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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
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早速ピンチ?


 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)

 【イベント1日目】



 「村長、ここが村長家で合ってるよね?」


 

 狼人に案内されたのは、他の平屋と比べると明らかに巨大な建物だった。

 ここが村長家っぽいな。


 道中はかなり長かった。

 山を登ったり降ったり、川を渡ったり、竹林を通ったり。


 虫が出てきた時は、思わず龍劉璽を抜きそうになった。

 寸前で冷静になって《念動力》を発動させたが……危なかったな。


 

 「ああ、そうだ。ありがとな」



 「うん。村長家に入れるなんて、この村で初めてだからね! 楽しみ!」



 どうやら、村長の家というのは俺が思っている以上にシークレットな場所らしい。

 そうほいほいと見せていいのか……まあいいか。


 いまは俺が村長なんだし、大丈夫だよな。

 

 太い木の柵で囲まれた平屋は重厚感が半端ない。

 

 これを建てた人は間違いなく凄い。

 

 とりあえず中に入ってみるか。

 

 しっかりと舗装された道を通ると、ゲートが見える。

 鍵が掛かっているようには見えないな。


 ゆっくりと力を入れてみる。

 すると、意外と簡単に開いた。


 ギギッというような音が鳴る事もなく、スムーズに開く。

 

 なんか緊張してきた。

 一応、自分の家ということになっているため知ったかぶりをしなければいけない。その精神的負荷は大きい。


 

 「わあ〜。凄いなぁ」



 キョロキョロと周りを見回す狼人。

 その眼は少年のようにキラキラ光っていた。


 たしかに、その気持ちもわかる。

 はっきり言って、この村長家だけは田舎にあるような建築物ではない。


 

 「鹿威しに日本庭園……池まである。まるでここだけ別世界だな」


 

 つい言葉が漏れ出る。

 だが、それ程までに衝撃的なのだ。

 

 庭は綺麗に手入れされており、心地よい鹿威しの音が響いている。

 京都の寺で見たような、いやそれ以上かもしれない光景だ。


 

 「あそこが玄関か?」



 またも小声で言いながら、正面の扉を見る。

 ゲートから少し蛇行しながら延びる石畳を歩きながら、俺は後ろから付いてくる狼人の様子を見た。


 もし俺の独り言が聞かれていたら不味いと思ったのだ。


 しかし、それは杞憂だった。

 


 「はえ〜……ほお〜……」



 見れば、狼人は狼人で衝撃を受けているようだ。

 あちこちを見回しながら、奇怪な声で唸っている。


 まあ、明らかに世界が違うからな。

 仕方ないだろう。


 そんなことを考えていると、扉の前に着く。


 木製の良さそうな扉だ。

 押すタイプではなく横に動かすタイプ。


 どこまでいっても日本風の作りらしいな。

 俺は親しみやすくて結構だが。


 扉を動かしてみると、カララ、と殆ど音もなく開いた。

 

 玄関。

 日本で見慣れている通りだ。


 通路などを見た感じ、普通の家っぽい。

 ……うーん、ここに何かあると思ったんだがなあ。


 俺が狼人に村長と呼ばれたこと。これがイベントに関係しているのではないか、と俺は考えたわけだが……ハズレか?


 わざわざこんなところに来て何もありません、は流石にキツいぞ。

 お願いだから、何かしらはあってほしい。

 

 龍㔟璽甲冑とペアである靴は脱げないため、俺は仕方なく土足で家へ上がる。

 まあ、俺の家らしいし……たぶん大丈夫。


 俺が土足で上がったからか、後ろの狼人も土足で上がっている。

 一瞬躊躇したようだが、踏み切ったみたいだ。

 

 この狼人に靴を脱ぐという習慣があるみたいで驚いたが、服を着ている時点で今更だと思い直した。

 

 床は木材。スベスベしている。

 少し奥に襖がある。その中が部屋なのだろう。


 そこまで歩く。

 見た感じ、かなり新しい建物だ。汚れや埃など欠けらもない。


 ノウズに連れてこられた " 試練の鏡 " の建物とは大違いだ。

 いや、あれは建物とは言えないか。


 そんなことを考えながら、俺は襖を開けた。


 すると。


 

 『侵攻開始まで残り3時間17分。防衛情報は未確認。緊急収集を実行可能です』



 ……なんだこれ。


 俺の目の前には、俺の人差し指ほどの大きさの、小さな妖精がいた。

 背中から蝶の羽みたいなものを生やしているので確定だろう。


 問題はその妖精の口から発せられた言葉だ。

 

 侵攻開始?

 防衛情報?

 緊急収集?


 一体全体なんのことやら。

 全くもって意味がわからないが、この妖精が普通でないことだけは分かる。


 ……コイツの羽をむしり取れば妖精の羽が手に入ったりするのか?


 ふと、そんな考えが浮かんだりもしたが、直ぐに頭の中から消す。

 

 

 「村長? どうしたの?」


 

 俺が直立不動でいたからか、狼人が心配そうに聞いてきた。

 


 「な、なあ。この妖精を知ってるか?」



 俺は狼人が妖精を見えるように移動する。

 もしかしたら、この狼人が何か情報を知っているかもしれない。


 俺はそう期待した。

 


 「ん? 妖精なんか居ませんよ? 村長?」



 ……そういう感じか。

 なるほど。この妖精は俺にしか見えないらしい。

 


 「いや何でもない。気のせいだった」


 

 「そうですか? だけど、それにしても広いですね。この部屋」


 

 「……たしかにな」



 言われて見てみると、確かにこの部屋は広い。

 この家の半分くらいはこの部屋なのではないだろうか。


 真ん中に縦長の机があり、奥には屏風。机に沿うように置かれている無数の座布団。

 

 緊急収集……か。

 

 さて、どうするか。


 俺は目の前の妖精を見た。

 パタパタと羽を動かしてる様は可愛らしいといえば可愛らしい。


 が、その瞳には光がない。


 恐らく何かしらのワードを言うと反応するんだろう。


 そして、そのワードが何なのかはもう察しが付いている。


 よし。



 「緊急収集」



 『緊急収集、村長 " サクヤ " の要請を受託。確認しました。収集対象の設定を行ってください』



 妖精は瞬きもせずに機械的な音声で述べる。

 とりあえず、緊急収集というのをやってみるか。


 収集対象とは、どんなふうに答えれば良いのか分からないが……とりあえず全員と言っておくか。

 

 これでどうなるか……。


 

 「全い――『通信を受託しました。応答しますか?』



 えーと。タイミングな。

 次から次へと……ゆっくり考える時間が少し欲しいな。


 通信を受託したと聞いたが、誰からだろうか。

 この妖精のお仲間か?


 まあ、とりあえず応答するとしよう。


 

 「応答する」



 『確認しました。墓地エリア、エリアボス " レイク " へ通信します』



 レ、レイクさん!?

 いつの間にエリアボスになったんだよ。


 しかも墓地エリア? 聞いたことが無い。

 たしかにレイクさんの見た目的に合ってはいるが……。


 

 『えー、もしもし? サクヤさん聞こえてますか?』



 やはり、ゆっくり考える時間はないらしい。

 妖精の口からレイクさんの声が聞こえた。


 かなり違和感を感じる。正直なところ話しづらいな、これは。

 俺は気にしないように努力しつつ、早速本題に入る。


 

 「聞こえてるが……どういうことなんだ? これはイベントなのか?」


 

 いきなり変なところに飛ばされて、よく分からない村人から村長と呼ばれる。これがもしイベントでないなら、かなり致命的なバグだと思う。


 GMも焦ることだろうな。

 


 『ええ。どうやらこれはイベントのようです。ですが、私たちの立場がかなり特殊のようで……。いまから説明します。まず――

――というようです。更に詳しいことは隣のGMに聞けば教えてくれます。とりあえず、3時間後には始まるので準備を怠らないよう気をつけて下さい。私はマカさんにも言ってきます。では』

 


 『通信が切断されました』


 

 …………まじか。

 レイクさんの話を聞いた感想は、ヤバい、の一言だ。

 

 

 「村長どうしたんですか? すごく深刻そうな顔してますよ?」

 

 

 たしかにその通りだろう。

 いまの俺はかなり焦っている。


 だがレイクさん曰く、この狼人達は俺の味方らしい。

 つまり、コイツらと協力しなければならない。

 

 そして、そのための緊急収集なのだろう。



 「緊急収集」



 『緊急収集、村長 " サクヤ " の要請を受託。確認しました。収集対象の設定を行ってください』

 

 

 「全員だ」



 『確認しました。種族、狼獣人を収集します』



 その瞬間、俺の両目に眩い光が溢れた。

 思わず目を閉じ、数秒後。


 

 『収集完了』



 機械的な音声がそう聞こえ、目を開ける。


 すると、目と耳の両方から処理しきれないほどの情報が入ってきた。



 「あれ? 村長? なんでここに?」


 「ここどこ?」


 「さっきまで畑仕事をしてたのに……」


 「ママーここどこー?」


 「変な地面だなぁ」



 目の前には数十人の狼人がわちゃわちゃと立っていた。まるで満員電車のような密度だ。

 おまけにキョロキョロと周りを見ていて落ち着きがない。


 まあ、いきなりこんな所に呼び出されたら誰でもこうなるか。

 しかし……思ったより人が多いな。


 三十人くらいだと勝手に思っていたが、五十人くらいは居るな。

 この人数をまとめるのはキツそうだなぁ。


 

 「あのー、皆さん。突然呼び出して申し訳ないんですけど、よく聞いてください」


 

 少し声を張って呼びかける。

 意外にも皆んながこっちに注目してくれた。


 

 「あなた達は今から3時間後に」


 

 俺は少しだけ緊張しながらも、出来るだけ混乱を生まないよう、勿体つけるようにゆっくりと発言した。



 「襲撃されます」



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