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グローリークレスト  作者: 柏木サトシ
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肉薄

 自分の部下たちの体を取り込むことにより、完全に力を取り戻したエバだったが、投石器によって壊された兜と、切断された際に失った手足の鎧だけは元には戻せなかった。


「……まあいい、いざとなれば敵の手足を奪えばいいだけだ」


 エバは手足の調子を確かめながらひとりごちていると、調度そこへ前線の状況を伝えるために伝令がやってくる。


「――っ!?」


 伝令は、そこかしこに転がる人間だったものを見て、恐怖に固まり顔を青ざめさせるが、


「どうした。報告は迅速にしろ」

「は、はい、失礼しました!」


 エバの言葉に我に返ると、姿勢を正して状況を報告する。



「我が軍が圧されているだと!?」

「は、はい、申し訳…………ござい……ません!」


 戦況を聞いたエバが地団駄を踏むと盛大に地面が揺れるので、部下はどうにか倒れないようにどうにか踏ん張りながら話す。


「それで……肝心の敵なのですが、どうやらエバ様の方には向かって来ていないようなのです」

「何だと!?」

「どうやらラパン王国軍と合流して、先にエバ様以外の部隊を倒してしまおうという作戦かと思われます」

「チッ、そういうことか」


 ここ数週間で、ミグラテール王国軍によってかなりの遠征部隊を削られてしまったこともあり、王都ルナールにいるリーアン王国軍の総数は決して多くない。加えて、士気が高いラパン王国軍の猛攻に遭い、戦線を維持するのが難しくなったところで同盟国となったミグラテール王国軍による追撃。もし、二つの軍の合流を許してしまえば、リーアン王国軍による敗北は必至だろう。


「……我が王から任されたこの地を、おとなしく連中に返してやる謂れはないな」


 二つの軍が合流するのであれば、逆に考えれば敵勢力を一網打尽にできるということだ。


「状況はわかった」


 エバは巨人の首を動かして頷くと、部下から指示された敵がいるという方向に顔を向ける。


「ここは俺が行く……お前はこの状況を我が王に一刻も早く伝えるのだ。いいな?」

「は、はい……わかりました。ご武運を」


 部下からの敬礼にエバも手を掲げて応えると、最前線に向けて一気に駆け出した。




「動いた!」


 巨人が動き出すと同時に、その様子を一軒の民家の中から紋章兵器マグナ・スレストで見ていたユリウスが声を上げる。


「やはりファルコたちの下へ向かうようだな」

「ユリウス様の読み通りでしたね」

「当然だ」


 そもそもこの状況に追い込まれれば、誰だって仲間を助けに行くか、この場から逃げ去るかのどちらかだ。だが、いくら慎重な性格といっても、ここで逃げ出すような臆病者に紋章兵器が与えられるはずがない。

 故に、巨人は必ずミグラテール王国軍とラパン王国軍の合流を防ぐために動く。そう踏んで巨人が通ると思われるルートを想定して待ち伏せしていたのだった。


 巨人は民家の中に潜んでいるユリウスたちに気付くことなく、慌てたように地響きを上げながら駆けていく。

 巨人と一緒にいた伝令が立ち去り、他に人の気配がなくなったところで、


「よし、僕たちも動くぞ」


 巨人を見失わないようにと、ユリウスはプリマヴェーラの手を取る。


「あっ……」


 突然の行為に、プリマヴェーラは顔を赤面させるが、


「……はい、行きましょう」


 ここで何か余計なことを言うのは野暮だと、ユリウスの手を強く握り返すと、彼に送れないように必死に足を動かした。




「ファルコ様、来ました。巨人です!」


 一方、カルドアたちと合流するために動いていたファルコたちもまた、巨人の姿を捉えていた。


「な、何だあれは……」

「あれが巨人の素顔……なのか?」


 兜を被らず、素顔を晒している巨人の顔を見て、あちこちから悲鳴が上がる。

 それだけ皮膚がなく、筋繊維が剥き出しの顔は衝撃的だった。

 だが、巨人の顔を見て驚いている場合は、ファルコたちにはない。


「きょ、巨人が物凄い速さでこちらに来ています。このままですと、接触まで一分もありません!」

「わかっている。急いで投石機を構えるんだ。残弾は多くないが狙わなくていい。準備ができ次第、どんどん撃つんだ!」


 ファルコが馬上からよく通る声で命令を出すと、打てば響くように兵士たちが彼の命令を実行するために動く。

 三機の投石機の内、二機が空気を切り裂きながら大岩を巨人に向けて発射させると、それを見た巨人は、慌てたように近くの民家に隠れる。

 つい先程、投石機によって痛い目に遭ったことが効いているのか、巨人は投石機から大岩が発射する度に過度に反応していた。


 だが、狙いを付けずに発射した二つの大岩は巨人へと向かわず、一つは近くの民家の屋根を突き破って盛大に土埃を舞わせ、もう一つは地面に大穴を開ける。

 続いて発射された大岩も、少しずつ巨人に近付いているものの、直撃するには遠く及ばなかった。


 見当違いの場所に着弾し続ける大岩を見て、巨人はもしかして先程はまぐれだったのかと、民家から顔を覗かせるが、


「よし、準備完了!」


 弓兵としての性なのか、投石機に張り付くようにして巨人との想定距離を測っていたブレットが意気揚々と声を上げる。


「狙い……よし! 撃つよ!」


 そうして、他の二機から遅れて大岩を巨人へと発射する。

 ブレットが放った大岩は、民家に隠れている巨人へと吸い込まれるように飛んでいき、巨人は慌ててその場から転がるように逃げる。


「次の装填急いで、狙いはこっちでつけるから!」


 大岩を発射してすぐさま次の狙いを定めるために動いていたブレットは、大岩が装填されると同時に、再び巨人に向けて大岩を飛ばす。

 だが、流石のブレットでも投石機は弓のようにいかないのか、そこそこの狙いにしかならなかったが、一度やられた記憶がある巨人は大袈裟に回避行動を取る。

 そうして、巨人が飛び退いたところで、


「さあ、覚悟してください!」


 ユリウスから指示を受けながら密かに近付いていたプリマヴェーラが民家の中から飛び出してきて、態勢を崩した巨人の足元へと取り付くと、鎧を身につけていない右足へとエレオスリングの力を解放させた。

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