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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
73/106

審理


 【ログイン34日目】※ゲーム内時間換算(27日)

  side:八瀬陽芽

 


 ――時は少し遡り。

 

 サクヤが街に差し掛かったあたりで、ルカはラティに告げられた言葉を呑み込めずにいた――




 ☆☆☆☆☆





 

 「え、クウヤ君が消えた!? 本当なの!?」


 

 『本当。クウヤの匂いが急に消えた』



 クウヤ君の前では使わないと決めていた《念話》。

 ラティが使い出した時は怒ろうと思っだが、その言葉を聞いた瞬間にそんな思考は消し飛んだ。


 

 「え? でも、クウヤ君はすぐ向こうに歩いて行っただけだよね?」



 『分からない。ボクもルカも目を離してた……その隙に何かをした。かも』



 「クウヤ君は初心者だよ。そんな知識も技術もスキルも持ってないと思うけど……」



 『なら確認。そこから見下ろせば、まだ見える』


 

 ちょっと怒った様子で言うラティ。

 自分の鼻を疑われたからだろうか。

 


 「……分かったよ」



 今だに信じられないが、ラティの嗅覚が優れているのも事実。

 何より、何度も助けられたラティの言葉を全て否定することは出来なかった。


 私は急いで、クウヤ君が歩いて行った方向に走る。

 確かに、その方向は緩やかな傾斜が続いていて下が見えにくい。


 私は不安になりながらも見る。

 クウヤ君がいることを願って。


 

 「…………いない」



 『ボクの鼻は優秀』



 私が立ち尽くしていると、ラティが私の横に歩いてくる。

 もう吐き気なんて消えてしまった。


 だが、それ以上に気分は悪い。

 

 

 「ラティ。クウヤ君が何処にいるか分かる?」



 『分からない。一瞬だけ空に上がったかと思った。けど、直ぐに消えた』



 「……そう」


 

 『でも、クウヤの意思でいなくなったとは限らない。何かのクエスト、何かの魔物に襲われて死亡した。かも』



 「……でも、表示されてるクウヤ君のHPは満タンだよ?」



 『…………』



 「はあ……」



 もしかして私、自分で気づいてないだけでクウヤ君に酷いことしてたのかな?

 

 ふと、そう思ってしまった。

 しかし、いくら記憶を辿ろうと該当するようなものは見つからない。


 クウヤ君は一体、どこに行ってしまったんだろう?


 普通のプレイヤーならラティの《嗅覚強化》の範囲から逃れるのは難しい。

 気配を隠すスキルか、物理的に察知できない距離に移動するかしか方法がないから。


 けど、クウヤ君は初心者。

 そんなスキルもパラメータもないはず。


 じゃあ、どうやって?

 これが分からない。


 初心者……?



 「クウヤ君って本当に初心者なのかな?」



 気づけば口に出していた言葉。

 それは当然ながら、何の根拠もない思いつきでしかない。


 だが、不思議と的を射ている気がした。

 

 

 『……クウヤは剣の筋も良かった。ボク達の歩くスピードにも楽々付いてきた。考えてみれば不自然』



 私の言葉を聞いたラティが、同意を示す。

 ……まさか本当に?


 

 「でも、隠す動機は? なんの理由もないのにそんな事しないよね?」



 仮にクウヤ君が本当に初心者ではないとして、何のためにこんな芝居をしているのか。

 その理由も目的も分からない。


 

 『実は有名なプレイヤー。隠さなきゃいけない特別な理由がある。かも』



 「有名だったら自慢するんじゃないかな? 加藤君みたいに」


 

 『加藤君は知らない。有名でも、良い意味か悪い意味か分かれる』



 「悪い意味って……例えば?」



 『凶悪なPK。有名な詐欺師』



 「それこそありえ……ないとも言えないのかぁ」



 『……でも可能性は低い。クウヤとのパーティは継続?』



 ラティに言われた通り、左上に表示されている自分のHPに視線を移す。

 すると。その下にもう一つHPバーがある。


 

 「うん。まだ継続してるよ」



 『……なら、クウヤはログアウトしてない』



 「あ! そっか!」



 原則として、パーティを組んでいる最中にゲームからログアウトすれば、組んでいたそのパーティは自動的に解散される。


 三人や四人パーティだったらそのまま継続するが、二人の場合は即解散なのだ。まあ一人でパーティというのも変なので、当たり前のシステムなんだろう。


 ということは、クウヤ君はログアウトしたわけじゃなくて、何らかの方法、又は偶然によってラティの嗅覚が届かない距離まで移動した。


 というか、何でラティはこの事を知っているんだろう?


 

 『クウヤは初心者じゃない。が濃厚』



 「でも、クウヤ君って探索者ギルドに登録してなかったよね? 初心者じゃないなら、登録してないなんて事は無いと思うけど」



 『……確かに。難しい』



 初心者でありながら初心者ではない、矛盾したような事実。

 考えれば考えるほど分からなくなってくる。


 咲良君って何者なの?

 今すぐ加藤君に聞きたい。


 いや、加藤君も知らなそうだよね。

 図書館での会話を思い出し、そう思い直す。


 

 「秘密……知られたくないこと……初心者……初心者じゃない……矛盾……」

 

 

 ぶつぶつと呟きながら、思考を回転させる。

 そんなに勘が良いほうではないけど、ラティと力を合わせれば閃ける。


 そんな気がした。

 そして、私はさっきから常に《念話》を発動させている。


 私の勝手な思い付きや推理も全て、ラティに伝わっているはずだ。

 あとは私より賢いラティが考察してくれる。

 

 生まれて一日も経っていない筈のラティだが、既に私よりは賢い。

 悲しいような嬉しいような、複雑だ。

 


 『クウヤは探索者や装備のことを知らない……戦闘能力や基礎パラメータはボク達に並ぶほど高い。知識はあるけど能力が足りないのとは真逆』



 皮肉かな?

 でも、その通りだから何も言えない。


 私は少しムッとしたが、今は真面目に考えるべきなのでそれを抑える。

 多分ラティも意識してやっていないのだろう。


 

 「確かに。私の場合は京と宇海から情報を貰ってたけど、クウヤ君はその逆だから……」



 だから?

 どうすればそんな状態になれるの?


 自問した結果、導かれたのは更なる謎だった。

 

 発見されてない強力なスキルでも見つけたのか、稀有な称号でも貰ったのか。

 どちらにせよ、私たちでそれを確認することは出来ない。


 行きつく先は闇。

 クウヤ君の正体を暴くのには至らない。


 

 『装備と探索者ギルド。二つについて知らないのは()()()()()()()()にとって致命的』



 「うん。装備はパラメータを大きく上げるし、探索者ギルドはお金に大きく関わってくる。両方ともプレイヤーにとって必須だから」


 

 装備と探索者ギルドについて知らない。

 これは普通なら初心者ということで納得できる。


 しかしクウヤ君は初心者というには、このゲームに慣れすぎている気がした。

 

 初の戦闘は落ち着いていて油断もせず、初めて扱うはずの剣も的確にボアを切り裂いていた。

 身体の使い方も上手かったし、身長が低いわりには足が速かった気さえする。

 

 

 『クウヤは普通じゃない?』



 「私もだんだんそう思えてきた。もしかしたら、本当に普通じゃないのかもね。例えば、魔物プレイヤーだったりす――



 私が冗談でも一瞬浮かんだ考え。

 それをラティに伝えようとしたとき、それは起こった。



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 称号、〈審理に近づく者〉を獲得。

 消費SP 0で《鑑定》スキルを取得可能。


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 称号、〈心通う者〉を獲得。

 消費SP 0で《召喚術》スキルを取得可能。

 消費SP 0で【共鳴】スキルを取得可能。


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 称号、〈執行者〉を獲得。

 消費SP 0で【断罪】スキルを取得可能。


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 称号、〈審理に辿りつく者〉を獲得。

 消費SP 0で《看破》スキルを取得可能。


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 称号、〈追随者〉を獲得。

 消費SP 0で【下剋上】スキルを取得可能。


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 「えっ!?」



 ――私の目の前にこんなものが表示された。

 

 どれも心当たりがないもの(称号)ばかり。

 なぜ? という思考が私の頭で回っていた。


 が、もっと衝撃的な事が起こる。

 




 「あれ? また日本人? やっぱり日本人って絶対に勘が良いわよね?」





 私の目の前で空間がぐにゃっと曲がったかと思った次の瞬間。

 金髪白人の、いかにも西洋にいそうな美人が現れた。


 

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