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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
81/106

攻略?


 【ログイン36日目】※ゲーム内時間換算(28日)


 

 ログインしました。

 いやぁ、昨日は大変だった、本当に。


 あの後、バラザの注文通りに素材を出し終えた俺は直ぐに帰れると思っていた。

 だが、バラザにそんな気は微塵もなかったようで延々と武器の構想を聞かされる羽目になった。


 最初は興味深く聞いていたのだが、段々とうざったらしくなるのは明白で、途中から相槌を打つこともしなくなった。


 そんな拷問が2時間ほど続いた。

 いや逆に、2時間で済んだのだ。


 帰ってきたガーランドがバラザを宥めてくれなければ、きっとあの拷問は永遠に続いたに違いない。

 感謝する、ガーランド。


 そして、あのバラザに弟子入りしたことに対する敬意と疑問を表しながら、俺は森エリアの洞窟に帰ったのだ。


 洞窟に帰るとレイクさんがいた。

 俺が街などで色々やっていた間に、マカとレベリングを主にやっていたらしい。


 一緒にどうですか?

 と誘われたが、精神的に疲労困憊だったので、また今度、と断りログアウトしたのだ。


 ちなみに俺が洞窟へ帰る時にバラザは、5日後に取りに来い、と言っていた気がする。恐らく、武器のことだろう。

 

 ゲーム内での5日なので、現実世界では2日半。

 なんとも便利なことだ。


 さて、今日は何しようか。


 俺が思案を巡らせようとした瞬間。

 目の前に金属鎧が現れる……レイクさんか。


 相変わらず早いな、と思いつつ、俺は声をかけた。



 「レイクさん、こんにちは。相変わらず早いことで」


 

 「どうもサクヤさん。貴重な休みなので、この間にレベルを出来るだけ上げておきたいんですよ」



 レイクさんは苦笑しながら言う。

 

 まあ、レイクさんは社会人だろうな。

 学生って感じは全くしないし、どちらかというと先生みたいな雰囲気だ。


 それとは反対にマカは学生。それも中学生くらいだと思う。

 確たる理由がある訳ではないが、マカの言動や雰囲気が何となくそんな感じなのだ。

 

 マカとレイクさん……かなり対照的な2人だな。

 俺は普通の高校生だけど。


 

 「なら、良い場所があるんだけど行ってみない?」



 「それは有難いです。ですが、折角なのでマカさんも待ってみませんか?」



 「分かった」



 俺の言う良い場所とは、草原エリアの奥にある森のことだ。

 ヒルとの修行で俺が2週間ほど頑張ったところだな。


 あそこなら他のプレイヤーは絶対にいないし、レベリング的にも良い効率になるんじゃないかと思ったのだ。

 まあ、あそこの魔物を倒せる前提の効率ではあるが。


 だが、レイクさんとマカなら大丈夫だろう。

 二人ともぶっ壊れた強さをしているのだし。


 俺が心配することは何も無い。

 強いて言うなら、範囲攻撃で森を破壊するのはやめてくれということだろうか。


 そんな事を考えながら俺はレイクさんと雑談を交え、マカを待つのだった。





 ☆☆☆☆☆

 




 「マカ、レイクさん。リスポーン地点の設定は出来たか?」



 「はい。問題ないです」



 マカがログインしたので、俺の《念動力》によって草原エリアの洞窟までマカとレイクさんを運び、目的地である森の入り口へ向かっていた。


 万が一、死んでしまう可能性もあるためリスポーン地点の設定を二人にさせておいたのだ。

 また森エリアまで迎えに行くのは面倒だからな。

 

 それと、俺が破壊してしまった森の一部分は元通りになっていた。あれから10日ぐらいしか経ってないのに、森の生命力というものは凄いな。


 同時に。もしかしたら、ここにヒルがいたりするかも? と思っていた俺だが、今のところヒルの気配はない。


 しかし、気づいたら真後ろにいる、なんてことは普通に有り得そうなものだ。

 エリアボスとは神出鬼没を地で行く存在らしいからな。


 

 「それはいいとして! さっきの警告は何なの!?」



 俺が考え込んでいる中でも相変わらずな感じのマカ。

 もう慣れた。


 さっきの警告とは恐らく、魔の大森林へと進みますか? というヤツのことだろう。

 俺も最初は驚いた。


 推定レベル50と表示されているので、レベルが足りないマカは不安に思ったんだろう。

 まあ、マカの種族なら大丈夫。


 だって、種族スキルが壊れてるから。

 ……レイクさんも同じく壊れてるから大丈夫だ。心配はない。


 

 「多分、運営の良心ってやつだよ。そんなに怖がらなくても大丈夫だと思う」



 「怖がってないわよ!」



 「はいはい」



 マカの強がりを流しつつ、レイクさんの方を見る。

 やはり、マカとは違って落ち着いている様子だな。


 頼りになる、と思いながら俺はマカとレイクさんにこの森の注意すべき点を伝える。

 俺が苦しめられた、あの植物についてだ。


 

 「レイクさんとマカ、この森の木には注意してくれ。殆どが木に擬態した魔物だ。しかも攻撃力が尋常じゃなく高い」


 

 「具体的にどれくらいですか?」



 「HP1000は削られる」


 

 「私、即死よ!?」



 「……気をつけてくれ」



 やはり、ここに来たのは間違いだったか?

 レイクさんは兎も角、マカには不安しかない。


 いくらスキルが強くても、それを活かせなかったら意味がない。

 俺が一番それを知っているはずなのに……。


 しかし。

 マカには申し訳ないが、ここまで来てしまったからにはチャレンジしてみよう。どこまで行けるだろうか?



 「じゃあ、とりあえず俺が察知系のスキルを使ってみる」



 俺は《気力操作》と《魔力操作》を発動させた。

 周囲の " 気 " と " 魔 " を感知し、違和感のある木を探してみる。

 

 すると案の定、いきなり目の前の木から反応があった。

 普通の木からは感じられない " 魔 " を感知したのだ。


 コイツだな。

 

 だが、俺がそう思った瞬間、同じように " 魔 " を持っている木を大量に感知した。

 俺の察知できる範囲内の、約半分はそれだった。


 だいぶ絶望的じゃないか?

 

 修行時は、そもそも数メートル先に進むのが限界だったので、木に擬態した魔物がこんなにいるとは思いもしなかった。


 魔の大森林……本当に文字通りだな。

 推定レベル50はやはり詐欺だった。早急な修正を求めるぞ、運営。


 

 「ねぇサクヤ? 何してんのよ」

 

 

 俺が現実逃避じみた思考をしていると、マカが俺を訝しむように見てきた。

 スライムだから本当に訝しんでいるかは分からないけど。


 

 「思ったより数が多かったから驚いてた」



 「あっそ。で、どれがその魔物なの?」



 俺との会話など露ほどの価値もないらしい。

 マカは早くしろ、と言わんばかりに体をぷるぷるさせている。


 感情の起伏に応じてスライムの体に変化が及ぶのは見ていて面白い。

 だが、その変化のバリエーションが一つしかないのが難点だ。怒っているのか、悲しいのか、嬉しいのか、全く見分けがつかない。


 まあ、今回のぷるぷるは怒りだろうけど。

 俺はくだらないことを考えながらも、マカの質問に答える。


 

 「目の前の木と、そのすぐ奥の木、その右と左斜め後ろだな。あとは少し奥に密集している木の手前側と、左側だ」



 俺はそれぞれの木を指差しながら言った。

 これで少しは分かってくれると楽なのだが……。



 「分っかんないわよ! そんなの!」



 「あー、とりあえず目の前の木は危ないぞ」



 やはり伝わらなかった。

 確かに、同じような木が無数にある中を指さされても分からないよなぁ。


 アレとかソレなどしか表現できない自分を呪おう。

 いや正しくは過去の自分か? 恐らくそうだろう。


 

 「てか、こんなのが本当に魔物なの? ただの木にしか見えないわよ」



 俺の思考が脱線していると、マカは目の前の木に近づき出した。

 俺が危ないと言った木に、だ。


 俺の言葉は露ほども信用されていないらしい。

 はあ、悲しくなってくる。

 


 「あ、危ないぞ! マカ!」



 「大丈夫よこんなの。どう見ても無害そうじゃない」


 

 俺が再度注意しても、聞く耳を持つ様子はない。 

 もう知らない。どうぞ死んでリスポーンしてくれ。


 マカを止めるのを諦めた俺だが、レイクさんも同じように諦めたらしい。

 今のマカには何をしても、暖簾に腕押し状態だからなぁ。


 小さなスライムと大きな木の距離はどんどん縮まる。

 そして、マカの体は木の枝によって貫かれた。


 スライムがポリゴンのようになって消える。

 


 「何っなのよ!! あれ!!」



 後ろで大きな声が聞こえた。

 マカが叫んでるんだろう。ここまで聞こえるとは……かなりの声量だな。


 俺は呆れながらも、目の前の木に意識を向ける。

 先程までスライムがいた場所、そこには鋭い鎌が存在していた。


 その鎌は木の枝と繋がっており、それがこの魔物の武器なのだと一目で分かる。

 あんなので攻撃されれば、HPも消し飛ぶというもの。


 知覚できない速度で致死の凶器を振り下ろす。

 それがあの魔物の攻撃だ。さて、回避できるだろうか?


 俺は《回避》というスキルを持っているが、発動させる間もなく死ぬだろう。よって為す術はなし。


 魔法などの遠距離攻撃で地道に削っていけば、いつかは倒せるかもしれないが、それではあまりに効率が悪い。

 もしそんなことをするなら、大人しく草原エリアや森エリアでレベリングをした方が断然良い。


 目の前の鎌はゆっくりと、木の枝として自然な位置まで戻る。

 そして驚いたことに、鎌はただの木の枝に変化した。


 つまり、あの鎌は木の枝が変質したものだということ。

 一見普通に見える木が、HP1000以上を一撃で削る武器と化すのだ。恐ろしい。


 だが逆に言えば、あの木を採取さえできれば強力な武器に加工可能ということだ。

 バラザへの良い土産になりそうだな。採取できれば。


 俺が数秒思考している間で、目の前の木はマカを貫く前の状態に完全に戻っていた。

 修行時、自分がどうやって殺されたか分からないわけだな。


 

 「ああっもうっ! 意味わかんないわよ!」



 マカはぷるぷると、とてもご立腹のようだ。

 まあ、タチの悪い初見殺しに遭ったのだから仕方はない。


 が、俺の注意を無視したマカも悪いだろう。

 ……それを本人に直接言えない辺り、俺も情け無いよなぁ。


 俺の後ろからスライムが姿を見せるが、流石にまた突撃するほど学習能力が無いわけではないらしい。

 俺と同じく、木から一定の距離をとっている。


 

 「サクヤとレイクは何もしないで! 私がやるから!」



 苛立った声が聞こえる。

 もっと冷静になれば、一人で何かできる筈がないと分かるだろうに。


 確かにマカの吸収能力は凄まじいが、その本質はリアクションだ。アクションではない。


 要はカウンターや防御に特化しているのだ。

 この魔物との相性も悪く、魔法ではなく物理攻撃が相手では吸収もしづらい。


 この森において、マカの出来ることはかなり限られているのだ。

 一人でできることなど高が知れている。


 

 「《原子分裂》、《分身操作》、《眷属命令》!」



 マカがスキルは発動させた。

 《原子分裂》は知っているが、後の二つは全く知らない。


 ちなみに《原子分裂》とは、《細胞分裂》の上位互換。

 簡単に言うと、分裂できる最小の大きさが原子になったのだ。

 

 もはや、訳がわからない。

 原子レベルで分裂する意味ってあるのか?


 スキルを発動させた本人ですら分からないくらいの大きさなのだから、そんなものが居ても、居ないのと同義だろう。

 まず、そんなのがどうやって魔物と戦うというのか。

 

 

 「ん?」



 俺は脳内で疑問を浮かべていたが、マカに現れた変化に気付く。

 そして、更なる疑問を浮かべた。


 マカの周囲には、先程まで無かったものが存在していた。

 ……水?


 いや。よく見てみると、それは霧に近い。

 だが、違和感もある。


 まず、霧にしてはその範囲が部分的すぎる。

 直径約15センチほどしかない。

 しかも霧の形は不規則に変わり続けているのだ。


 霧というより、レイクさんと同じゴーストのような魔物みたいだな。

 まあ、それでも小さ過ぎるが。


 突然現れた霧のようなものは、マカの周りをふよふよと漂っている。

 マカのスキルが関係しているのか?


 《分身操作》と《眷属命令》。

 このスキルによって、霧が召喚でもされたのだろうか?


 

 「ふん! 思い知らせてやるわ!」



 マカが、そんな声と共に威勢よくぷるぷるする。

 すると、漂っていた霧が木に向かって直進。


 そして、先程と同じように木から鎌が振り下ろされる。

 

 俺でもギリギリ視認できるかどうか、そんな速度で振り下ろされた鎌は霧に突き刺さった。

 だが、霧に実体はない。


 マカは何を?


 俺がそう思った瞬間。

 マカが叫んだ。



 「《次元吸収》!!」



 すると。

 霧に突き刺さっていた鎌。

 それが、あたかも最初から存在していなかったが如く消滅した。



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