変異
お久しぶりです。
【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)
【イベント1日目】
side:マカ
大木を飲み込んでみた。
いや、まさか自分でも飲み込めるとは思わなかったわ。
わたしの《次元吸収》はとっても便利で強いスキルだけど、一つだけ使い勝手の悪い点がある。
それは吸収できる対象の大きさ。
《無限吸収》の時もそうだったようだけど、わたしの大きさ以上のものは吸収できないらしいの。
スライムなんだから、何でも吸収できなきゃおかしいと思う。運営は分かってないわね。
でも、レイク曰く、この " 大きさ " は " 密度 " のことなのだとか。
細かいことはよくわからない。
正確には密度でもないらしいけど、難しいことは分からない。レイクには密度と覚えておいて問題ないって言われた。
と同時に、わたしは身体の密度が異常に高いから、大抵のものは飲み込める、とも言われたわ。
たしかに飲み込めたのよね。
その後も、色々なものを《次元吸収》してきたけど、飲み込めなかったものは無かった。
だから、わたしは思ってしまった。
今まで見た中で一番高いこの木。もしかしたら飲み込めるんじゃない? って。
で、いまこうなっちゃったってわけ。
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……確認。変異進化を開始します。
固有種へ進化……完了。" 大自然之粘 " へ進化しました。
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称号、〈固有者〉を獲得。
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称号、〈見えざる神〉を獲得。
消費SP0で《並列思考》スキルを取得可能。
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称号、〈精霊の女王〉を獲得。
消費SP0で《精霊魔法》スキルを取得可能。
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称号、〈災厄者〉を獲得。
消費SP0で《威圧》スキルを取得可能。
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称号、〈美食家〉を獲得。
消費SP0で【審美眼】スキルを取得可能。
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なんかたくさん獲得したみたいね。
それと、また変異進化したみたい。
今度は変異種じゃなくて、固有種ってやつになったらしい。
普通に考えるなら変異種の上位なのだろうけど、よく分からないわね。
周りを見てみると更地が広がっている。
元々大木があったスペースだから、その広さはかなり大きい。
あれ? なんか目がよくなった気がするわね。
それに感覚も良くなってる気がする。
進化した影響?
確か……大自然のスライム? みたいな種族だった。
とりあえず取れるスキルを取って、ステータスを開いてみた。
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ステータス
レベル 1
存在値 78+26
名前 マカ
種族 大自然之粘
職業 兵士
パラメータ
HP336(∞)
MP3314+3000(∞)
速力158 筋力153 防力169
器力169 精力169
スキル
〔種族スキル〕《次元吸収》LV 15+1《原子分裂》LV 22+1
《魔法耐性大》LV--《物理耐性大》LV--《自然之恩寵》LV--
〔職業スキル〕《消化強化》LV48+2《決死》LV--
〔通常スキル〕《火魔法》LV11《水魔法》LV12
《触手》LV8《並列思考》LV26《美食》LV1
《眷属命令》LV20+1《分身操作》LV20+1
《精霊魔法》LV1《威圧》LV1
〔武技スキル〕
〔固有スキル〕【審美眼】LV--
SP153
EP0
PP21
称号
〈美食者〉〈変異者〉〈分裂者〉〈人格者〉〈非人道主義者〉
〈固有者〉〈見えざる神〉〈精霊の女王〉〈災厄者〉
〈美食家〉
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MPの伸びがすごいわね。
……でも、それ以外は全然伸びてない。
目新しいものは称号ね。
〈見えざる神〉って何よ。意味がわからない。
その他の称号も意味がわからないものばかり。
後でレイクに見せた方が早いわね。
そう判断して放置しておくことにした。
決して面倒くさいわけじゃないわよ。
でも、新しいスキルの説明くらいは軽く見たほうがいいわよね。
使えるスキルなら直ぐ使っておきたいもの。
新しく獲得した称号とスキルの説明を本当に軽く見ていく。
《魔法耐性大》と《物理耐性大》は、それぞれのダメージを軽くしてくれるっていうスキルだった。
名前のまんまのスキルね。
この《自然之恩寵》っていうよく分からないスキルは、HPとMPの自動回復をしてくれるようで、常時発動なのだとか。
最後に固有スキル? というやつは、オーラが見えるようになるらしい。
オーラ? 意味が全く分からないわね。
でも、固有スキルって書いてあるから強いんだと思う。
サクヤも持ってなかったと思うし。
試しに使ってみようかしら。
MPの消費はないようだし、使ってみない理由はないわよね。
そう思い、私は【審美眼】を発動させる。
すると、視界に映るもの全てが色褪せ、暗くなった。
なにこれ?
ただ見づらくなっただけじゃない?
オーラが見えるって書いてあったけど、それらしいものは何一つ見えない。
疑問に思いながら周りを見てみる。
視界は変わらずに色褪せていたが、真後ろを見たところで変化があった。
この光はなに?
色褪せた湿林の中に、ぼんやりと白い光が見える。
その光量は弱く、今にも消えてしまいそう。
私は一旦【審美眼】を解除してみた。
そして、白い光が見えた方を再度見る。
……何もいないわね。
不思議に思い、もう一度【審美眼】を発動してみる。
するとやはり白い光は見える。
どういうことなの?
私は白い光に向かって歩いていった。
☆☆☆☆☆
side:???
「じ、冗談じゃないぞ……」
「ど、ど、どうします?」
私と彼が見つめる先、そこには化け物がいた。
巨大樹が消え、いきなり現れたかと思えば急に光だし、その光が収まると虹色に輝き出した。
見た目は完全にスライムだが、こんなのは見たことも聞いたこともない。
そんな明らかにおかしい魔物がこちらを向き、近付いてきた。
私と彼が慌てるのも無理ないだろう?
「ちょっと、どうします!?」
「お、落ち着け。このままやり過ごすしかない」
「見捨てないで下さいよ!?」
「わかってる!」
私と彼は木の根に隠れている状態。
もし動けば、私はともかく彼は見つかってしまう。
かといって戦っても結果は見えている。
お願いだから見つからないでくれ!
私はそう祈っていた。
☆☆☆☆☆
side:マカ
【審美眼】を時折り発動しながら、白い光へ近づいていく。
どうやら木の根の裏にあるっぽい。
この光の正体はなんなのかしらね。
それが分かれば、いまいち分からない【審美眼】の効果が分かるかもしれないわ。
それにしても、進化したのにパラメータが全く伸びなかったのは最悪ね。
一番欲しい速力が伸びずに、一番いらないHPとMPが伸びた。
もう本当に嫌になっちゃうわ。
歩くスピードが進化前と全く変わらないため、そんなことを思ってしまう。
けど、白い光までの距離は近い。すぐに木の根まで近づけた。
この裏ね。
私がそう思った瞬間、木の根の裏に何か動くものが見えた。
何?
「う、うわああぁぁぁ!!」
熊!?
木の根の裏から出てきた大型動物……熊だわ。
咄嗟に《原子分裂》と《次元吸収》を発動させようとする。
けど、熊は向かってこない。
それどころか逃げてるわね。
大きな声を上げながら私と正反対の方向に走っている。
……大きな声?
喋った?
「待って!」
私はすぐに制止の声をかける。
けど、熊は完全にパニック状態のようで止まる気配はない。
仕方ないわね。
私は《触手》を発動させた。
久しぶりに発動させたけどうまく操作できるかしら。
発動させた触手を熊に向かって伸ばす。
触手は思った通りに熊に向かっていく。その際、自分の身体が目に入ることで、あることに気づいた。
……私の身体光ってる?
明らかに進化の影響ね。
しかも、ただ光ってるんじゃなくて虹色に光ってる。
凄く目立ちそうねこれ。
「えぇ!?」
触手は熊を捕らえ、動きを封じた。
熊は驚いたような声をあげ、触手から抜け出そうと必死にもがいている。
けど、全く抜け出せていない。
筋力は私のほうが上のようね。
声を発したってことは単純な魔物じゃないようだけど、NPCかしら? それともプレイヤー?
「もしもし? ちょっといい?」
熊に近づきながら声をかける。
私が話すとは思っていなかったのか、熊は驚いた様子で固まっている。
なんとなくプレイヤーっぽいわね。
「私、マカっていうんだけど、あなたは?」
「…………」
熊は答えない。
ずっとこっちを見てる。
なによ。こいつ。
やっぱりNPCかしら?
「ち、ちょっとまってくれ。君はプレイヤーなのか?」
やっと話した、と思ったけど熊の方から声はしない。
私の後ろから声がしていた。
もう一人? どこにいたのかしら。
と、疑問に思いつつ振り返る。
「あれ?」
誰もいなかった。
普通に怖いわね。
「し、下だ」
そう言われれば確かに下から声が聞こえる。
私は自分の足元を見てみた。




