籠の中の……
ナルベが言った路地は、すぐさま発見できた。
何故なら、木箱で隠されて封鎖されているはずの路地は今、何者かによって木箱が動かされてその姿を現していたからだ。
「ヘヘッ、ビンゴだ!」
ユリウスを追いつめたと確信したゼゼは、ぺろりと舌なめずりをする。
「さ~て、一体どうしてくれようか」
これだけ舐めた真似をしてくれたんだ。骨の一本や二本折ったって構わないだろう。何だったら、二度と逃げられないようにどちらかの足の腱を切るのも悪くない。
今回のことで、ナルベさんもきっとあの生意気なガキに何かしらの制裁を加えてくださることだ。ここで自分が多少過剰に傷つけてしまったとしても、きっと許してくれるだろう。
ゼゼは脳内でユリウスをどうやって痛めつけようかとイメージしながら路地へと入る。
どうせ逃げ道のない袋小路なのだ。だったら見つかるまでたっぷりと恐怖を味わってもらおうと思った。
「はてさて、一体どこに隠れたことやら」
ゼゼはわざと音を立てながらユリウスを探していく。
「ククク……おい、自分から出てきたら許してやらないこともないぞ」
木箱を一つ一つ、ゆっくりと開けていく。
「今なら腕の一本、折るくらいでいいそ」
路地の奥、建物の死角をゆっくりと見て回る。
「つまんねぇ意地張ってないで、とっとと謝ったらどうだ?」
最奥にあった袋の山を蹴り飛ばしてみるがユリウスの姿は見当たらなかった。
「…………さて、残すはここだけか」
一通り見て回ったゼゼは、最初から怪しいと目星をつけていたが、あえて捜さなかった場所、鉄製のゴミ箱の前へとやってくる。
「ほら、最後のチャンスだぞ」
許す気など微塵もなかったが、ユリウスの屈辱に満ちた顔を見たくて、ゼゼはわざと話しかける。
「死にたくないなら今すぐ俺っちの前に姿を現すんだ」
そう言って待つこと数秒、
「…………」
しかし、ユリウスがいると思われるゴミ箱からは何の反応も返ってこない。
「…………こいつ!」
ここで少しでも従順なところを見せれば、顔の形が変わるくらい殴る程度で許してやろうと思ったが、もう我慢ならない。
ゼゼは怒りを体現するように乱暴にゴミ箱の蓋を開けた。
「――っ!?」
しかし、ゴミ箱の中には探していたユリウスどころか、ゴミの一つも落ちていなかった。
「ど、どういうことだ……」
予想外の事態に、ゼゼは足りない頭で必死に考える。
自分がここに入って来たのは、ナルベからの指示もあったが、入口の木箱が不自然に動かされていたからだった。
「まさか…………」
そこでゼゼの脳裏にある考えが浮かぶ。
もし、ゼゼが追いかけてきていることをユリウスが気付いていたら?
既に裏口から入れないことを知った上で、ゼゼをここへ誘導して足止めするために木箱をずらしたとしたら?
「クソッ!」
ユリウスに完全にハメられた。そう思ったゼゼは、誰もいなかったゴミ箱を全力で蹴飛ばすが、鉄で出来たものを全力で蹴ればどうなるかなんて言うまでもない。
「………………あのガキ、絶対に殺してやる!」
涙目になったゼゼは、痛む足を引き摺るようにて狭い路地から去っていった。




