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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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現れた援軍

「どうした、何があった!」


 怒りに任せて扉を乱暴に開け放ったナルベは、


「――っ!?」


 そこで恐れていた事態が起きてしまったことを自覚する。

 そこには部下の一人の股間に刺した刃をグリグリと執拗に踏みつけるヴィオラの姿があった。

 残りの二人の部下は、今まで従順でどんな命令でも黙って従っていたはずのヴィオラの冷酷過ぎる行動に言葉を無くし、仲間を助けることも忘れて呆然としていた。


「あら?」


 ナルベの姿を見つけたヴィオラは、自分の足元に転がる男の股間を止めとばかりにもう一度蹴り上げると、スカートの裾を掴んで優雅に一礼する。


「ナルベ様、ごきげんよう」

「何がごきげんようだ。イカれた売女が……とうとう正体を現しやがったな」

「あら酷いですわね。私、別にイカれてもいないし売女でもありませんわ」

「……言ってろ。それよりこれは王子様の命令か?」

「さあ、なんのことでしょう?」

「…………そうかよ」


 ヴィオラはとぼけてみせるが、ナルベはここまで全てユリウスに仕組まれたことだと確信する。

 霧の山賊団を踏み台に、自分はプリマヴェーラと彼女の後ろに控える国に取り入る。成り上がるためには単純で、最も効率的な方法だ。

 そのために実に三年、ユリウスは山賊団を大きくさせ、自分が取り入るに相応しい相手に手を出させるように仕向けたのだ。そして、ナルベたちはまんまとその思惑に騙された。


 だが、


「……フッ、舐められたものだな」


 ナルベは口の端を吊り上げて獰猛に笑う。


「悪くない作戦だが、最後の最後で詰めが甘かったな」

「さて、何のことでしょう?」

「単純な話だ。お前等は所詮、二人だけだということだ」


 この場で裏切るということは、ナルベをはじめとする霧の山賊団全員を相手にすると言うことだ。

 盤石を期すならば、裏切るタイミングはプリマヴェーラ誘拐を成功させ、アジトに連れていった後……ミグラテール王国が彼女を本気で探し始めた時が一番のはずだ。

 わざわざナルベたちを敵に回して裏切るのは、三年間も辛い生活に耐え続けたユリウスたちにとって賢い選択とは思えなかった。


「お前がどれだけ強いか知らないが、後からやって来る部下が黙って逃がしてくれると思っているのか?」

「逃げる? どうしてそんなことをしなければならないのですか?」

「何だと?」

「だって逃げたら、あなた達全員を殺すことができないじゃないですか」


 ヴィオラが物騒な台詞を言うのと同時に、ピューという何やら笛のような音があちこちから聞こえ始める。


「どうやら始まったようですね」

「……何がだ?」

「何って決まっているでしょう?」


 ヴィオラは唇に手を当てて蠱惑的に微笑むと、嬉しそうに声を弾ませて話す。


「薄汚い山賊刈りです」



 スワローの街には東西南北、四つの門がある。

 その四つの門の内、東側に位置する門の前に、朝日を受けてキラキラと輝く白銀の鎧を身につけた一団が一糸乱れぬ姿で並んで待機していた。

 一団の先頭に立つのは、鎧と同じアッシュブロンドの髪をなびかせて街を眺める男性、ミグラテール王国の王子であるファルコだった。


「ファルコ様、鏑矢、全て撃ち終わりました」


 するとそこへ、撃つと笛のような甲高い音響かせて飛ぶ矢、鏑矢を撃っていた女性がファルコへ報告のためにやって来る。


「同時に、街の三つの門の閉鎖も完了したという報告が入っています」

「そうか、ご苦労様。弓矢隊の皆は休んでくれ」


 ファルコは柔和な笑みを浮かべると、報告してきた女性に労いの言葉をかけ、後ろに控える自分の騎士団員たちに向き直る。


「さて、諸君。これで準備は整った。覚悟はいいかい?」


 その言葉に、馬に跨る騎士たちから「応!」という声が上がる。


「結構。それじゃあ、作戦は話した通りだ」


 ファルコは腰に吊るした剣を引き抜くと、門に向かって掲げる。


「今、外に出ている人間は全員、霧の山賊団だ。捕らえる必要も話をする必要もない。見つけ次第有無を言わさず全員…………殺せ!」


 宣言と同時に剣を振り下ろすと、白銀の騎士団は一斉に動き出した。

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