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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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犯し尽す者

 迎賓館の二階へと上がったユリウスたちを迎えたのは静寂だった。

 一回とは打って変わり、こちらは人の気配が全くなく、争った形跡もなかった。


「…………静かですね」


 不気味なほどの静寂に、ヴィオラも不思議そうに眉を顰める。


「これは一体……どういうことですか?」


 ヴィオラの疑問に、ユリウスが呆れたように肩を竦めながら答える。


「別に大したことじゃないよ。姫様を迎え入れるため、二階には殆ど人が配置されていなかったんだ」


 それに、兵士長と副兵士長の二人がいれば問題ないという慢心もあったのだろう。

 結果として余計な犠牲者を出さずに済んだかもしれないが、肝心のプリマヴェーラを守るという至上命題は守れなかった。


「それではあいつ等は?」

「ああ、既に姫様と接触している……どうやらそこでこれまでの鬱憤を晴らしているようだ」

「…………最悪ですね」


 ユリウスの言葉の意味を理解し、ヴィオラは怒りで目を細める。


「急いだほうがよさそうですが、ここから先の作戦はあるのですか?」

「ある……と言いたいけど、室内じゃそこまで複雑な作戦は立てらない」

「では?」

「だからここはシンプルに挟み撃ちにしようと思う」

「えっ? 挟み撃ち……ですか?」

「うん、詰所で兵士長の部屋を見た時に思いついたんだけどね。まあ、僕が少し体を張ればそう難しいことじゃないさ。それより時間がない……いいかい?」


 ユリウスは左目を押さえて状況を確認すると、ヴィオラに細かく作戦の指示を出していった。



「ふぅ…………」


 自身の欲望を目の前のものにぶつけ、達した山賊の一人が流れて来た汗を拭いながら一息つく。


「やっぱり、死にたての女は最高だな」


 ニヤニヤと笑いながら自慢げに語る男が跨っていた女性は、首から上が無かった。


「なあ、お前等もよかったら一緒に楽しまないか?」

「ふざけるな、お前みたいな変態と一緒にするな」

「全くだ。お前のお蔭で、俺のなんか萎えちまってるだろうが」


 死体を犯すという常軌を逸した行為に、男の仲間である二人の山賊が揃って不平不満を漏らす。


「何だよ。別にどんな女を抱こうが俺の勝手だろ? まあ、それじゃあ次は……」


 そう言って男は、既に息絶えている別の女性へと手を伸ばすので、残った男たちは嫌そうに顔を背ける。


「…………ところで、頭は姫様が自殺しないように拘束しに行ったんだっけ?」

「ああ、召使いが殺されただけでなく、目の前で犯されたものだから姫様が気絶しちまったからな。まあ、箱入りのお姫様には刺激が強過ぎたわな」


 そう言って二人の男は、プリマヴェーラが連れていかれた隣の部屋へと目を向けた。



 邪魔な兵士長たちを殺し、二階へと上がった後は、驚くほどすんなりとプリマヴェーラの下まで辿り着くことができた。

 二階の最奥にある貴賓室にプリマヴェーラがいることはわかっていた。

 貴族が建てる館の殆どは、最も奥に主の部屋を置くことが相場だからだ。

 この館も例に漏れず、二階の奥にいかにも偉い人がいますよと謂わんばかりの大きな扉を見つけたのだが、扉には小癪にも鍵がかかっていた。

 さらに、部屋の中から物を入り口に置いて侵入を拒もうとする音が聞こえていたが、それよりナルベの斧がドアを粉砕する方が早かった。


 こうして山賊たちが侵入した貴賓室は、ユリウスが暮らしていた山小屋が二、三軒は軽く入ってしまいそうな広さがあり、応接セットが一組とキングサイズのベッド、それにチェストなどの必要最低限の家具が設えられた広さの割に何もない部屋だった。

 応接セットの奥のソファには怯えるようにこちらを見るプリマヴェーラと、彼女を守るように立ちはだかる三人のメイドがいた。

 ナルベたちの姿を見るや、二人のメイドが果敢に襲いかかって来たが、ナルベたちの相手となる実力ではなく、あっさりと殺されてしまう。

 残ったメイドも拘束されたところでプリマヴェーラがおとなしく捕まると白旗を上げたのだが、山賊の一人が死体を犯し始めたところで気絶してしまったのだった。


「それで、後は王子様が迎えに来るまで待っていればいいんだっけか?」

「ああ、王子様の力があれば、脱出は難しくはないからな。それまでにお姫様が目覚めて、おとなしくなってくれればいいんだけどな」

「言うこと聞かないなら、犯すなり何なりして無理矢理いうこと聞かせればいいんじゃね?」

「馬鹿! 俺たちの目的は姫様の紋章兵器だろ。その力が手に入らないなら、ここまでの危険を冒した意味がないだろう」

「ああ、そういやそうだったな」

「全く……お前は何処まで来ても単細胞で困るぜ」

「俺は実働主義なんだよ。頭を使うのは他の奴に任せるぜ」

「まあ、俺も頭の方はからっきしなんだけどな」


「「ガハハハッ」」


 山賊たちは互いに笑い合うと、両手を拘束され、口を塞がれてはいるが、まだ生きているメイドを見やる。


「――っ!?」


 山賊たちと目が合ったメイドは身を固くし、ガタガタと震え出す。

 これから自分がどのような目に遭うのかを想像し、嫌だと身を捩りながら後退しながら恐怖で失禁する。

 そんなメイドに、山賊たちは優しく声をかける。


「おい、俺たちまだ何もしてないぜ」

「そうそう、俺たちはあいつみたいに変態じゃないから優しくしてやるぜ」


 そう言って山賊たちはメイドを羽交い絞めにしようとする。

 すると、


「……一体、何をしているのですか?」


 部屋の入り口から男たちへ涼やかな声が響いた。

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