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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
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受け取り②


 【ログイン39日目】※ゲーム内時間換算(30日)



 え、いま何て言った?

 まだある?


 刀だけじゃないのか?

 というか、刀以外に何を作ったんだ?



 「ちょっと待っとけ。持ってくる」



 疑問の尽きない俺を放置して、バラザは奥の部屋へと入っていく。

 俺は大人しく待つことしか出来ない。


 何が出てくるのか少し楽しみではあるが、同時に不安もある。

 

 だって、俺が依頼したのは刀だけだったはずだ。

 バラザは追加で注文にない物を作った。


 それが問題のある物だと、俺は困る。

 だが十中八九、問題しかないものを作ったという確信が、俺にはあるのだ。


 理由はバラザだから。これだけで十分だろう。

 

 ガチャガチャと音がする。

 その音源はバラザの入っていった部屋からだ。

 

 金属と金属がぶつかる音や、何かが崩れ落ちるような音、なぜかピアノやヴァイオリンのような音も聞こえる。

 意味が分からない。


 俺が困惑していると、ドアが開いた。

 

 バラザが何かを抱えて、後ろ向きでドアをくぐる。

 バラザの様子を見る限り、随分と重そうだ。


 バラザは背を向けながら、俺の目の前まで歩く。

 そして、手に持っていた何かごと体を反転させた。


 

 「おお……!」



 俺は思わず、呻き声を上げた。

 それほど素晴らしかったのだ。


 

 「どうだ、なかなか良いだろ?」


 

 今日何度みたか分からないドヤ顔。

 だが、それも許せるほど目の前の()は凄まじかった。


 色は深い赤……いや敢えて紅と言おう。


 鎧のベースは紅で、所々に金色の装飾が施されている。

 だが、その金色も華やかな色ではなく、燻んだような金色だ。


 よく見てみると、シンプルなドラゴンの装飾がされていた。

 不思議なことに、右手には龍、左手には竜が。

 

 そして、右半身と左半身で微妙に装飾が異なっており、胸に埋め込まれている水晶に集まるように散りばめられていた。


 全体的に暗い雰囲気だが、俺的には好みの部類。

 普通にカッコよくて好きだ。


 というか、早く装備してみたい。

 この鎧と龍劉璽で、早く草原エリアへ行きたい……!


 ボアを斬り伏せる自分を想像し、俺はだいぶ興奮した。


 

 「これ、装備してみたいです!」


 

 「まあ待て。早る気持ちも分かるが、まだ渡すもんを渡しきれてねぇんだ」


 

 バラザは懐から一つの短剣を取り出した。

 

 形が歪な短剣だ。

 まるで三日月のように刃が湾曲している。

 

 柄の先は丸くなっており、指を通して下さい、と言っているようにも感じる。

 これは本当に短剣なのか?


 

 「不思議な形状だろ?」



 疑問が顔に出ていたのか、バラザが話し始める。

 ポーカーフェイス……無理かも。


 

 「コイツはガーランドが造ったもんだ。お前宛てにな」


 

 え? ガーランドが? 

 わざわざ作ってくれたのか……。


 感謝。本当にありがとう。

 

 

 「で、これってどういう武器なんですか?」

 

 

 しかし残念ながらガーランド……この武器、全く分からん。

 もし俺なら知ってると思って作ったのなら、ごめん。


 俺の知識にあるナイフは真っ直ぐなものだけで、こんなふうに湾曲した刃を持つものは無い。

 


 「なんて言ってたか…………カロン、いやカランビットナイフだったか? ガーランドの野郎がそう呼んでたぞ、確か」


 

 「か、カランビットナイフ?」



 「ここの輪っかに指を通して、尖ってる方が先になるように握って使うらしい。なかなか面白い武器だったぞ?」



 「へ、へえー」



 としか言えない。

 いや、まず知らないし。


 よく分からなすぎるので、とりあえず《鑑定》してみた。

 


__________________________________________

 名称 遠月  ランク4


 純魔銀鉱石をベースに作られた短剣。刀身と柄は大きく湾曲しており、刃先の鋭さは通常のナイフを遥かに凌ぐ。主に暗器として使われることが多く、愛好家も一部存在している。しかし、その形状から扱いの難易度は高い。


__________________________________________


 

 なんか、随分と癖のありそうな武器だなぁ。

 マニアックというか、コアというか。


 ガーランドの趣味が垣間見えた気がした。


 だが、サブ武器として使う分には申し分ない。

 暗器として使われる、とか説明されてるし。

 

 使いこなせれば、通常のナイフより性能が良いんだろう。

 ……使いこなせれば、な。


 この一言でかなり不安になるが、ガーランドの贈ってくれたものだ。有難く使わせてもらう。

 そして、使いこなせるように努力してみよう。


 手元の遠月を握りしめ、俺はそう思う。

 そういえば名前もカッコいいよな。


 ガーランドが付けたのかは知らないが、俺よりネーミングセンスがあることは確実だ。

 むしろ、俺以下が居るかどうかのレベルだろう。


 

 「ありがとうございます。ガーランドにも礼を伝えといて下さい」


 

 「ああ分かった。それと、もう一つ渡すもんがある」


 

 「はい……え、まだあるんですか!?」


 

 一体、どれだけ作ったんだか……。

 約5日間でバラザは3つも武器を作ったのなら、もはや人間ではないんじゃないだろうか。


 いやドワーフだった。

 ん? ドワーフって一応、人?


 人種プレイヤーと一括りにされているので、おそらく人なのだと思われる。

 まあ、見た目はまんまイメージ通りのドワーフだが。


 

 「当たり前だろ? 初期装備を棄てるなら、鎧だけ持っててもどうせ他の服を買わないといけねぇんだよ。そんな不親切な真似は、俺が生きてる限り許さねえ」


 

 おお、カッコいいこと言うじゃないか。

 珍しく。


 初めて、鍛治の腕以外で超一流っぽいところを見た気がする。

 この場面だけなら、自分の仕事に真摯な一流鍛治師、なんだけどなぁ。


 

 「だから、これも昔の伝手を使ってまで用意した。理解したと思うが……絶対に壊すんじゃねぇぞ?」



 はい、ただの怖いおじさんになりました。

 

 漫画の世界でしか見たことのないような、鋭く恐ろしい眼光だ。

 まるで野生の獣。


 しかし。そんな猛獣が唸りながら手に持っているもの。

 それが可愛らしい洋服というのが、怖さを90%カットしている要因だろう。


 

 「バラザさん、それ誰用ですか?」



 果たして俺は笑いを堪え切れただろうか?

 漏れ出ていたら失礼。


 絵面が面白すぎるので、仕方ない。

 

 だって、明らかに女の子が着るような服なんだぞ?

 

 バラザがまるで、娘と一緒に服を買いに来たが荷物持ちとしてこき使われて機嫌斜めの父親、に見えなくとも笑ってしまうだろう。


 これは無理。

 あれ、俺っていまポーカーフェイスできてる!?


 

 「誰用って、お前しかいねぇだろうがよ」


 

 「……え?……へ?」



 き、聞き間違いだよな。

 だって、明らかに女の子が着るような服なんだぞ?


 

 「俺がこんな服を着るなんて有り得ないですよね!?」



 「お、おお。どうしたお前、目が怖えーよ。そんなに嫌か?」


 

 いやいや。

 そもそも嫌とかいう問題じゃないよね。


 

 「いや俺、男ですよ?」


 

 「……まぁ、そうだな」


 

 「そうだな、って()()なら男って分かりますよ!?」



 あ、やべ。言ってから気付いてしまう俺。

 今の言い方はバラザが普通じゃないって言ってるみたいだ。


 まあ実際そうなんだけど。

 

 だけど、言ってはならないラインを超えている。

 これは流石に誤魔化せないか……?


 

 「()()()は普通じゃねぇんだよ。たまに俺でも理解できんことを仕出かすからなぁ」



 おっと、これを作ったのはバラザじゃないらしい。

 そういえば昔の伝手とか言ってたな。

 

 人の話は最後まできちんと聞きましょう。


 心の中でそう呟く。

 しかし、少しバラザに失礼だったかもしれない。


 流石のバラザでも、男に女装を強制させるようなことはしない、と思う。

 うん信じる。


 だが、この洋服を作った()()()というのは確実にネジが外れている。

 

 あのバラザに普通じゃない、と言わせるような猛者だ。

 何となく腕だけは良いタイプなんだろうな、と想像がつく。


 ……またバラザに失礼かも。

 まあ仕方ないか。


 ……。


 …………い、いや。待て。

 なぜ俺は流されそうになっているんだ?


 製作者が普通じゃないのは当たり前。

 だがそれを理由に、俺がこの服を着ることは無い。

 

 

 「申し訳無いんですけど、僕これ着たくありません」


 

 俺は断固とした意志で発言した。

 


 「……だろうな」



 「はい。なので、別のをお願いします」


 

 「まてまて、貰うだけ貰ってけ。悔しいが、性別はともかく見た目と性能だけは良いんだよこれ」



 だろうな。明らかに高級そうだもんな。

 でも、だからこそだ。


 見た目が良いのは問題にしかならない。

 男が可愛い服を見せられて喜ぶわけがないだろ?……一部を除いてだが。


 しかし残念ながら、俺はその一部ではないので無理だ。

 着ることは出来ない。

 


 「無理です」



 「いやそう言わずに。な?」



 「これを着て街を歩けると思いますか? 俺の心が崩壊します。死にます。無理です!」


 

 「じゃあ……見られなければ大丈夫なのか?」



 何だよその言い方。

 


 「実はな。俺もおめぇがそう言うと思って……造らせといたんだ」



 バラザは後ろを向いた。

 そして、一つの机のもとへ歩く。


 まさか、と俺が思った瞬間。

 バラザは無造作に畳んで置いてあった、一つの布を手に取る。


 そして、俺の前まで戻り、布を広げた。



 「これなら見えないぞ?」



 そこには、俺の身長を一回りほど上回る黒ローブがあった。


 

 「いや、そんなのあっても意味がな――」






 

 ――そして8日が経った。


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