20 「キツネ、ジェンガる」
僕の新しい相棒である厨三剣。こいつは厨二剣の折れた刀身を使って作られた僕オリジナルの剣だ。
かつて激しい戦いの末、無残に散っていった厨二剣の代わりとして、存分にその切れ味を発揮している。
今は材木を採寸通りに切る役割を担っている。
いやぁ、めっちゃスパスパ切れるんだよ。
切れ味が良すぎるので、やすり掛けの必要がないんだもん。凄すぎ!
でも、僕は妥協をしない性格だからね。お母さん直伝の風魔法を使って、角の尖りを削り、その後、表面仕上げをきっちりする。
その後、オリーブオイルを塗って、もう一回風魔法で表面を整える。
するとどうでしょう。色艶が断然すばらしくなるんだよ。
よっしゃ、これで完成だ!
僕は長方形の積み木54本を作り終え、汗を拭う。そして、仕事の後の一杯、冷えたお水を飲み、妹のところへ向かう。
「じゃじゃーん! ジェンガ作ったから一緒に遊ぼ!」
「じぇんが?」
「なんだい、そりゃ?」
妹とヒヨコが興味津々で寄ってくる。口で説明するより実際にやって見せた方が早い。
僕は二人の前でジェンガタワーを作り、下段からブロックを一つ抜き上に乗せる。
「こうやってみんなで順番に下から上に積み上げてくの。それで、タワーを倒した人の負けっていうゲームだよ」
わざとタワーを倒し、ガシャンとブロックを床にぶちまける。
これでもう妹はジェンガの虜だ。
「うわぁ、面白そう!」
「やろうやろう!」
「うん!」
って、あれ、ヒヨコもやるの? できないでしょ、手がないと。
と思っていた時期が僕にもありました。
「よっしゃ、超ムズイとこ成功だぜ!」
「うわぁ、すっごいね!」
「う、うん」
ヒヨコの野郎! ジャンプしながら嘴で巧みにつついてブロックを押し出しやがる。しかも、その段もう真ん中の一本しかないじゃないか。
「ふっふっふ! アレンの番だけど、こりゃあもう無理かなぁ」
「お兄ちゃん頑張れ!」
「ま、任せて!」
グラグラと揺れるジェンガタワー。
負けない。
転生お兄ちゃんタワーを崩さずお見事と言われる作戦を絶対に成功させる!
再びTOTO作戦を失敗させて、また妹から軽蔑されてしまうのか!
否、断じて否だ!
僕は極限まで集中する。
手の震えはなくなり、指先まで完璧に制御出来ているのが分かる。
いける! 今の僕ならこのタワーを崩すことなくブロックを引き抜くことができる!
あっ!
ぽふっという間抜けな音と煙に包まれ、僕は狐形態に変身する。
なるほどね、身体の隅々まで魔力を行き渡らせる感覚ってのがわかったよ。僕は変身のコツを掴んだんだ。
これでいつでも自由に変身できるだろう。
「お兄ちゃん早く!」
「5、4、3、2」
え? ちょっと待ってよ! 今の僕は狐なんだよ! 元に戻らせてよ!
あわわ、ダメだ、きちんと集中しないと変身できない。ええい、こうなりゃ狐のままジェンガやってやるよ!
ヒヨコにできて僕にできないわけがない! こちとら凶悪な爪(サリーに毎日お手入れされてる)がついてるんだ!
やってやんよ!
うわぁぁぁぁ、ちょっと待って、尻尾で押さえてないと倒れるぞこれ。マズイマズイマズイ!
あ、オワタ。




