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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
2.交流と第一回イベント
55/106

誘い

リアル回です。

区切りがいいか微妙ですが、ここから新章です!


 【ログイン27日目】※ゲーム内時間換算(20日)

 


 ログインしました。


 昨日は本当に大変だったなー。

 草原エリアでレイクさん達を助けたあと、森エリアでプレイヤー達との連戦。


 その時に、レイクさんが瀕死に追い込まれてしまった。

 

 しかし、俺が颯爽と登場してプレイヤー達を一蹴……見事に森エリアを守ることに成功した。


 それは良いんだが。

 

 目の前に表示されたのは、メンテナンス中の文字。

 そして、俺のいる場所は森エリアの洞窟……ではなく、あの白い空間だ。


 メンテナンスの詳細を詳しく見る。

 ……なんと、1週間もメンテナンスが入るらしい。


 更に今日以降、《鑑定》などの全スキルを発動すること自体も叶わなくなり、貴重な夏休みを活用できなくなってしまった。


 えー、何だよー。


 ログインしたら《鑑定》でレベルがどのくらい上がったか見ようと思ったに、すっかり気が失せてしまった。


 昨日、プレイヤー達を撃退した後。

 俺らも夜が遅いので、直ぐに解散してしまったのだ。


 だから、自分のステータスを見るのを楽しみにしてたのに。

 ……この楽しみはメンテナンス後にお預けだな。


 とにかく俺はやる事がない。

 

 いや。

 よく考えたらあったわ。


 


 


 ☆☆☆☆☆






 ログアウトしました。

 俺は残った宿題を片付けるためにログアウトした。


 現在の時刻は午前8時。

 まだ残っているが、1週間もあれば終わるだろう。

 逆に言えば、この期間に終わらせなければならない。


 俺は机に座る。

 ペンを手に取り、ノートを開く。


 さて、チャチャッと終わら――


 

 ――ブブッブブッー。



 携帯が鳴った。

 恐らく着信だが、誰からだ?


 俺は携帯を見る。


 ……加藤か。

 ちょっと予想してたけど、どんな用件なんだか。


 流石に切るわけにもいかない。

 仕方なく俺は応答ボタンを押した。



 「もしもし? 加藤?」



 『おお! ちゃんと出たな、えらいぞ陽紀』



 「で、用件はなんだ?」



 『いや、EOFがメンテナンスだからよぉ……今から遊ばね?』


 

 こいつ……。

 宿題は終わってるのか?


 だが、それを抜きにしても行動が早いな。

 遊びへの情熱はよくわかった。

 


 「おい、宿題は?」



 『は? 何それおいしいの?』



 宿題への現実逃避もよく分かった。

 恐らく、山積みになった課題を見て心が折れたんだろう。


 

 「俺は宿題を終わらせたいんだが……」



 『……んー、じゃ。勉強会ってのはどう?』



 それ絶対に勉強しないやつだな。

 お喋り会になって終わるだけ。


 

 『EOFの情報交換もしようぜ?』



 ふむ。それなら悪くない。

 単純に興味あるし、(サクヤ)についてそれとなく聞きたいこともある。

 

 

 「その話、乗った」


 

 『じゃあ、9時集合で昼飯は各自な』



 「どこ集合なんだよ」



 『……図書館でいいよな?』



 「別にいいぞ」



 『じゃ、決定。俺はあと何人か声を掛けるから、遅れんなよ』



 「了解」



 俺は電話を切ろうとした。

 が、加藤からストップが入る。


 

 『あ、待て!』



 「……何だよ」



 『集まった奴は全員ステータス吐いてもらうから。その時になって忘れた、は無しだからな?』


 

 「…………」



 『おいおい陽紀ぃ? 情報交換って言ったよなぁ?」



 「…………」



 『お前だけEOFの集まりも参加してないよなぁ?』



 ……これが虐めか。

 本人が望んでない事を、圧力を掛けて押し切る。


 恐らく、加藤は俺が何か誤魔化していることに気付いている。

 それを分かった上で、やっているのだ。


 タチが悪いな、全く。



 「……分かったよ」


 

 『HAHAHA! 楽しみにしてるぞぉ?』



 そう言い残すと、電話は切れた。

 ふざけた奴だ。


 その気になれば、お前の事をどうだって出来るんだぞ?

 って言ってやりたい。


 例えば。

 加藤の好きな人が、同じクラスの櫛奈宇海(くしなうみ)って事をバラしたり。


 中学生の暗黒時代の痛〜い思い出を暴露したり。

 

 こっちだって脅しは出来る。 

 まぁ、やらないけど。


 とにかく。

 

 9時から図書館に行かなくては。

 その為にも、色々と支度しないとな。


 朝ごはんだってまだなのだ。

 ていうか、久しぶりに外に出るな……。






 ☆☆☆☆☆






 現在の時刻は8時55分。

 俺は図書館の前にいる。


 あれから色々あり、無事に図書館に行き着いた。

 俺の家から微妙に遠いので、自転車を利用した。


 それにしても暑い。


 自転車を駐輪場に置く。

 早く涼しい図書館に入りたい……。


 少し早歩きで図書館の自動ドアをくぐる。

 その瞬間に感じる冷気。


 最高だ。

 

 その余韻に浸りながらも、辺りを見回す。

 ……加藤達は何処にいるのか。


 ふと、入り口付近に置いてある新刊コーナーに目をやる。

 上から下に目を通す。


 おっ!


 前から読みたかった本を発見した。

 さらに気になっていた本も一緒に置いてある。


 新刊だから、最近有名になった本が多く入荷したのだろうか。

 何にせよ、幸運だ。


 早速この本を借りたい。


 ん?


 おおっ! あの漫画の新刊があるじゃないか。

 うっ、今すぐ立ち読みしたい。


 が、この本も借りたい……。

 手に持った本と、棚に並ぶ漫画の間を視線が交互する。


 よし、立ち読みしてから借りよう。

 

 念の為この二冊は、バックに入れておく。

 決して万引きなどではないので安心して欲しい。


 ふふふ。

 こんなところで巡り合えるとは、図書館も捨てたもんじゃないな。


 俺は記念すべき第1ページ目を開く。

 懐かしい。


 この漫画は少し癖のある画風だったな。

 だが、今はそれが心地いい。


 

 「あ、おーい! 陽紀ー! 遅刻だぞぉー!」



 チッ。

 

 加藤が図書館に入ってきた。

 お前も遅刻だろ。


 目に付きやすい入り口付近だから発見できた漫画だが、今度はそれが弊害となった。

 良いところで邪魔をするな。


 時計を確認する。

 午前9時4分。普通に遅刻だ。


 

 「俺は9時前に着いてたから遅刻じゃないぞ。ちょっと寄り道しそうになったけど」



 「あ、そう。みんな何処にいるんだ?」



 「知らん」



 「は? 陽紀は遅刻してないんじゃないのかよ」



 「そうなんだけどさ。気になってた本があって……ね?」



 俺がそう言うと、加藤は俺の手にある本を見た。

 そして、冷めた表情になる。


 俺の本好きは加藤も知ってるからな。

 納得したと同時に呆れたんだろう。



 「……そうか。とにかく行くぞ」



 「ああ」



 割と大きい図書館を加藤と二人で歩く。

 なんで結局こいつと一緒なんだか。

 

 図書館に人はあまり多くない。

 外が暑くて、人は外に出たがらないし、殆どの若者がEOFに夢中になっている筈だからな。


 そんなEOFがメンテナンス中の今。

 全国の学生は宿題を終わらせようと、机と向き合っている事だろう。


 そんな中、わざわざ図書館まで来る物好きはいない。

 友達と勉強(おしゃべり)会をするやつら以外はな。


 

 「それにしても、誰を誘ったんだ?」


 

 「ああ? 櫛奈(くしな)八瀬(やせ)末貫(まぬき)だよ」



 「え、はぁ?」



 この三人は女子。

 こいつ、女子だけを誘いやがった……。


 前のEOFの集まりには、もっと男が居たはずなのに。

 狙いは絶対に櫛奈だろう。


 こいつ、俺を利用したな?

 適当に呼び出して来るのが、俺くらいしかいないというのが本当の理由だろうが。


 

 「男ばっかじゃ、意味ねーだろ?」



 加藤は誇らしげに言う。

 ふざけんな。


 俺はこの三人と殆ど面識ないんだぞ。

 何を話せと?


 EOFの話題だって言えないことの方が多い。

 何だってランキング1位だからな。


 

 「いや、俺に何を話せと?」



 「そこら辺は俺がフォローするから、ね」



 信用するしかない、か。

 ていうか、なんであの三人が来たんだろうか。


 加藤も面識はそこまで無かったと思うが。



 「どうやって誘ったんだ?」



 「いやー、ダメ元で末貫誘ったらさ。なんか八瀬と櫛奈も来るってなっちゃって。もうホクホクだよね」


 

 「俺を誘ってなかったら一人で行ったんだろ?」



 「あったり前じゃーん、って言いたい所だけど。流石の俺でも三対一は厳しいかな?」


 

 どっち道、利用はされてたんだな。

 まあ、俺もEOFの情報を得るという目的で来たのでお互い様だ。


 一階を周っても、櫛奈達を発見できなかった。

 なので、俺たちは二階に上がる。


 一階に比べて二階はあまり広くはない。

 しかし、机と仕切りが多いため見通しが良くない。


 なので、見つけるのは大変そうだ。


 

 「あ、あれ。櫛奈達じゃない?」



 「え、どれだ?」


 

 そう思った矢先、加藤が難なく発見した。

 階段を登って右手のテーブル。


 しかし、そこに櫛奈達はいなかった。

 代わりに大学生くらいのお姉さんがいた。


 

 「……おい。わざとだろ」



 「見間違え〜」



 絶対わざとだ。

 何が楽しくてこんな事をするのか、理解できない。


 だが、こいつの意味不明な言動は今日に始まった事じゃない。ここはクールに受け流そう。


 若干ムカついたが、自分の感情を制御することに成功した。

 

 引き続き、階段を登って左手から櫛奈達を探す。

 右手は何か嫌だ。


 

 「あれ。加藤君と…………咲良君、かな?」


 

 明らかに加藤ではない声。

 まぁ、加藤が声真似してる可能性もあるが、声がした方向に振り向いた。


 

 「お、末貫じゃーん!」



 末貫京(まぬきけい)

 俺と加藤と同じクラスの女子。


 高校生にしてはかなり低い身長と、凛とした顔立ちが特徴の人物。

 ショートカットで眼鏡をかけており、その容姿から男子の人気は高い。


 性格は至って温厚とは程遠く、思った事はズバズバ言ってしまうタイプ。

 裏表がないので、良い人っちゃ良い人なのだが。


 しかし、そんな性格も男子の一部から人気が高い。

 あとは……めっちゃ強い。


 小柄な体格に似合わず、鋭い蹴りと重い拳を放つ。

 そして。その強さの秘密は誰も知らない、らしい。


 

 「おはよう、末貫さん」



 「咲良君と加藤君、おはよう」



 「おはよう! 末貫」


 

 名前をしっかり思い出してくれたな。

 忘れられてたのは悲しかった。


 しかし、末貫さんと会えたのは幸運だ。

 これで、櫛奈達のいる所に案内してもらえる。


 歩き回るのはもう疲れた。

 早く座りたいのが、今の正直な気持ちだ。


 

 「末貫さん。櫛奈さん達は何処?」



 「あっちの方。あと咲良君、" さん " はいらない。陽芽(はるか)宇海(うみ)も付けなくていい」



 「そうだぞ陽紀。そもそも、お前そんな感じじゃないだろーが」

 


 「分かったよ。末貫さn……末貫、これでいいよな」


 

 「ふふっ……うん、いいよ。」



 なんだ。この恥ずかしさは。

 とりあえず加藤はムカついたから軽く殴っとく。


 末貫は歩き出す。

 櫛奈達のところに行くんだろう。

 

 その小さい背中についていく。

 

 あー、俺のステータスどう言い訳しようか。

 実はまだ考えてない。


 EOFの話題にはどうやっても必ずなる。

 その時に、加藤から俺のステータスについて聞かれるのも確実。


 上手い言い訳はないかな?

 知らんぷりして勉強するのも手だが、末貫や櫛奈から聞かれたら答えざるを得ない。


 得策では無いだろう。

 まぁ、だからと言って良い方法があるわけじゃないのだが。


 なるようになる。

 この精神でいくか。


 深く考えないでノリで乗り切る。

 

 男子だけよりは女子もいた方が、加藤からの口撃も減るので良い。

 

 ……出来るだけ勉強してよ。



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