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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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目の上の瘤

 スワローの街の兵士詰所は、プリマヴェーラが現れた広場から二つ先の区画にある三叉路が交差する広場にあった。

 レンガで造られた三階建ての大きな詰所は、ここが詰所であるということがわかるようにと兵士が装備する剣と盾をクロスさせた大きな看板がついている。

 他にも入り口脇に兵士が立って周辺を監視する踏み台があったが、プリマヴェーラの警護に人を駆り出されているせいか、今はその上に誰も乗っていなかった。


 この広場にもプリマヴェーラを見に来た人で溢れており、そんな観光客相手に商売をする露店が数多く開かれ、雑多な雰囲気になっているお蔭でユリウスの姿を上手く隠してくれていた。

 人通りの少ない狭い裏道ばかりを通って来たせいで多少時間をロスしてしまったが、ここまで来ればもう目的を果たせたも同然。そう思って詰所へと駆けこもうとするユリウスだったが、


「――っ!?」


 その足が通りへと出る直前で止まる。

 万が一に備え、左目の紋章兵器マグナ・スレストの力を解放した状態でいたことが功を奏したが、ここに来て最悪の状況に陥った。


(どうしてあいつが……)


 思わずしたくなる舌打ちを我慢しながらユリウスが見やる先には、陽炎が発生するほどの暑さにも拘らず、黒いフードを目深に被って下を俯く人影がいた。

 正面に回り、下から覗き込まなければ素顔は拝めないように立っているが、ユリウスの左目には、その人物が燃えるように赤く光って見えた。

 こんな禍々しい赤色に光る人物は、今のところ一人しかいない。霧の山賊団団長にしてユリウスが最も殺したい人物、ナルベだった。

 どうしてナルベがここにいるかなんて言うまでもない。ユリウスがナルベを信用していないように、ナルベもまたユリウスを完全には信用していないのだ。

 その見た目とは裏腹の慎重さと、冷静さが山賊としてこれまで生き残って来られた最大の理由なのだが、今のユリウスにとってはその慎重さが完全に仇となっていた。


(しかも最悪なことに、この街に他に詰所はない……)


 だからといってそこら辺にいる街の兵士に話しかけたところで何の意味もない。

 何故なら兵士という人種は、上の指示を仰がなければまともに動くことができないからだ。

 それが組織というものだが、逆を言えば上さえどうにか説得できれば、組織全体が手中に納まるということでもある。

 だから何としてもユリウスは、詰所にいるであろうこの街の兵士たちを束ねる兵士長と話をする必要があった。

 だが、ユリウスに残された時間はそう多くはない、

 早くしなければせっかく撒いたゼゼがやって来てしまう。

 ゼゼ本人に見つかってもことだが、ゼゼがナルベにユリウスがいなくなったと報告されるのも厄介である。

 そうなればナルベの指示の下、山賊団全員がユリウスを総出で探すこととなり、ユリウスの計画は全て頓挫してしまう恐れがあった。


(…………考えるんだ。絶対に手はあるはずだ)


 焦って自棄になりたくなるのを大きく深呼吸を繰り返すことで押さえながら、ユリウスは周りを注視する。


 そして、とある人物を見つけたところで視線を止める。


「あれは……」


 それは巡礼中のシスターだった。

 全身を覆う白いローブを身に纏い、急ぐことなく厳かに歩く姿勢は、人ごみの中にあっても異彩を放ち、とても目立っていた。

 あのような格好をすれば一発でナルベに見つかってしまうと思うが、ユリウスはそこにこそ勝機があると目算する。

 コソコソと逃げ回りたい人間は、なるべく目立たないように、目立たないように行動する。その発想を逆手に取れば、ナルベの目を欺けるのではないか、と。


(だけど、それだけでは心許ないな……)


 そう思ったユリウスは、いくつかある露店をサッと見やり、いくつかの店に目星をつけて店主の隙を突いて店にとある仕掛けを施した後、行動を開始する。

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