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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
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準備


 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】



 「――てわけで、襲撃してくる人たちは貴方達を狙ってくるんで、ここで待機しつつ山に罠を張ってほしい」


 

 「了解です!」



 俺は狼人たちに、ここへプレイヤー達が来ることを説明した。

 もちろん、メダルやレイクさんについての説明は省いた。


 説明してもしょうがないし、余計に混乱させるだけだと思ったからだ。

 

 約2時間後にプレイヤー達が来るというのは、レイクさんから聞いた話だ。

 だが、この情報も本当に確かなのかは分からない。

 

 もしかしたら、あと15分後かもしれないし、30分後かもしれない。

 まあ、どちらにしろ準備は急がなければいけないわけだが。


 そのためにも、まずは山の全貌を把握する必要がある。

 どの位置に罠を設置すれば良いか、どの位置に待ち伏せすれば良いかなど、少ない時間を有効に使うためには必要不可欠だろう。


 そして、俺には《地図》という有能スキルがある。

 《念動力》で飛び回っているだけでマッピングされるので、それを元に作戦を立てればいいだろう。


 とは言っても、俺は山のスペシャリストでも無ければ罠のプロでもない。

 だれか一人くらい狼人を連れていった方が効率的だな。


 《念力》のときは一つの対象しか操作できなかったが、《念動力》となった今では複数の操作が可能になった。

 

 俺は近くにいた狼人に話しかける。



 「だれか、罠に詳しいやつはいるか?」



 「お、それならイギっていう爺さんが一番だぜ。いっつもそれで猪を仕留めてるんだ」



 「イギさん?」



 爺さんと言われても、俺には狼人がどれも同じに見えてしまう。

 外見だと判断できないな、これ。


 少し困っていると、俺の前へ一人の狼人が出てきた。

 てことは多分この人が……。



 「儂がイギじゃ。して、なんの用かの」


 

 「ちょっと一緒に来て欲しいんだけど、高いところとか大丈夫?」



 「高いところとな? 問題ないとは思うが……」


 

 俺はイギを庭に連れ出した。

 他の狼人たちが好奇な目で見ているが気にしない。


 あ、待機してる狼人たちにも指示を出さないと。

 折角の時間を無駄にしてしまう。



 「他の狼人たちはこの家の周囲全体に罠を配置してくれ」



 「「「了解です!」」」



 俺がそう言った途端、元気な返事が一斉に聞こえる。

 なかなか頼もしいな。それに、俺の指示に素直に従ってくれる辺りがとても良い。


 ……どっかのスライムと違ってな。

 

 そう思いながら、俺はイギと自分に《念動力》を発動させる。

 そして、一気に上空へと移動した。


 加速した瞬間、イギの悲鳴らしき音が聞こえた気がしなくもないが……気にしない。

 《地図》が発動されていることを確認し、俺は全力で飛んだ。


 思ったよりもスピードが出る。

 速力は前より低いはずだが……何でだろう?


 《念動力》のスキルレベルが上がったからか?

 理由はよく分からないが、急いでいる今の状況からすれば有難いことだ。


 

 「イギ。ここから見て、罠を張った方がいいところがあったら教えてくれ」



 「い、いや、村長よ。速すぎてまともに見えんのじゃが……」



 あ、そうですか。

 俺は問題ないが、イギには問題大ありだったらしい。


 少しスピードを落とした。

 


 「これでどうだ?」



 「まだ見えんな……というか、もう止まってくれんかのう?」



 「……分かった」



 イギの言う通り、俺は静止した。


 

 「どうだ?」



 「うむ。あそことあそこが良いじゃろう」


 

 ふむふむ。なるほど……これはどうしようか。

 イギが指差している場所は何となく分かる。


 が、その場所を覚えられるはずは無い。

 《地図》を見ても、同じような場所ばかりなので目印となるようなものはない。


 唯一あるとすれば、村長家くらいだ。


 これでは、せっかく教えられても意味がなくなってしまうな。


 《地図》にマークとか……あ、できた。

 ちょっと意識してやってみたら、案外簡単にできてしまった。


 《地図》を見ると、イギの指定した場所に赤点が存在している。

 よし、追加でもう一つの場所にもマークしておこう。ちなみにこちらも赤点だった。


 マークが出来るなら話は早い。

 この調子でイギの指定した場所をマークすれば良いのだ。


 

 「よし、ゆっくり移動するぞ」



 「よろしく頼む」




 

 俺はしばらくの間、ゆっくりと山を飛び回っていた。

 すると、山を大分下ったところに村が見えてきた。

 

 恐らく、俺が最初に目覚めたところだろう。

 見覚えのある家もあったため間違いないと思う。


 あの時は小規模な村なのかと思っていたが、上から見れば意外と大きい村ということが分かる。

 ここにも罠を張るのか……。


 狼人たちの生活の場を壊したくはないが、これも狼人たちのためだ。

 そう思い直し、俺はイギの様子を見る。


 すると、イギは直ぐに罠の場所を指定してきた。


 イギが何の躊躇いもなく罠の場所を指定したことに驚きながら、俺はしっかりと《地図》にマークした。

 もっと悩んだりするかと思ったんだが……。


 まあいいか。

 俺はそう割り切り、気持ちを切り替えた。

 

 さて、こんなもので良いだろうか。

 村全体を見て回ったあと、俺は《地図》にマークされた赤点を眺めながら呟く。


 見てみれば、山の至る所に赤点が存在していた。

 この場所全てに罠を張るのか……えげつないなぁ。


 自分で提案した作戦だが、そう思わずにはいられない。

 流石に罠はこんなものでいいかな。


 俺はイギに確認する。

 


 「イギ、こんなもんでいいか?」



 「うむ。逆に十分すぎるくらいじゃな」



 「気になるんだが、その場所全部に罠を張るのって、けっこう時間が掛かったりするか?」



 「普通はそうじゃが、儂と同じように運べば問題ないじゃろう。時間が掛かるのは移動のみ、罠を張るだけなら一瞬じゃ」


 

 「よし、それなら良かった」



 狼人たちはかなり手先が器用らしい。

 俺も教わってみようかな?


 上手くいけば新しい称号とスキルを獲得できるかもしれない。やってみる価値はあるな……。

 我ながら良いことを閃いたんじゃないか?


 思わず笑みを浮かべる。


 まあ、もし取得できたとしても使うかどうかは分からないけど。

 じゃあ取得するなよ、という声が聞こえてきそうだな。


 俺はそんなことを考えながら、村長家へ帰るべく《念動力》を発動させる。

 もちろん全力だ。


 またもイギの悲鳴らしき音が聞こえた気がしたが……まあ大丈夫だろう。

 






 ☆☆☆☆☆






 「うぎゃぁぁぁぁあ!!!」



 狼人の一人が絶叫しながらスカイダイビングを楽しんでいる。

 もちろん俺が《念動力》を使って地面スレスレの位置で停止させているが、やはり絶叫はするらしい。


 たしかに気持ちは分からなくも……ないかもしれない。

 

 俺の場合は、空を飛んでる興奮で恐怖なんか微塵も感じなかったなぁ。

 今はもう慣れたし、仮にここから落ちても死ななそうだ。


 

 イギを連れ帰ったあと少し罠の練習をしてみたが、全く上手くいかず称号獲得は出来なかった。

 

 イギには、そう簡単にいくわけ無かろう、と言われた。

 やはりプロの罠師として、あっさり取得でもされたら複雑なのだろう。取得できなかったことは結果的に良かったのかもしれない。

 

 その後、時間を無駄にするわけにはいかないので、俺はすぐに罠を張れる狼人全てを引き連れ、《念動力》にて赤点まで移動した。


 そして、移動しながら赤点の真上に狼人を落とし地面スレスレで停止させるという極めて効率的な作業を開始したのだ。


 なぜ見てもいないのに地面スレスレが分かるのかというと、《魔力操作》と《気力操作》を発動させているからだ。


 いや、本当に優秀なスキル達だな。

 《念動力》も何人まで同時発動できるか心配だったのだが、50人以上の狼人に発動できたことで杞憂に終わった。


 外から俺達を見れば、まるで俺たちの周りだけ重力が横方向に働いているように見えるだろう。

 ……パントマイムを極めし者達。

 

 くだらないことを考えていると、だんだん狼人の数が少なくなってきたようだ。

 あと数人しかいない。


 最初の赤点まで戻って回収しないとなぁ。

 残る赤点はあと半分。


 同じことをもう一度繰り返せば、丁度いい感じに罠の設置は終わりそうだ。

 

 俺は最後の一人を赤点へ落としたのだった。

 

 




 ☆☆☆☆☆



 



 「うぎゃぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 

 はい。2回目のスカイダイビングですね。

 絶叫の勢いは変わらないようで安心した。


 下を見れば、罠を設置している狼人たちがこちらを見上げている。

 その表情はなんとも……同情しているようだな。


 これからスカイダイビング予定の狼人を憐んでいるのだろう。

 

 残りわずかとなった設置場所だが、この分ならまだまだ罠を張れそうだ。

 時間と罠の数さえあれば、無限に設置できる。


 とはいえ、プレイヤーが来ない場所に罠をたくさん設置しても意味はない。 

 どうせ罠を張るなら、プレイヤーが必ず通らなければならない場所に張るのが最も効果的だろう。


 そして、俺はその場所に見当をつけている。


 恐らく、プレイヤー達が最初に来るのは村の周辺。俺が最初に降り立った地点だと思うのだ。

 その場所に集中的に罠を設置するのが良い。

 

 俺はマップに赤点を大量に表示した。

 もちろん村の周辺に。


 なかなか良い作戦だろ?

 まあ、一つだけデメリットはあるが。


 それは、プレイヤー達の相手をするのが俺一人になる、ということだ。

 

 何故そんなことになるかというと、村の周辺に円を描くように罠を設置するため、狼人たちも入ることが出来ないのだ。

 ……というか、正直なところ足手纏いだろう。

 

 俺? 俺には《念動力》がある。

 地面に設置している罠など、あってないようなものだ。

 

 俺が暴れ、逃げ出そうとしたプレイヤー達が罠に掛かる。

 ……というふうに上手くいけばいいが。


 まあ。

 なんとかなるかな。


 正直なところ、バラザの造った装備もあるため俺が死ぬことはほぼ無いと思っている。

 

 HP6000だぞ?

 明らかに過剰で笑える数値だ。


 防力も跳ね上がっているし、いざとなれば《耐久》がある。

 こんなの負けないだろ。


 よって俺はあまり自分の心配はしていない。

 

 一番心配なのはマカだ。

 果たして、一人でしっかりとエリアボスが出来るのだろうか?

 

 不安でしかないな。

 


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