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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
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再訪


 【ログイン34日目】※ゲーム内時間換算(27日)



 森エリアから街に戻ってきて数十分。

 ラティはどこに行ったのだろうか。


 俺は現在、ガーランドが弟子入りしたドワーフ――バラザと出会った建物の前にいる。

 ちなみに、人の気配はもちろんドワーフの気配もしない。


 ここまでの道のりは《地図》があったとはいえ、決して楽ではなかった。

 右行ったり左行ったり、道が複雑すぎる。


 ノウズはよくこんな道行けたよなぁ。

 流石の《地図》でも初見だったら、この難解な道を突破するのは厳しいと思う。


 まあ、それだとガーランドもどうやって此処を見つけたのか気になるが。

 何故かここの区画は、道も建物も全てぐちゃぐちゃのカオス。


 絶対に住みたくないところだ。

 確かに、街の西側なのでかなり栄えてはいるが、高い建物が狭い間隔で立ち並んでいて見通しが悪く、匂いもなんか変。


 ガーランド……よくこんなとこに弟子入りしたなぁ。

 自分でも失礼かなと思うが、そう思わずにはいられない。

 どうやら、生産の道も相当に険しいらしい。


 はあ。

 それにしても、ガーランド遅くないか?


 実は俺。この建物に着く頃、予めフレンドメッセージでガーランドに連絡しておいたのだ。

 

 装備の素材を持ってきたからバラザを呼んどいてくれって。


 すると、案外早くガーランドから反応があった。

 分かった。と、簡潔に返してきた。


 そして。

 それからもう何分も経っているわけだが。


 目の前の扉が開く気配はなく、人がいる気配すらない。

 ……不法侵入して良いだろうか?


 こちとら既に殺人を犯した身。

 いまさら不法侵入しても大して変わらないのでは。


 そぉー、と扉に近づく。

 念のため《気力操作》と《魔力操作》で中に誰かいるか確認する。


 よし。いない。 

 ……いや何も、よし、じゃないな。

 

 これでは元々忍び込むのが目的みたくなってるじゃないか。

 


 「おい坊主!」


 

 ビクッ! という擬音が似合う勢いで背筋を伸ばす。

 そして、俺は聞こえた声が幻聴だと願いながらゆっくり振り返る。


 すると案の定、あのドワーフが立っていた。


 

 「こ、こんにちわ。バラザさん」



 バクバク跳ねる心臓を必死に抑えながら挨拶する。

 やばい。追われる犯罪者の気持ちが分かってしまう。


 確かにこれは尋常じゃないほど焦る。

 咄嗟に逃げたくなってしまうほどには。


 

 「おう。しっかし、何してんだ?」



 えーと?

 中に人が居なさそうだってので入ろうとしてました、とは言えないよな。


 ここは、装備の素材を持ってきた、で良いだろう。

 嘘でもなんでもない本当の理由だ。


 疑われたらガーランドの助け舟を祈る。

 


 「装備の素材を持ってきたんですけど……」



 ちょっと小声になってしまった。

 だが、バラザには聞こえていると思う。

 まだ難聴の歳じゃないはずだし。


 そんな思考をしながらバラザの顔を見ると、その表情に驚愕が浮かんでいることが容易にわかった。

 まあ、まだ数時間しか経ってないから当然の反応か。

 


 「随分早いな……」


 

 バラザは一言呟くと黙り込んだ。

 その一言も、基礎ステータスが高い俺だからこそ聞けた声。


 本人は俺に聞かれたとは思っていないだろう。

 

 

 「……とりあえず中入れ」


 

 バラザはそう言うと歩き出し、俺の横を通り過ぎて扉を開けた。

 どうやら鍵とかは掛かっていないらしい。


 俺はバラザの後をついていく。

 ちなみに、バラザの今の服装はさっきより綺麗になっている。


 ガーランドがバラザに直接、文句を言うとは思えないで、バラザが自主的に身なりを整えたのだろう。

 まあ、どこかに出かけていたようだし当たり前か。


 あんな格好で街中を彷徨かれたら、迷惑以外の何ものでもない。

 結果として、そちらの方が俺も助かる。


 バラザが扉を開けた先は、俺が思っていた数倍は整ったところだった。

 まんま鍛治工場って感じ。実物は見たことないが。


 てっきり、もっと散らかっている想像をしていた。

 流石超一流。ガーランドがそう言うだけはあるようだ。


 

 「ちょっと待ってろ」



 キョロキョロと物珍そうにしている俺へバラザは言うと、無造作に置かれていた作業台? ワークベンチ? みたいな台を俺の前に運んだ。

 

 高さは俺に丁度いいくらい。

 何に使うんだ?


 

 「これは?」



 「おまえが持ってきた素材を置くためのもんだよ。ほら早く出してみな」

   


 台をバンバン叩きながら言うバラザ。

 何をそんなに急いでいるんだ、と思いながらインベントリを開く。


 台のサイズ的に、あまり大きめの素材は乗せられそうにない。

 とりあえず、俺が使ってほしい素材を出してみることにした。


 純魔銀、純魔鋼、純魔白銅、これらを一つずつ。

 どれを使うかはバラザに任せたいので、どんな素材だろうと見せるだけ見せておきたい。


 エンペラーグリズリーの毛皮、世界樹の枝、世界樹の雫、火結晶、水結晶、風結晶、土結晶、光結果、影結晶。アラクネの糸……これらも一つずつ。


 だが、エンペラーグリズリーなどは一つでも大きい。

 ここから更に竜の○○シリーズもあるんだが。


 これは、どう考えてもこの台に乗り切らない。

 


 「あのバラザさん」


 

 「……」



 炎結晶などを出しながらバラザに声を掛けるが、返事がない。

 この状態を見れば、台がもう一つか二つくらい必要だと分かると思うが?


 そう疑問に思い、バラザの方に目を向ける。


 バラザの目は大きく見開かれていた。


 

 「お、お、おまえッ! 何処でこれを手に入れた!?」


 

 俺の肩を両手で強く掴みながら、物凄い剣幕で揺さぶられる。

 俺の防力が低かったら普通にHP削れるよ、これ。


 まあ確かに、こうなるかもなぁ、と少しは思っていた。

 だって、ランク8とか9とかのアイテムだよ?


 俺だっていきなりそんなの出されたら混乱する。

 特にバラザは鍛治師なんだし、このアイテムがどこで取れるのかという情報は是が非でも知りたいはず。


 だから少しは予想していた。

 でも、どう答えるかは考えてない。


 そこまで熟考してなかったからね。

 自分の装備を作ってもらえることで頭がいっぱいだったのだ。


 そんな言い訳を脳内でしながら、俺はバラザに答える。


 

 「えーと、知り合いから貰いまして。俺も何処で手に入れられるかは分かんないです」


 

 嘘ではない。

 事実、知り合い(マーナさん)から貰った物の一つだ。


 何処で取れるかなんて……知らない。と思う。

 


 「本当か!? 嘘だったら呪いの装備を造るからな!?」



 「い、いや。本当だって!」


 

 危ないワードがバラザから飛び出たため、俺は若干食い気味で答える。

 呪いの装備とか作ろうとして作れるものなのかよ。


 超一流と言われるバラザなら有り得るかもしれないので、何とも言えない。

 だが、実際に作られたらたまったものではないので、本当にやめてほしい。


 バラザは漸く静かになり呼吸を整えた。

 落ち着いたみたいだ。


 

 「悪いな、少し取り乱した。だが、本当にこれを素材に使っていいんだな? 本当に価値を分かってて言ってるんだな?」


 

 バラザは真剣な表情で聞いてくる。

 が、答えはもちろん決まっている。


 

 「お願いします」


 「……というか、まだまだ沢山あるんで」



 例えば竜シリーズとか。

 他にも一応インベントリに入れておいたアイテムは多い。


 

 「マジか?」


 

 バラザには似合わないな。マジ、って単語。

 それほど驚いてるという事だろうか。



 「はい。なので、もう二つくらい置く場所が欲しいです」



 既に置き場がなくなった台を見ながら、俺はバラザに言った。

 一つずつ出してもコレなのだから、インベントリ内の全ての量を出したりしたら、バラザの工場が破裂しそうだ。


 てか、そう考えるとインベントリって破格だよな。

 何のデメリットもなしに、多くのアイテムを持ち運べる。


 収納に限界はあるが、SPを少し消費すれば解決してしまうし損失はない。

 皆んな、インベントリに依存しまくるだろうなぁ。


 俺が思考を脱線している間に、バラザは隣の部屋から新しい台を出したようだ。

 高さは俺より少し高いが問題はない。


 バラザはまた隣に部屋に入ると、もう一つ台を運んできた。

 大きさや高さは全く同じだ。


 恐らく、あの部屋は物置とかなのだろう。

 

 

 「素材はこの上に置いてくれ」



 新しく運んだ二つの台を並べると、バラザはまたも隣の物置に向かった。

 台をもう一つ持ってくるのか?


 バラザに言われた通り素材を置きながら、疑問に思う俺。

 正直、三つ目の台に少し素材が乗る程度の数なので、バラザがもう一つ運んできたとしても、それを使うことは無いと思う。


 アイテムの品質を確かめるための道具とかあるのかな?

 と、俺は予想したが。


 物置から出てきたバラザの右手に半透明の水晶玉があったことから、うん? と首を傾げる。


 どういう用途に使うんだろうか。



 「バラザさん、それは?」



 「おまえの筋力を測るもんだ。せっかく良い素材で武器を造っても、重くてまともに振れないんじゃ意味ねぇだろ?」


 

 当たり前だ、というように言うバラザ。

 まあ、ごもっともですね。


 

 「ほら、これを持ってみろ」


 

 俺の右手に水晶玉を持たせるバラザ。

 俺の手が小さいので、片手だとバランスを崩せば落としてしまいそうだ。


 でも、片手でと言われたので片手で持つ。

 

 すると、水晶玉が赤く光った。

 いや、赤というよりピンクだろうか。


 どういう原理なのかと思い《魔力操作》と《気力操作》で水晶玉を感知したが、何も分からない。

 魔法的な何かだと思ったのだが……不思議な水晶玉だな。


 

 「ほう、桃色か。やっぱ唯のガキじゃねぇな」



 良くない感じの笑みを浮かべるバラザだが、このピンク色がどのくらいの筋力を示すのか分からないので、何とも言えない。


 だが、悪いことにはならないと思う。多分。

 

 

 「よし。じゃあ、おまえの戦闘スタイルを教えてくれ。出来るだけ細かくな」



 「戦闘スタイル?」



 「スキルに沿った武器がいいだろ? 斧スキル持ってんのに槍を使っても意味ねぇしな」


 

 確かにそうなんだが、例えが極端すぎると思う。

 まぁ、分かりやすくていいが。


 だがそれにしても。

 いざ、自分の戦闘スタイルって何だろう? と考えてみても、咄嗟に思いつくものはない。


 冷静に考えてみる。

 まず俺のパラメータは、器力や精力に傾いている魔法型だ。

 スキルも基本的な属性は全て取得している。


 しかし。

 だからといって俺が、後衛向きか? と問われても首を傾げてしまう。


 何故なら、俺には前衛向きのスキルも多々ある。

 例えば《爪撃》。これは完全な攻撃スキル。


 そして《魔力操作》と《気力操作》。この二つを使うことで、敵の攻撃を容易く回避できてしまう。

 あとは《念動力》とか《耐久》とか《武闘》とか。


 近距離戦で活かされ、魔法を使うことで潰すには惜しいスキルばかりだ。

 あとは、《隠密》と《不意打》や《偽装》を駆使した暗殺者みたいな立ち回りも出来そうだなぁ。


 うーん。どんな武器が良いんだろう。

 まあ、こういうのも含めてバラザに相談するとしようか。

 

 俺は数秒間の思考を経て、バラザに話しかけた。

 


 「肉弾戦が出来て、魔法も出来て、暗殺者みたいな真似もできる……感じです」



 「……何言ってんのか分からんぞ」



 「いや本当にそうなんです」



 大丈夫かコイツ、みたいな目で見てくるバラザだが、本当に真実をありのまま告げただけだ。

 俺からしたら心外だよ、ほんと。



 「はあぁ」



 俺のそんな気持ちが顔に出てしまったのかは分からないが、バラザは大きめの溜息を吐いた。

 そして、倉庫に入っていく。


 ガタガタ物を漁ってる音が聞こえたが、暫くして音が鳴り止む。

 バラザが倉庫から出てきた。


 その手には黒い石が握られている。

 なんか探索者ギルドで見たやつに似ているな。


 

 「それは?」



 「おめぇのステータスを見るためのアイテムだ。ほら、この上に手を乗せろ」


 

 そう言って黒い石を差し出してくるバラザ。

 とりあえず言う通りにしておくか。


 俺は黒い石の上に手を乗せた。

 が、何も起こらない。


 しかし、バラザには何かが起こったようで、その表情が変化した。

 驚いたような落胆したような雰囲気の顔だ。


 本当にステータスを見たんだよな?


 

 「何が肉弾戦も魔法も出来る、だよ。全然弱っちいじゃねぇか。……ん? でも筋力は桃色……?」


 

 俺の頭は一瞬にして混乱した。

 後半の方にバラザがボソッと何か言った気もしたが、それどころではない。


 なんで? え? おかしいな…………あ。

 《偽装》だ!


 街に侵入したときからずっと《偽装》で、初心者に相応しいステータスにしていたのを忘れていた。

 パラメータも全て一桁で、スキルも数個しかない。


 それはそんな反応にもなるわな。

 

 俺は直ぐに《偽装》を解除して本当のステータスにする。

 一瞬、本当のステータスをバラザに見せてもいいか迷ったが、超一流なら大丈夫だろうと信じることにした。



 「バラザさん、もう一度ステータスを見てください」


 

 「……あ? 何か変わんのか?」


 

 「はい。とても」



 バラザは不思議そうな顔をしている。

 だが、変わると断言しきった俺を信じてくれたようだ。


 バラザは無言で黒い石を差し出してくる。

 俺はその上に手を乗せた。


 先程と同様、俺には何も起きた様子はない。


 だが。



 「なッ!? 嘘だろ!?」



 俺のステータスを見たバラザは、驚愕と混乱に満ちた表情をしていた。

 ふふふ。楽しい。

 

 恐らく今の俺は、悪戯が成功した小学生みたいな顔をしているだろう。

 そんな表情とこの身長は特に相性抜群だ。


 だが、決してわざとではないので悪しからず。



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