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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
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イベント開始


 【ログイン49日目】※ゲーム内時間換算(34日)




========================================


 【世界通知(ワールドアナウンス)


 ただいまより、第一回イベント " 世界の進出(ワールドウォーカー) " を開始します。途中退場、途中参加は可能ですが、どちらもこのアナウンスを見ている必要があります。また、時間加速が通常の2倍、現実比4倍へと変化します。

 

 イベントへ参加しますか?



 【YES】 or 【NO】



 ※途中参加をする際はメニューから選択してください。


========================================



 画面が表示されたのはレイクさんの予想通り、ちょうどゲーム内の日付が変わった瞬間だった。


 告知されていた通り、漸くイベントが始まるようだ。

 俺の目の前に表示された画面には、いろいろなことが書かれている。


 今回のイベント、見る限り " 世界の進出(ワールドウォーカー) " と言うらしい。

 どんな意味があるのかはまだ分からないが、少しワクワクするな。


 どうやら親切な事に途中参加もOKみたいで、メニューからいつでも退場、参加が出来るらしい。


 まあ、どれだけ長くやるのかは分からないため、この機能が必須なのかそうじゃないのかは判断できない。


 

 「ちょっとサクヤ。まだ行かないの?」



 俺が考えているとマカがそう言ってきた。

 もう待ちきれない、という心の声が漏れている。


 まあ、それはそうか。

 寧ろ俺が考えすぎていたかもな。


 とりあえず参加してみるか。

 レイクさんもいるし、考えるのは後からで良い。



 「そうだな。じゃあ行くか」



 すると。その瞬間、隣にいたマカの姿が消えた。

 少し驚いたが、このイベントは会場が決まっているんだろうと推測する。


 

 「さすがマカさんですね。サクヤさん、私たちも続きましょうか」



 そう言うと、レイクさんの姿も消えた。


 あとは俺一人。

 流石に少し焦ってYESを選択。間違えてNOを選択するなんてことはないぞ?


 俺の視界が黒く染まる。


 例えるなら、というか……まんまログインする時のやつと同じだ。

 最近、俺も慣れてきたのでもう平気。


 …………ん? 

 もうそろそろ視界が明るくなってもいいんじゃないか?


 少し長い気がするが……気のせいだろうか。


 いや、絶対に長い。

 いつもは数秒から長くても十数秒だ。


 しかし、俺がいま数えただけでも30秒は経っている。


 あ、もしかして。

 プレイヤー達が一斉に参加しているため、待ち時間が長くなっているのかも。


 だが、そんな普通のMMOみたいなことが本当に起きているのか?

 俺はあまり信じられないが。


 レイクさんやマカはどうなってるんだろう。

 俺と同じように暗闇が続いているのか、それとももうイベントに参加しているのか。


 後者だったら間違いなく俺だけ可哀想なことになってるということだ。

 ……イベントが終わるまで、俺はこの状態なのだろうか。


 嫌だ、それは嫌だ。


 メニューも開けないため、ログアウトもできない。

 実質的に囚われてしまった、ということに漸く気付いた。


 これ結構……いやかなりヤバいのでは?

 


 「おい。おい。聞こえているか?」



 悲観的な思考が停止した。

 確かに人の声が聞こえる。


 だが、いったい何処から……?

 声は聞こえるのだが、その発生源を把握できない。


 不思議な感覚だ。


 いや待て。そんなことを考えるより返事をするのが先だ。



 「あー、聞こえるか?」


 

 1秒経過。

 聞こえてないのか……?



 「サクヤは繋がったか。マカも直だが、問題はレイクか」



 独り言のようだ。

 俺と会話する気は微塵もないらしい。


 だが、いまの独り言で気になる事が多くできた。

 


 「あの、マカとレイクさんは?」



 「…………」



 おい。なんか言えよ。

 


 「もうじき繋がる。説明は後だ」



 繋がる? なんだか引っかかる言い回しだな。

 得体の知れない相手だが、運営か?


 

 「あなたは運営の人?」



 「お前の知っているリディアと直接関係は無いが……そんなところだ。まあ、()()は全て消しているが」



 「履歴?」



 「何でもないことだ。それと、付け加えるなら――」






 ☆☆☆☆☆







 ――目が覚めた。

 目の前には田舎が広がっている。


 点々と存在している平屋に、広大な畑。

 流れる小川に、暖かく涼しい風。

 虫の鳴き声に、緑の広がる山。


 どれも古き良き日本の風景。


 ……しかし。


 一つだけ違和感があるのだ。

 今ちょうど畑を耕している第一村人。

 

 その容姿が人では無いのだ。

 一目見ただけで分かる。なぜなら、全身に灰色の毛が生えていて犬耳のようなものが付いているからだ。


 俺は《鑑定》した。


_________________________________________

 ステータス


 レベル 5

 種族  狼人


 パラメータ


  HP300

  MP50


  速力 30 筋力 30 防力 30

  器力 50 精力 30


 スキル

 〔種族スキル〕《遠吠》LV2《擬人化》LV2


 〔通常スキル〕《耕作》LV30《建造》LV10


_________________________________________


 

 うん。やはり俺の表現通り、村人のようだな。

 スキル構成が完全にそれだ。


 気になるのは《擬人化》というスキル。

 恐らく、人化や変化よりも不完全なものになってしまうんだろう。


 人ではなく狼でもない、その中心くらいの存在。

 中々面白い。もしかしたら俺もああなる未来があったかもしれない。


 ほえー、と呆けて考えていると、第一村人改め狼人の一人がこちらを向いた。

 

 ……バレた?


 完全に油断していたため《隠密》は発動させていなかったのだ。

 目立つ障害物もなく、俺の姿を物理的に隠すこともできない。


 襲いかかってくるか?


 俺は咄嗟に龍劉璽を掴む。

 いつでも抜刀できる準備をした。


 来るなら来い。

 パラメータやスキル的にも負ける事はないが、これはイベントだ。


 思わぬ落とし穴があるのは容易に想像できる。


 俺は狼人の一挙一動を見逃さないよう警戒する。

 



 「おーい! 村長ー!! 畑仕事は終わったよー!!!」



 ……?


 ん?


 今のは俺に呼びかけた……のか?


 見れば、狼人はこちらに向かって手を振っている。

 それも両手を大きく掲げて。


 敵対心など微塵もないように、だ。

 

 

 「どういうことだ……?」



 つい、独り言を溢すほどには混乱している。

 意味が分からない。


 村長って誰のことなんだ一体。

 

 というか、マカとレイクさんは?

 

 ここは何処?


 イベントは始まっているのか?


 圧倒的に情報不足。

 まるで初めてログインした時みたいだな。


 俺はふとそう思う。

 すると……少し懐かしく感じるのは何故だろうな。


 思わず、フッ、と笑う。

 ステータスが強くなっても、肝心の俺は何も変わっていないようだ。


 ……いや、そういえば。

 

 一番最初、一番弱かった時。

 その俺は何をしたんだっけ。


 思い出そうと記憶を探る。

 

 最初のウルフを倒せなかった俺は、何をしたのか。

 

 ……あ、思い出した。



 「何もしてないや」


 

 そう。何もしていなかった。

 楽観的に思考を切り替えて、突撃していたんだった。


 何度も何度も、何度も何度も。

 

 特に何も考えず、ただ愚直に。

 確かそんな風に突撃していたのだ。


 情報が足りていないのに、ぐだぐだ考えていても時間の無駄。

 なら、あの狼人と接触してみようか。


 俺は狼人に向かって歩み寄る。


 向こうに戦うような雰囲気はない。

 ただこちらを見ているだけだ。


 

 「こ、こんにちわ」



 「よく来てくれたね、村長! ほらこの通り、今年も豊作だよ!」



 ジャガイモ? タマネギ? のようなものを俺の目の前に持ち出しながら、誇らしげに語る狼人。

 

 ああ、うん、よかったね。


 俺は心の中でそう思った。

 状況はかなり複雑なようだ。



 「ところで村長、どうしてここに来たの? いつもはずっと家に居るじゃないか」



 いや知らんがな。

 とは言えない。


 どうやら俺が村長なのは確定のようだな。

 どんな理由でそうなったかは全く分からないが。


 

 「村長?」



 「い、いや。何でもないことだ。気にしないでいい」



 「そっか。村長がそう言うなら分かったよ」


 

 ニカッと笑う狼人。

 絵に描いたような爽やかさだ。

 

 これが人間のイケメンだったら、恐らく俺はイチコロだったと思う。

 まあ現実は狼なので、万一にもそんな事は起きない。


 とにかく、素直に納得してくれてよかった。

 次は俺から質問してみよう。


 

 「他の人はいないのか?」



 「他のみんなは川に行ってるよ。今の時期は、魚が多く取れるらしいんだ。妻も子供も釣りをしに行ってる」



 「つ、妻?」



 「あれ、言ってなかったっけ? 少し前に結婚したんだ!」



 「そ、そうか。それはおめでとう?」



 「何で疑問なんだい? 村長、ありがとね」



 幸せそうに微笑む狼人。

 

 リア充爆発しろ、とは思えないほどに尊い雰囲気だ。

 なんか、俺も歳を取ったらこういう暮らしをしたいという気持ちになってきたなぁ。


 なんとなく、これが一番幸せな気がする。


 

 「ところで、村長の家まで来てくれないか? 聞きたいことがあるんだ」



 「村長の家? いいけど……本当に入っていいの?」



 「あ、ああ。もちろん。特別に」


 

 「なら光栄なことだね。村長家ってこっちの方だよね?」



 そう言うと。少し遠くの棚田、その上を指差した。

 村長の家など知らないが、ここは同意しておく。


 もはや、殆どノリで会話してるようなものだ。



 「そうだな。先に行ってくれ」



 「わかった」


 

 狼人は農具を土に刺すと、指差した方向へと歩き出す。


 俺は付いて行った。


 脳裏で、これは本当にイベントなのか、そう疑問に思いながら。

 

イベント開始……?

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