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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
61/106

新事実


 【ログイン34日目】※ゲーム内時間換算(27日)



 洞窟を出た瞬間。

 俺は本当に自分が小さくなったという事を自覚した。

 

 何故なら、前より木が大きくなっていたのだ。

 

 だがこの場合。

 大きくなったのは木では無く、俺が小さくなっただけ。


 否が応でもそう認識した。


 身長の変化って凄いな。

 こうまで見える景色が変わってしまう。


 何故か感動を覚えながら、街に向けて走り出す。

 これでは、速度も前より遅くなっているかもな。


 しかし、そんな考えは杞憂に終わる。


 確かに身体は小さくなった。

 だがその分、速力が上がっているのだからプラスマイナス0。


 よって、速度は変わらない。

 

 街の城壁に着いてからそれが分かった。

 着く時間に差はなかったからだ。


 俺は、ここで《人化》はしない。  

 

 森エリアから街に入るのは、普通のプレイヤーにとって不自然な行動だと思ったからだ。


 掲示板で注意されてるくらいだしな。

 何より、変に疑われるのは避けたい。


 幸い、俺には《念力》があるので前みたいにこっそりと侵入すれば良いだろう。

 バレる事はない。多分。


 この前は不運にもヒルがいたが、そんなイレギュラーは滅多にいないと思う。

 あんなのが沢山いたら困る。


 侵入経路は以前と同様。

 

 異なるのは壁のスケールくらいだ。

 俺が小さくなったから、城壁が大きく見えてしまう。


 いや、実際に大きいんだけど。

 ……前はそんなに大きいと思わなかった気がする。


 俺は《念力》を発動。


 よし、無事に発動できた。

 久しぶりに使うから少し不安だったのだ。


 宙に浮いた状態のまま、城壁の最上部目掛けて飛ぶ。

 足を使ったブーストも忘れない。

 何気に便利だな、この加速方法。


 あまり時間を掛けずに到達し、そのまま降下。

 

 立ち並ぶ家の陰に隠れるように着地する。

 《隠密》を発動していたので、俺を目撃したプレイヤーはいない筈だ。


 身体が小さくなったと言っても、一般的な狼ほどの大きさ。

 咄嗟に、物陰へ隠れるには大きすぎる。


 早めに《人化》すべきだろう。


 もちろん、洞窟で一度《人化》を試した。

 ぶっつけ本番はリスクが高いからな。


 そして、客観的に自分の姿を見ることが出来ないのは、八瀬と会う時の不安が大きい。

 最悪、封印の仮面を着ける必要があるような顔になるからな。


 ランダムは恐ろしい。

 俺はかなり緊張した。


 そして《人化》を使ってみたのだ。

 

 

 「かなりの美()()です。当たりですね」



 これが開口一番のレイクさんの言葉だ。

 レイクさんが言うなら、本当に当たりだと思う。


 正直、凄くホッとした。

 しかし、目線があまり変わらなかったのは何故だろうか?


 ……単に俺が鈍いだけなのかな。

 そう思い、あまり気にしないでいた。


 ステータスも問題なく引き継がれていたし、大丈夫だ。

 八瀬と会うのに問題はない。


 その思いに微塵も疑いは無かった。


 事実、こうして街内まで来てるのだ。

 そして、今まさに《人化》を発動しようとしている。


 俺は謎の言い訳をしながら、《人化》を発動させる。

 ざっと見たところ周りに人はいないようだし、こんな過疎区域にプレイヤーが寄ってくるとも思えない。


 《人化》での変化は意外と地味だ。

 

 俺が知覚している限り、特別な現象は恐らく起こっていない。

 体が光ったり、煙幕が出たりはしていないのだ。


 そこら辺の詳細はレイクさんに聞かないと分からないだろうが、生憎聞き忘れてしまった。


 だが、街内で使うと爆発!

 なんて事は流石にないだろう。


 ……今の言葉がフラグにならないよう祈る。

 決して、意図してやってないからな。


 当たり前だがそんな事は起こらずに、《人化》が完了する。

 やはり目線は変わらない。


 まあ、いっか。

 人視点で観光も楽しみたいし。


 さて、《地図》で現在位置を把握してと。

 意外とこの街は広いから、迷う可能性は十分ある。


 特に複雑な住宅街とかは、な。


 しかし俺には《地図》がある。

 これさえあればカーナビも世界地図もいらない。


 紛れもなくグー○グルマップだ。

 旅のお供に即決定のスキルだな。


 そんな頼もしい相棒によると、大通りに出るまでにはこの道? を行くらしい。

 これが道なのか家の敷地なのか区別は付かないが……道だと思う。


 さあ! 出発だ!

 来るのは2回目だがテンションは高い。


 何故なら、いつ魔物だってバレるかな? という精神的な負荷が無いからだ。

 

 前とは見える世界が違うぜ。

 八瀬との約束は正解だったかもな。


 

 「おや? こんなとこに初心者(ニュービー)が迷い込んじゃ駄目だよ?」

 


 やっぱ失敗かも。

 何でこう、ヒルといい絡む奴が多いんだよ。


 声的に女性のプレイヤーだ。

 しかし、何故こんなところに……。


 もっと分かりやすい通路を使えよな。

 NPCだって居ないような場所なんだぞ此処。


 言葉を聞いたところ、このプレイヤーは此処で迷ったわけじゃなさそうだ。

 もし迷ってたら、俺の心配をしてる余裕はない筈だからな。


 まあ、だからと言って。

 なぜ此処にいるか経緯は知らないので、断定はできない。

 警戒しておくべきだろう。

 

 そして、声を掛けられたが恐らく俺が《人化》したところは見られてない。

 見られてたらまず声を掛けられないし、知らんぷりされるか後を付けられるかになると思う。


 ここは、相手の言葉通りの初心者(ニュービー)を演じた方が良さそうだな。

 何でも知らぬ存ぜぬで答えよう。


 初心者だから、が言い訳になるから大丈夫。

 余計な発言はしないで、イエスかノーだけで答よう。


 俺は振り返る。

 女のプレイヤーだ。


 あれ? 

 なんか、この人……デカくね?


 

 「その髪いい色ね。キャラメイクで弄ったの?」



 「はい」



 「あなた無課金よね?」


 

 「はい」



 「……ふーん」

 


 よし、イエスだけで返してやった。

 これで会話は直ぐに終わる。


 この女のプレイヤーの身長が高いのは気にしない。

 そういうキャラなんだろう。


 課金か無課金か、その質問の意図はよく分からないが、とりあえず肯定した。

 否定したら、理由を聞かれる可能性があるからだ。


 破綻は駄目だし、不審がられてもアウト。

 

 まあ、そもそも。

 こんな所にいる時点で怪しさは満点だがな。


 のらりくらりと躱すしか無い。


 

 「あなたの髪……銀髪よね?」



 ……ど、どうする?

 ここで安易にイエスと言うのは危険だ。


 ブラフの可能性がある。

 しかし、それを見抜く材料は何も無い。

 

 理不尽な二択。


 イエスかノーか。

 ここで決定されてしまう。


 しかし、だ。


 俺は両方とも答えない選択肢を取る。



 「実は、キャラメイクをランダムで作ったんで自分の外見が分かんないんですよ」


 「良かったら教えてくれません?」



 「……いいよ」


 「銀髪で翠眼。顔は整ってて、身長は()()()くらいだ」



 …………んん??

 聞き間違いかな。


 俺はもう一度聞く。

 自分の耳がおかしかった可能性を信じて。



 「身長はどのくらい?」



 「小学生くらいね」



 「………………」



 な、なるほど。

 レイクさんも美()()って言ってたしな。


 そういうことか。

 通りで目線が変わらないわけだ。


 ということは。

 この女のプレイヤーがデカいんじゃなくて、俺が小さいんだな。


 何ということだ……。

 八瀬との約束があるのに、この身長でどう会えばいいんだ?


 何で身長低いの? と質問されたら……終了だな。

 うわぁ。《人化》は上手くいったと思ったのに、こんな所で問題があるとは。


 やはり、俺の運は無いらしい。

 なんて不運な男なんだ、俺。



 「その反応を見る限り、中身は違うみたいね」


 「ちなみに、銀髪は課金しなきゃ解除されない髪色よ」



 あれ、破綻してる。

 俺は無課金と答えたのに、髪は銀髪らしい。


 更に、ランダムで作った、という発言もした。

 ランダムで銀髪になるのは有り得ないな。

 

 なーるほど。

 初めから破綻していたようだ。


 そして、俺は泳がせられていたのか。

 少しでも情報を引き出そうとしてたに違いない。


 俺は警戒レベルを最大に上げる。

 遅いかもしれないが、今からでも警戒しておくに越したことはない。


 

 「良かったら情報提供してよ。こんなんでも情報屋やってるからね。良い値段で買うよ?」


 

 じ、情報屋? 

 何だそれ。


 初めて聞いたけど。

 どういうシステムなんだろうか。


 

 「あれ、疑ってる? じゃ、ステータス開いて」



 言われた通りにステータスを開く。

 一体何が目的なんだ?


 

 「存在値のとこタップ」


 

 「……ランキングか?」



 「お、話が早いね。そこの6位見てみ?」



 6位?

 6位は……ノウズというプレイヤーか。


 しかし、このプレイヤーがどうかしたのか?

 関係は無さそうだが……。



 「ほれ、ここ見て」



 そう言うと、自分の頭の上辺りを指差す。

 それに従い、視線を移動させる。


 すると。

 そこには、名前(ネーム)ノウズという文字があった。


 ……つまり。

 この女プレイヤーが、プレイヤーランキング6位のノウズって事?



 「分かった? 私が情報屋ってこと」


 

 まあ確かに6位なら、そういう事も出来るかもしれない。

 しかし、ノウズが本当に情報屋という証拠にはならない。


 

 「ふーん、まだ渋るんだ」

 

 「もし君の事教えてくれたら、お金プラス役立つ情報を教える。これでどう?」



 「それを守る保証がない」



 「はあ。じゃ、これ」



 そう言い、面倒くさそうに何かを取り出した。

 だが、取り出したと言っても一瞬で出現したことからインベントリから取り出したのだと思う。

 

 布袋?

 一体何が入ってるんだ?


 疑問に思ったが、それを察したノウズが中身を見せてきた。

 ……それは金貨だ。


 ノウズの手のひらでジャラジャラと音を鳴らしている。

 ゲーム内通貨か。


 考えてみれば金が存在するのは当然だ。

 だが、今まで見たこともなかったので少し驚いてしまった。


 というか。 

 これ、いくらくらいだ?


 

 「前金の1000Gだよ。もし、話してくれたらこれの10倍出そう」


 「1000Gだけでも初心者装備の2ランク上の装備一式揃えてお釣りがくる……悪い話じゃないよね?」


 

 思ったより大金だった。

 これを貰えるのは有り難い。


 しかし、それと同時に疑問もある。


 

 「そこまでの価値があるのか?」



 何故、俺の情報をそこまで欲しがるのかという部分だ。

 1万Gを出してまで得たいという情報。


 そんな大それたものを俺が持っているようには思えない。


 そして。

 この話は俺にとって都合が良すぎるのだ。


 少し話すだけで大金が貰える。

 そんな職業があったら就きたいものだな。


 メリットとデメリット。損得鑑定。

 そこら辺がノウズからは見えない。


 俺が知らないだけでノウズに騙されてる、なんて可能性を考えてしまうのも仕方ないだろ?


 

 「強いて言うなら勘? 君のことが気になるんだよね」


 

 なんか告白みたいな言い方だな。 

 言ってることはよく分からないけど。


 勘で1万G出すのはどうかしてると思う。

 どんだけ金が有り余ってるのか……。

 それとも、本当に勘だけで全財産を投げ出す奴なのかも。


 しかし。

 この話を受けるべきか迷う。


 多少なりとも金は欲しいし、情報も欲しい。

 俺に足りてないのは、情報とかそういう部分だからな。


 八瀬との約束まで、あと2時間ある。


 何故なら、街内を観光するためにかなり早く来ていたのだ。

 勿論、遅刻しないためという理由もある。

 

 時間的余裕はあるのだ。


 この話に乗るのも悪くはないんじゃないか?

 

 だが。

 気を付ける事は二つある。

 

 一つは俺が魔物だって事をバレないようにすること。

 

 もう一つは俺がサクヤという事をバレないようにすること。

 

 両方とも俺にとって致命的な情報だ。

 厄介ごとを出来るだけ避けるためにも、ここは気に引き締めなくてはならない。


 

 「分かった。その話に乗ろう」



 「良かった。じゃ、こっちについて来て」


 

 ノウズはそう言うと、歩き出す。

 どこに行くのだろう?


 そう思いながらも。

 俺はその背中に付いていく。


 

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