死体を見ても臆することなく必死に逃げようとするが、容赦なく追いついてきた騎士が振るったハルバードによってあっさりと首を刎ねられてしまった。

 その後、この場に居合わせた霧の山賊団とは関係のない商人や、旅人たちも容赦なく殺されてしまうのであった。


 そして、この場で起きたことと同様の事態がスワローの街の至る所で起き、昨日まで平和だった街は、突如として血の海に染まるのであった。

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