ルカ
【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)
【イベント1日目】
side:ルカ
散々迷った結果、私は山村エリアを選んだ。
その理由は掲示板。
掲示板の情報では、山村エリアのエリアボスは他のエリアと違って既に大暴れしているらしい。
馬鹿みたいに強い、あんなのに勝てるか、と多くの人が書き殴っていて、掲示板はかなり荒れている。
そんな山村エリアの状況を変えるのに、私のスキルは適していると思う。
それは【断罪】。
これは発動するのに色々な制限があるものの、その効果は対象の全スキルを封印するという強力なものだ。
しかし、この対象は魔物しか含まない。
それ以外には全く効果がない。
だけど、このスキルを獲得したとき、あのGMは【断罪】と【下克上】を上手く使えと言っていた。
つまり、私がやるべきことは強力なボスを倒すことなんだと思う。
私とラティはそう考えた。
なら、山村エリアのボスは私たちにとってクエスト対象になる。
もし倒せれば、メダルはたくさん手に入るはずで、サクヤの1位阻止に大きく近づくに違いない。
そんな機会を逃すわけにはいかない。
そうと決まれば早速……山村エリアへ行きたいところだけど、その前に少しだけステータスを確認したい。
私は静かにステータスを開いた。
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ステータス
レベル28+19
存在値39+20
名前 ルカ
種族 人
職業 占い士
パラメータ
HP 153+114
MP 231+133[+50]
速力 97+76 筋力 97+76 防力 85+76
器力 101+76 精力 131+76[+30]
スキル
〔種族スキル〕《万器の才》LV--《爪撃》LV39
《噛撃》LV32
〔職業スキル〕《霊術》LV7《直感》LV12
《MP強化》LV38
〔通常スキル〕《魔物調教》LV7《念話》LV--
《火魔法》LV40《杖撃》LV36《鑑定》LV16
《召喚術》LV20《看破》LV6《嗅覚強化》LV36
〔武技スキル〕≪魔縮≫
〔固有スキル〕【共鳴】LV--【断罪】LV11
【下克上】LV--
SP29+19
PP28+19
装備枠
1.白狼の魔衣 2.白狼の杖
称号
〈審理に近づく者〉〈心通う者〉〈執行者〉
〈審理に辿りつく者〉〈追随者〉
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レベル28ね……。
この約2週間の森エリアでのレベリングにより、私たちはここまでのレベルに到達した。
本来なら、草原エリアでボアと戦うほうが良いのだろうけど、私とラティには【下克上】があった。
このスキルは読んで字の如く、自分より強い者と戦う際に補正が入るというもの。
しかも【共鳴】によって、この補正はラティにも適用される。
【共鳴】は共鳴相手とあらゆるスキルを共有するというもので、実際に職業スキル以外は共有されている。
ユニークスキルも共有されることには驚いたけど、私達にとっては何より。
この【共鳴】スキルのおかげで、私たちの力は大きく向上し、自分より存在値が高い相手でも十分以上に戦うことができた。
本当にユニークスキル様々。
そう思いながら私はステータスを閉じて、メニューからイベントの画面を開いた。
参加しますか?
と表示された。もちろん参加する。
すると、次は4つのエリアが表示された。
これも知っている。
私は迷いなく山村エリアを選択した。
視界がゆっくりと灰色に染まっていく。
ログアウトの時みたいに、いきなり暗くなるわけじゃないらしい。
そんなことを思っていると、視界は完全に灰色となった。
と思ったら、だんだん灰色が晴れていった。
目に優しい。
イベントだけじゃなくて、ログインとログアウトの時もこれにして欲しいと強く思った。
灰色が完全に晴れた場所には、確かに山村と呼んで相応しい光景があった。
山に囲まれた村。まさしく日本の長閑な田舎。
そんな景色だからこそ、ある一点を除けば……と思ってしまうのが残念でならない。
ある一点。
耳を澄まさなくとも聞こえてくるプレイヤーの叫び声、魔法、金属音。
風景とは真反対。まさしく混沌とした戦場であり、とても長閑という言葉が当てはまる音ではなかった。
そんな混沌の中心を見れば、戦闘と呼べるのか分からないものが起こっている。
《鑑定》するまでもなく、私の目にはエリアボスのHPとMPが見えていた。
これまで見たHPMPバーとは明らかにデザインの違うそれ。
間違いなくエリアボス。
しかし、そのHPバーは殆ど削れていない。
これだけのプレイヤーが突撃しているというのに……どんな防力をしているんだろう。
「新しく来たプレイヤー! ランキング500位内はこっちに! それ以外で魔法を使えるやつと弓兵は合図まで待機! 前衛はボスの足止めに行ってくれ!」
固定していた視線を外して周りを見れば、確かにプレイヤー達がいくつかの塊になっていた。
装備を見た感じ、魔法使いと弓で固まっているようだ。
みんなこのプレイヤーの指示に従っているんだな、と思ったが、私と同じように今現れたプレイヤーの中には、それを無視する者も居るようで、明らかに魔法使いなのにエリアボスの方へと走っていく。
そんなプレイヤーを見ていると、中心にどれにも属さない塊が一つあることに気づいた。
少数で何か話し合っている。もしかして、あれが500位内のプレイヤー達なのだろうか。
たしかに装備は強そうだし、雰囲気がある。
私もそこに参加したいところだけど、残念ながら私は上位500位には入っていない。
あれだけ頑張ったのに入れなかったのだ。
ユニークスキルだけで誤魔化せるほどランキングは甘くはないということなのか。
確認した時は少なからず落胆したけど、今はもう割り切っている。
よって。
「ランキング500位内です!」
私はそう声を上げた。
「よし! こっちにきてくれ!」
声をかけていたプレイヤーは、待ってました、と言わんばかりの反応で私のもとへ来ると、急ぎ足で連れ出した。
「すまんな、こんな慌ただしくて。時間に余裕が無いんだ」
プレイヤーはそれだけ言うと、顔を前に向けた。
私の言葉を聞く気もないみたいだ。
言葉通り時間が無いんだろう。
相当珍しいはずのラティについて触れることすらしないことからも察せる。
プレイヤーが急ぎ足で向かっているのは、やはりあの少数の集まりだった。
私の予想通り、上位500位プレイヤーの集まり。
「おい。連れてきたぞ」
私を連れ出したプレイヤーはそれだけ言うと反転し、また戻っていった。
本当に切羽詰まってるんだね。
「急だけどよろしくね。私はソウラ。あなたは?」
そう呑気なことを思っていたら、いつの間にか隣にいた女の人にそう言われていた。
ソウラ……聞いたことないけど有名な人なんだろうか。
「私はルカです。こっちのはラティって言います」
「ウルフ……あなたが噂のテイマーさんなのね」
「はい?」
「間近で見るとやっぱり凄いわね……」
本当に驚いた、という様子でラティをじっと見ている。
周りを見れば他のプレイヤーも同じような反応だ。
やはり《念話》を使わせなかったのは正解だった。
ただラティが居るだけでもこの反応なのに、もし話したりすればどうなるか。
すぐ騒ぎになることは私でも分かる。
というか、噂のテイマー、とはどういう意味なんだろう。
とても気になる。
「っと、そんな場合じゃなかったわね。見れば分かる通り、あのエリアボスを急いで何とかしないといけないの」
「ああ。その通りだ」
ソウラさんの言葉に続いたのは、如何にもリーダーっぽいエルフの男の人。
エルフといえは女の子の印象があったけど、男のエルフも中々かっこいい。
「話を続けると」
この場にいるプレイヤーは約50人。
上位500位内の十分の一ほどしかいないようだ。
他のエリアに固まっているのか、まだ様子見しているプレイヤーがいるのかは分からないが、これで戦力が足りるのかは不安が残る。
「あのエリアボスの厄介な点は二つ。高い身体能力と低い身長だ」
……低い身長? 確かにさっきもエリアボスっぽい大きなモンスターは見えなかった。けど、こういうイベントのボスって巨大なのが普通なんじゃないのか。
ゲーム経験の少ない私だけど、やったことのあるゲームの殆どはそうだったので、この認識は間違いではないと思う。
「生半可な壁では防げない上に、的が小さくて範囲系の魔法を発動しづらい。よって、数で攻めるのではなく少数精鋭で挑むのが最適、と先ほど結論付けた」
なるほど。
でも、それなら他のプレイヤーはどうするんだろうか。
「そして、最も重要なのはエリアボスの動きをどれだけ止められるかだ。《闇魔法》のダークバインドなどを使える魔法職は少ないが、有効的に使えばエリアボスの一体くらい十分に封じ込めれる」
ダークバインド。
名前からして確かに動きを止めてくれそうではある。
「そうして動きを止められれば、魔法職と弓職による集中攻撃で一気にダメージを与えることができる」
なるほど。
とても戦術的だ。
肝心の《闇魔法》を使えるプレイヤーが少ないところは心配だが、上手く行けばその一撃でエリアボスを倒せるかもしれない。
私の【断罪】を当てれば、エリアボスのHPは40%削れる。
そしてラティの【断罪】も当てることができたら、合計で約70%のHPを削ることができる。
残り30%のHPであれば、魔法と弓で削り切れる……はず。
問題は【断罪】のタイミング。
「情報によると、エリアボスは空中浮遊ができるらしい。考えにくいことではあるが、逃走する可能性も念のため頭に置いといてほしい」
『ルカ!』
エルフの男の人がそう言った瞬間、ラティが急にエリアボスの方を向き、《念話》で私にそう言った。
その声には警戒と焦りが滲み出ており、私はすぐに何かが起きたということを察した。
「ん? なに?」
ラティの行動に疑問の声を上げるソウラさんを無視して、私はエリアボスの方を見た。
すると。足止めをしてる前衛プレイヤー、その上空に小さな人影が見える。
銀髪で背が小さく、身に纏っている鎧は見たことがないほど優美だ。
片手には刀らしき武器を握っている。
そんな、エリアボスと呼ぶには人間らしすぎる少年。
その顔を覆っている武骨な仮面の奥にある瞳と……目が合ったような気がした。




