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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
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自分の姿


 【ログイン34日目】※ゲーム内時間換算(27日)



 「はい着いたよ」



 ノウズがそう言って立ち止まった場所は古い家の前だ。

 いや、もはや廃屋と言っていいほどのボロさ。

 

 壁は穴だらけで窓枠も曲がっており、屋根に至っては3分の2ほどは剥がれてしまっている。


 こんなところに連れてきて、俺を監禁でもするのか?

 プレイヤーは寄り付かなそうなので、軟禁場所としては適していそうだ。


 

 「ここに何が?」



 ストレートに疑問をぶつける。

 いくら考えても目的が分からなかったからだ。


 

 「この中に用があるのさ」



 我が物顔で廃屋に立ち入る。

 もし夜に来たら……いや、考えるのはやめよう。


 俺も、ノウズに続いて入る。

 

 中は意外と明るい。

 天井が殆ど無いおかげで、太陽の光が入ってくるのだ。

 

 そして、予想通りに汚い。 

 何年も放置された倉庫みたいな感じだ。


 埃みたいなのが堆積している。

 ……というか、埃まで再現しているのは流石だな。


 ノウズは、ある物の前に止まった。


 薄汚れた鏡。

 しかし、その大きさはタンス程ある。


 決して価値のある物には見えない。

 試しに《識別》でも使うか?

 

 

 「ここの前に立ちな」



 未だに状況把握が出来ていないが、とりあえず言われた通りにする。《識別》は使わない。

 俺は鏡の前に立った。


 すると目の前には。


 銀髪翠眼の美少年がいた。

 身長は確かに低いが、その身長に似合う幼くも端正な顔立ち。

 

 銀髪は太陽の光を反射するように煌めいている。

 知性的な翠眼が銀髪とよく合う。


 紛れもなくイケメン。

 本当に自分なのか疑ってしまうくらいの男の子だ。


 

 「この鏡はちゃんと鏡なの。自分の容姿がやっと分かった?」



 「ああ。銀髪が課金なのも納得した」



 銀髪の存在感は凄い。

 すごく綺麗だなぁ。


 しかし対照的に、着ている装備はダサい。


 肌色一色の薄い長袖長ズボン。

 明らかに低ランクの装備だな。


 初心者丸出し。

 これを見れば、誰だって他の装備に変えたいと思うだろう。


 それほどダサい。 

 もう少し、良いデザインはなかったのか?


 今すぐに改善をお願いしたい。

 ……俺と同じことを、幾多のプレイヤーが思ったに違いない。

 

 そして。

 皆、金が貯まったら真っ先に装備を新調したであろう事が分かる。


 それ程までのダサさ。

 逆によくここまでダサいのが作れたな、と感心するレベル。


 まあ、こんな風にボロクソ言ってるが。

 どれだけダサい物を装備していようと、素材がイケメンだと……あら不思議。


 あんなにカッコ悪い初心者装備が、一周まわってお洒落に見えてくるじゃないか。


 長々と語ったが。

 結局のところ、イケメンは狡いよね、という話だ。


 装備は正直、どうでも良い。

 だって俺……イケメンだもん。


 容姿は完璧と言っていい程に整ってるから、後は金さえあればどうとでもなる。


 その金だって、ノウズに情報提供すれば簡単に手に入れられる。それも10万Gという大金が。


 なんて楽な世界だろうか。

 やはり、俺は運がいいというか恵まれてる気がする。


 思えば、最初は魔物を外れだと思っていた。

 しかし、結果的にプレイヤーランキング1位を成し遂げ、数多のプレイヤーを倒している。


 現に人間にもなれた。

 ……これを成功と言わずに何というのか。


 

 「その鏡に触れてみな」



 ノウズは少しだけ、笑いを含みながら言う。

 この鏡に触れることに何か意味があるのか?


 単純にそう疑問を持つが、大人しく鏡に触れる。


 見た目の割に、鏡の感触は滑らか。

 新品同然の触り心地だ。



=========================================


 鏡との接触を確認。

 …… " 試練の鏡 " に挑戦しますか?

 ※本日挑戦可能回数3


=========================================


 

 この表示が目に入る。

 瞬間、俺は驚いて鏡から手を離してしまう。


 すると。

 表示は消え、普通の鏡へと戻った。



 「こ、これは新しく追加された……あの……」



 「試練の鏡。本物だよ」



 俺は咄嗟の出来事に混乱。

 率直な疑問をぶつけるのに精一杯だった。


 その質問に対して、ノウズは冷静に答える。


 なるほど。

 これで、ノウズの情報屋としての信頼値はグッと上がった。


 メンテナンス直後に、新要素である " 試練の鏡 " ……それもこんな分かりにくいような場所の物を知っているのは並大抵の腕前じゃないだろう。


 見つけるのは困難だし、他のプレイヤーに教えてもらうにしても困難なのには変わりない。


 

 『この鏡はちゃんと鏡なの』


 

 さっきのノウズの発言にも、納得がいく。

 恐らくだが、この " 試練の鏡 " だけは鏡としての役割を果たしている。


 姿が水に写らないのは体験済み。

 ならば、同様に鏡にも写らない仕様なのだろう。


 この鏡を除いて、だが。

 そしてそういう意味でも、これを見せてくれたノウズは信用に値すると思う。


 

 「どう? " 試練の鏡 " 体験してみる?」



 「いや、先ずこれってどういう物なんだ?」



 ノウズに言われたが、俺は先ず先ずの知識を持っていない。

 " 試練の鏡 " だって、レイクさんから触りだけ教えてもらった程度。


 齧ってすらいないのだ。

 そんな初見の状態で新要素に臨むのは……不安が大きすぎる。


 俺がノウズにした質問は、当然と言って良いだろ?



 「そうね、簡単に言えば自分と戦うって感じ。私の調べだと……ステータスや容姿は勿論、性格と言動も模倣してくるね」


 「だけど、中々できない体験だから、やってみる事に損はないと思うよ」


 

 かなり凄いな。

 自分そのものと戦う、のか。


 だが、これ。

 俺にとって相性最悪なのでは?


 少し考えれば分かる。

 今まで俺はステータスのゴリ押しで何とかしてきた。


 しかし、俺と全く同じステータスが相手になると……ゴリ押しは絶対に通用しない。

 寧ろ、PS(プレイヤースキル)が勝敗を分けるだろう。


 よって。

 俺にとって本当の意味での試練になり得るのだ。


 お、恐ろしい。

 正に俺の弱点を突くような試練。


 正直、この試練をクリアできる気がしない。

 しかし、だからと言ってやらないのは無い。


 確かに、弱点を克服するのは難しい。

 だが、弱点を克服できないわけではない。


 ならば。

 やらねばならないだろう。


 

 「やってみる」



 「頑張ってー。ちなみに幾ら時間掛けても大丈夫だからね」


 

 ノウズの気持ちの入っていない応援を聞き流し、もう一度 " 試練の鏡 " に触れる。



=========================================


 鏡との接触を確認。

 …… " 試練の鏡 " に挑戦しますか?

 ※本日挑戦可能回数3


=========================================



 俺は試練に挑戦した。

 その瞬間。視界が一瞬、黒に染まった。

 

 




 ☆☆☆☆☆






 目を開ける。


 ここは……闘技場?


 以前街へ侵入した時に見た闘技場、それに似ている。

 いや、闘技場その物と言った方が適切だろう。


 空は暗い。

 雲が掛かっており、太陽が見えない。


 恐らくだが、そういう気候設定なのだ。

 

 しかし。

 闘技場の地面なども実際の物に比べると、少し色褪せている気がする。


 全体的に色素が薄い。

 

 そう思った瞬間、目の前に表示が。



=========================================


 " 試練の鏡 " 内での時間は、EOFに戻った瞬間に自動的に5秒へ短縮されます。なお、この場所の限界滞在時間は18時間です。

 

 モード選択

  ・イージー 既存のステータスの2分の一のステータス

        を持った敵との戦闘。

  

  ・ノーマル 既存のステータスのままのステータスを持

        った敵との戦闘。


  ・ハード 既存のステータスの2倍のステータスを持っ

       た敵との戦闘。


  ・ハードコア 既存のステータス+高度AIを持った敵と

         の戦闘。


  ・ナイトメア 既存のステータスの2倍+高度AIを持っ

         た敵との戦闘。


=========================================


 

 おぉ。

 かなり多彩な遊び方が出来そうだな。

 

 難易度もノーマルからあって良心的だ。

 ナイトメアとか絶対にやりたくないけど。


 しかし。

 5秒に短縮するっていうのは凄いな。


 こっちの世界に18時間いようと、向こうでは5秒で戻ってきたことになるんだろ?

 ……凄すぎではないだろうか。


 時間という概念が根本から覆るような事だぞ。

 まあ、楽しくゲームが出来るなら良いけど。


 俺はそんな思考を巡らせながら、ノーマルを選択した。

 イージーと迷ったが、とりあえずは普通の難易度でやってみる事にしたのだ。


 俺が選択した瞬間。

 目の前、約20メートル先に黒い何かが出現する。


 その黒いのは、最初は液体だったのだがだんだんと人型を形成。 

 そして、色が多少付いた。


 しかし。色が付いたと言っても、この世界と同じように全体的な色素が薄い。


 その何かは、まだまだ形を整える。

 緻密に精密に……髪や顔や体がくっきりと分かる。


 髪色は銀。

 着ている装備は肌色。

 身長は俺と同じくらい。


 そいつが顔を上げた。


 目は緑色の翠眼。

 ……決定的だな。


 こいつは、俺のステータスや容姿を全てコピーした偽物。

 そして、今から俺が戦う相手だ。


 ノウズが言ってたから、こういう事態は予測していた。

 しかし、ここまでそっくりだとはなぁ……。


 思わず溜息をつく。

 誰が好んで自分と戦うというのか。


 そんな俺の心情とは反対に。

 

 薄いサクヤが。

 俺目掛けて突っ込んできた。



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