そそり立つ……
凛としたよく通る声に、男たちの視線が一斉に部屋の入り口へと向く。
「おっ、いいところに来たな」
声の主に気付いた山賊の一人が嬉々として声を上げる。
「ちょうど今から楽しもうと思っていたところだ。このままじゃ一人余るところだったからお前、俺の相手しろよ」
「おいおい、それじゃあ俺がこのションベンくせぇ女かよ」
「別にいいだろ。ひょっとしたらそいつ、処女かもしれねぇじゃねえか」
「別に俺にそっちの趣味はねえんだけどな……まあいいや」
「というわけだ。とっととこっちに来いよ」
「…………」
だが、声をかけられたにも拘らずヴィオラはその場を動こうとしない。
それどこか、まるで生ゴミでも見るかのような侮蔑の眼差しを男たちに向ける。
「…………おい、何だその目は」
今まで奴隷同然の扱いをしていたヴィオラの豹変した態度を、男たちが見逃すはずがなかった。
「その反抗的な態度……ムカつくな」
「誰がお前のご主人様か、今一度教えてやる必要がありそうだな」
「おいおい、ちょっと待ちな」
立ち上がろうとする二人の男たちを制して、死体を犯していた男が立ち上がる。
「躾のなっていない奴隷にぴったりの仕事があるぜ」
男は剥き出しの下腹部を指差しながら、ヴィオラへと詰め寄る。
「俺様の自慢のナニが汚れちまったからよ。綺麗にしてくれよ……口で」
「おっ、いいな。それ」
「ククク……そんな汚いものを咥えさせるとか、どんだけ鬼畜なんだよ」
男の提案に残りの二人の顔が醜悪に歪み、男へ喝采を送る。
仲間からの賞賛に男は得意げに鼻を鳴らし、ヴィオラへ凄みを利かせる。
「というわけだ……やるよな?」
「…………」
男の命令にヴィオラは目を伏せ、無言でその場に跪く。
その態度からおとなしく命令に従うと思った男は、自らの股間をヴィオラの眼前へと付き出す。
「ケッ、最初からそうやって殊勝な態度を見せておけばいいんだよ。ほらよ、心を籠めて綺麗にしろよ」
碌に風呂に入っていないただでさえ異臭を放つ男の逸物はさらに臭く、仲間の山賊たちは揃って鼻を摘むジェスチャーをする。
そんな汚いものを眼前に突き付けられてもヴィオラは一切表情を変えず「はぁ……」と肩で大きく溜息を吐いたかと思うと、
「――シッ!」
目にも止まらぬ速さで右腕を閃かせた。
次の瞬間、何かがポトッ、と小さな音を立てて高級そうな赤い絨毯の上に落ちる。
「…………えっ?」
一瞬、何が起きたかわからず男は呆気に取られた顔を見せるが、
「あ……ああ…………あああああああっ!」
続いてやって来た痛みと、溢れ出る血を見て状況を理解し、顔を青くさせる。
「お、俺の……俺のものがああああああああああああああああっ!」
男は股間を押さえながら痛みにのたうち回る。
「ああ、俺の……女を犯し…………愉しむ……俺の…………俺のおおおおおおおおおおおっ!!」
地面に突っ伏し、泣き叫びながら男が見やるのは、つい先程まで死体となった女性を犯していた自分の逸物だった。
声の限り叫ぶ男を前にしても表情一つ変えないヴィオラの右手には、いつの間にか小さなナイフが握られていた。
その刃にはぬめぬめと赤黒く光る血が付着しており、ヴィオラが男のものを切り落としたのは明白だった。
自分の下腹部を切り取られた男は痛みに震え、血の涙を流しながらヴィオラを睨む。
「このくそアマァ! お、おお、俺の自慢の……大事なものをどうしてくれるんだ!」
「あら、私、何かしましたでしょうか?」
ヴィオラは小首を傾げ、訳が分からないといった様子で話す。
「何かを切った手応えはあったのですが、小さ過ぎて何も見えませんでした」
完全に馬鹿にしたヴィオラの態度に、男の怒りは頂点に達する。
「このクソ女! 散々、お前を弄ってやった俺の黒くてデカいものが小さいだと!? ふ、ふふ、ふざけやがって! 絶対! 絶対に殺してやるからな!」
「まあ怖い。私、あなたのそんなに大事なものを壊してしまったのですね」
ヴィオラは「それでは」と言うと、履いているブーツの踵を鳴らす。
すると、ブーツのつま先から銀色に輝く鋭利な刃物が飛び出す。
「大変申し訳ないので、代わりの物を差し上げますわ!」
そう言ってヴィオラは男の股間を、押さえている両手の上から思いっきり蹴り上げた。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」
男は断末魔の叫び声を上げながら吹き飛び、仰向けに倒れる。
その股間には、ヴィオラのブーツに仕込まれていた刃渡り二十センチはありそうな刃が天を貫くように刺さっていた。
「あら、立派。それならどんな女も文字通りイチコロですわね」
ヴィオラはコロコロと無邪気に笑うが、口から血の泡を吹いて気絶している男はそれに応えることはなかった。




