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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
1.出会いと成長
54/106

終戦




 【ログイン26日目】※ゲーム内時間換算(19日)

 side:???



 パラメータとスキル。

 確かに両方ともプレイヤーにとって、生命線と言っても過言ではない要素。


 それはどのゲームにおいてもそうだ。

 完全スキル制、完全レベル制のゲームは少なくない。

 今では最も慣れ親しむシステムの一つだろう。


 そんな数多くの優れたゲームシステムの中から、このゲームの運営……則ちEOF運営が採用したシステムは、パラメータ、スキル、レベルが全て存在するもの。


 プレイヤーの人としての個性を表すには、レベルやスキルといったシステム単体では足りなかったのだ。

 よって、全部乗せというシステムを組んだ。


 しかしそうなると、どこに重きを置くかが重要になる。

 そこでEOF運営はそれぞれのシステムに、現実世界の人間に倣った役割を与えた。


 レベルは経験。パラメータは身体能力。スキルは才能。

 そして、称号は経歴。

 

 こう分類することで、一つの値が突出してもバランスが保たれる……筈だった。

 それは、EOF運営が " 存在値 " というプレイヤー個人の、世界に与える総合影響力の目安を実装することで明らかになる。


 存在値77。

 このゲームが始まって3週間弱経つが、この数値に行き着くのはほぼ不可能。


 ほぼ、という表現をした理由は簡単。

 サクヤというプレイヤーの存在値が77だから。


 なんと、ランキング2位との差は30。

 明らかに突出した強さだ。


 何故、ここまで強いのか。その理由は簡単。

 偶然か必然か。数々のレア称号を自力で獲得しパラメータの大幅上昇補正を受け、高難易度クエストをソロクリア。

 

 その結果、更にスキルやパラメータが強化されたのだ。


 EOF運営の意図とは真逆の成長を見せるサクヤ。

 当然、EOF運営もその存在に気付いた。


 しかし、EOF運営は何も出来ない。

 下っ端にはその権限がないからだ。


 " 自由 " をコンセプトにしたゲーム。

 そう簡単にプレイヤーの個人情報と言ってもいいステータスは、EOF運営だとしても観覧する権限はない。


 増してや、個人の弱体化などは持っての他だ。

 余程、上位の権限がないと許されないこと。

 それ程までにEOF運営上層は " 自由 " に拘っていた。


 だが、その他にも理由はある。

 余りにも少ない魔物プレイヤーの人口増加という思惑だ。


 その為にも、サクヤには目立ってもらわなくてはならない。仮に、ゲームバランスを崩壊させる可能性があるとしても。


 そういう意味でも、今回の魔物vsプレイヤーの戦いはEOF運営にとって好都合だった。

 どちらが勝っても、魔物プレイヤーの強さ(メリット)を宣伝出来る上に、人種プレイヤーの意識改善にも繋がる。


 EOF運営は運営としての最大の権限を使って、この戦いを見ていたのだ。

 

 レイクの奮闘からロイの武技。

 ブランの指揮やノウズの支援。


 そして、サクヤの参戦でEOF運営の興奮は最高潮だった。

 

 ……だが、EOF運営はこの戦いの結果を既に分かっていた。それ程までにサクヤというプレイヤーは異質で最強。


 サクヤ本人は気づいていないが、パラメータの差というのは本来、大差つかないように調整されているのだ。


 レベルが1上がるごとに、各パラメータが1上がる。

 これが一般的な上昇の仕方。


 ここに《筋力強化》などのスキルがあれば、筋力のパラメータ値が一定レベルごとに1の上昇補正を受ける。


 どう頑張っても、同レベルのプレイヤーのパラメータ差が二倍などになる事はない、筈なのだ。


 パラメータとは身体能力。

 最も単純で簡単で分かりやすく強力なものだ。


 速力が相手の倍あるならば、まず全ての攻撃を避けられる。

 そして、全ての攻撃が当たるだろう。


 いくら優秀なスキルを持っていようが、発動しなければ意味はない。

 もし。当たれば即死のスキルが有ろうと、当てられなければ意味はない。


 筋力を超強化するスキルを使っても、倍以上の筋力を持つ相手には敵わないのだ。


 シンプル故に凶悪。

 サクヤはロイのパラメータの数倍。


 戦力差は絶望的。

 如何に固有(ユニーク)スキルを持っていようと勝目は無い。


 もし、今のEOF運営にサクヤのパラメータを操作出来たなら。直ぐに全ての値を今の十分の一にするだろう。


 だが、それは叶わない。

 そんな権限があったとしても、もう遅いのだから。


 

 サクヤは警戒している。

 ロイの使った武技を気にしているのだ。

 

 確かに厄介なスキルである≪双剣乱舞≫。


 しかし、サクヤの力からしてみれば雑作もない。

 圧倒的な速力で接近し、圧倒的な筋力で粉砕すれば終わる。


 いらない警戒だ。

 これも、サクヤが自分自身の強さを認識していない証拠。

 

 サクヤが走った。

 速力368が駆ける。


 サクヤは圧倒的に対人戦の経験が少ない。

 なので、レイクを圧倒したロイのことを警戒している。


 よって、速力368を全力で活用したのだ。

 そしてその結果、サクヤ以外のプレイヤーからはサクヤが消えたようにしか見えなかっただろう。


 しかし、当の本人はその事にも気付かない。


 更にサクヤは筋力365を容赦なく振りかざす。

 ロイに直撃。


 流石の【超感覚】も認識すら出来ない攻撃を避けることは出来ない。

 ロイのHPを200ほど削った。


 ロイの残りHPは約100。

 あと一撃で街に戻ることとなる。


 そして、それは案外早い。

 サクヤが追撃を仕掛けた。


 避けられない。

 次の瞬間、ロイはポリゴンとなって散る。

 プレイヤーランキング4位が脱落。


 残るプレイヤーは13人。

 この内、サクヤに対抗し得るスキルを持つ者はいない。


 よって、この時点でサクヤの勝ちは確定したようなもの。

 過程がどうであれ、結果は変わらないだろう。


 

 『全員、総攻撃だ!』


 

 《念話》を持つブランが指示を出す。

 人数が減らない内に、少しでもダメージを与える作戦だ。


 しかし、もう遅い。

 その作戦を実行するのに、プレイヤーの人数が減りすぎている。

 

 ブランの敗因を挙げるとしたら、それは慎重になり過ぎてスキルの使いどころを誤ったこと。

 早い段階でレイクを仕留めるべきだったのだ。


 森エリアのエリアボスに固執し過ぎた結果、本来なら倒せたレイクに十数人のプレイヤーが倒された。

 レイクの思惑に上手いこと乗せられたのだ。


 ブランの指示を受け、プレイヤー達は各々の切り札……からはワンランク下がる攻撃を繰り出す。

 

 勝てないと分かった時点で、自分の切り札を晒す真似はしない。

 ここには、ランキング上位のプレイヤーが揃っているから尚更だ。


 対するサクヤは、どの順に攻撃するか迷っていた。

 魔法使いを狙うか、前衛を狙うか。


 長考の結果、選んだのは魔法使い。

 サクヤは速力を駆使し、魔法使いの裏を取る。


 プレイヤー達が放った攻撃は見事に空振った。


 《爪撃》。

 元々、HPが低めの魔法使いは一撃でポリゴンと化す。


 一人倒したらもう一人。

 一人倒したらもう一人。


 仲間を巻き込む恐れがあるため、強力な範囲系魔法を使えない魔法使い達。前衛のフォローも遅れた。


 ほぼ一撃。 

 一桁単位のHPで生き残ったプレイヤーも、次の攻撃でポリゴンと化す。


 あれほど落ち着いていた空気が一転、混沌(カオス)となる。

 もはや、ブランの指示も意味を為さない。


 魔法使いが駆逐され、遂にサクヤの手は前衛プレイヤーにも伸ばされる。

 

 身体が大きく攻撃が当たりやすい筈のサクヤに、全く当たらない前衛プレイヤーの攻撃。

 

 武技、スキル、魔法、全ての手段が通じない理不尽。

 全滅はもう時間の問題。


 一人、また一人とポリゴンに変わる。

 

 プレイヤーランキング2位のエリカも、弓の射程を活かせない近距離に近付かれれば、その武器も邪魔な長物にしかならない。


 プレイヤーランキング3位のブランも、魔法が通じずスキルが意味を為さなければ、どうという事はない。


 リリもメルも成長したが、まだまだ。

 一矢報いることなど、夢のまた夢。


 

 こうして、後に " 白騎士戦 " と呼ばれることになる戦いは、" サクヤ " というプレイヤーの圧倒的な力を認知させられる形で幕を下ろした。


 " 黒狼(サクヤ) " と " 白騎士(レイク) " と " 歪渦(マカ) " 。

 この三人が、こう呼ばれる日も遠くない。


 そして。

 その正体が露見するのも、そう遠くない。

  

 しかし、今はまだ介入しないでおく。

 いつか接触する機会があれば、その時。


 さて。スキルを解除しようか。

 満足するものは見れた。


 データも沢山取れたので、このゲームの改善に活かすとする。

 唯一の誤算は、あのエリアボスくらいだ。

 

 だが、ネタバラシはまだ早い。


 俺は外へ出た。


 そして、俺が存在した履歴を全て削除。

 

 これで叱られる事はない。


 俺の存在がバレる事はないのだから。


 

 

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