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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
1.出会いと成長
53/106

進攻する者

かなり短めです。


 【ログイン26日目】※ゲーム内時間換算(19日)

 side:とあるプレイヤー


 

 武技スキル。

 それは強力な魔物に対抗するために人間が編み出した技術……というのが運営の公式設定だ。


 この設定が公式のホームページに追加されたのは、一週間前のメンテナンスが終わった直後らしい。

 

 気づく者は気づいたが、プレイヤーの大半は知らない情報だ。

 幸運にも俺らのパーティには、こういう情報をこまめにチェックするカムイという便利な奴がいる。

 

 まあ、カムイが居ても居なくても武技スキルの存在には気づいていた。何故なら、俺が取得していたからな。


 俺が最も使用していたスキル、《剣撃》のスキルレベルが25に達した時、≪加速≫という武技スキルが使えるようになった。


 その効果はシンプル。

 任意に発動することで、1秒だけ速力が1.5倍になるのだ。


 聞いただけではイメージし辛いが、実際に体験してみるとその違いは、武技スキルを取得する前の何倍も強いことが分かる。


 単純に突進するだけで大きなダメージを与えることが出来るし、緊急回避にも使える。インターバルに15秒必要だが。

 しかし、上手く使うことで臨機応変な立ち回りが可能になる。

 

 そして、武技スキルには更に続きがある。

 それは《剣撃》がスキルレベル50に達し、《剣技》に進化した時に取得した。


 ≪魔装双剣召喚≫と≪双剣乱舞≫だ。

 どちらも初めて見るスキル。


 掲示板やネットにも載っていないスキルだ。

 このスキルを試しに使ってみた時は驚いた。


 禍々しい剣が俺の手にいきなり現れたのだからな。

 しかも、魔装というだけあって様々な特殊能力があった。


 初めて召喚した魔装剣の能力は、恐らく斬撃を飛ばすというもの。

 剣を振ると、たまたま前に居たカムイにダメージが入ったのだから間違いないと思う。


 そして。何回か検証したことで、召喚される魔装剣の能力は毎回ランダムということが分かった。

 

 斬った対象が凍る剣や燃える剣、相手の防力を無効にする剣、速力が上がる剣や筋力が上がる剣、果てには全HPと引き換えに対象のHPも全損させるという効果まであった。


 使い勝手が良いのか悪いのか、強いことには強いのだが扱いが難しい武技スキルだった。

 しかし、問題はもう一つの武技スキルにあったのだ。


 ≪双剣乱舞≫とは、両手に一本ずつ剣を持つ状態……乃ち双剣でしか発動しない武技スキルだ。

 おまけに、片手に≪魔装双剣召喚≫で召喚された剣があることが条件というスキルだ。


 二つの剣を一度に操らなければならない難しさは勿論、予測不可能で厄介な魔装剣に振り回される難易度は鬼。


 いくら《剣技》で剣の扱いに補正が入るとはいえ、限度というものがあると≪双剣乱舞≫の練習中に何度思ったことか。

 

 だが、この武技スキルを諦める訳にはいかなかったのだ。

 何故なら、その難易度に見合った効果があったから。


 ≪双剣乱舞≫の発動中。毎分全パラメータに1%の補正が入り、相手の攻撃を防御すると3%、相手に攻撃を当てると5%の補正が入る。しかし、≪双剣乱舞≫の発動中にHPが1%以上減ると強制的に武技スキルは全て解除され、パラメータの補正は0%になる。


 ある人に《鑑定》してもらった結果、分かった効果がこれだ。

 こんなチートとも呼べるスキルがあるのに、俺を上回るプレイヤーが三人いるのだ。


 本当に尊敬の念しか湧かない。

 是非ともフレンドになりたいものだ。



 今回、ブランさんやエリカさんとフレンドになるために参加したといっても過言ではないこのエリアボス戦。

 

 これだけの高レベルプレイヤーが揃えば、エリアボスと言えど簡単にとは言わないが倒せると思っていた。


 しかし、その予想は大きく間違っていた。

 現実ではたった一人の白騎士によって、30人余りのレイドが壊滅させられかけている。


 支援に徹していたメルも攻撃に参加するほどに追い込まれていた。それは俺も例外ではない。


 あのエリカさんの武技スキルが確かに鎧を貫いた。

 しかし、今ではその跡も残さずに穴が塞がっている。


 

 「ロイくん。対人戦においてならあんたの武技が一番有効だろ? 少なくとも私とアイツはそう思うけど」

 


 ノウズさんが話しかけてきた。

 あんたの武技、とは間違いなく≪双剣乱舞≫と≪魔装双剣召喚≫のことだ。

 

 俺が《鑑定》を頼んだのがこの人なのだから、知っていて当然の事。しかし、アイツとは誰を指しているんだろうか。


 気になったが、敢えて聞かない。

 さっきの言葉には、俺があの白騎士と戦えという意味が込められていたからだ。


 ノウズさんに言われちゃ断れない。

 プレイヤーランキングは俺より下だが、その力は明らかに俺以上だろうから。


 

 「分かりました。頑張ります」



 「お、その調子だぞ」


 

 この状況でも焦った様子は皆無。

 仲間の時にこれほど頼もしい人はいないだろう。


 ……話が逸れたな。

 今は白騎士に集中する。


 化け物じみた動きを見せる白騎士だが、HPは減っている。

 傷は完全になくなったが、完全回復したわけではない筈。


 十分に勝機はある。

 そして、今回は出し惜しみしない。


 

 「≪魔装双剣召喚≫」


 「≪双剣乱舞≫……【超感覚】」



 切り札となる武技スキルを発動し、ノウズさんにもまだ見せていないスキルを発動した。

 使った回数が少ないスキルだが、大丈夫だと思う。


 ゆっくりと歩み寄る。

 白騎士は斧を片手に持ち、もう片方の手には何も持っていない。


 今まで見たことのない珍しい構えだ。

 だが、その構えが見掛けだけじゃないことはもう分かっている。


 メルが支援魔法をかけてくれた事もあり、準備は万全。

 これで負けたら言い訳は出来ない。


 俺は突進した。

 ただの突進ではなく≪加速≫を使った突進だ。


 右の剣を突き刺す。

 これを避けることは出来ない。白騎士は受けるしか無い。


 だが、その予想は早くも裏切られる。

 俺の突進を読んだような綺麗なパリィ。


 俺は全速力だった事もあり、動きが止まってしまう。

 白騎士は流れるように反撃してきた。


 ギリギリ、左の魔装剣の防御が間に合う。

 そのまま鍔迫り合いに持ち込む。


 純粋な筋力で俺に勝ち目はない。

 なので、一早く右の剣で白騎士を斬る。


 すると、予想通り俺から距離を取った白騎士。

 だが、ホッと息をつく暇もなく白騎士が突進してくる。


 は、速い!

 咄嗟にジャンプ。


 そして、そのまま剣を振り下ろす。

 呆気なく躱された。


 躱されれるどころか追撃までしてくる。

 危険を感じ、双剣での防御に変更。


 今だけはこの魔装剣の効果に助けられたらかもしれない。

 恐らく、この魔装剣は決して壊れる事のない魔装剣。

 かなり地味で使いどころが限られる剣だ。


 しかし、今の状況なら良い効果だ。

 壊れない=必ず攻撃を防ぐ事が出来るのだからな。


 そこからは似たような攻防が続いた。

 俺は絶対に攻撃を受けないよう、細心の注意を払った。


 それが功を為す。

 1%、3%が積み重なる。


 段々と攻撃が防御しやすくなり、攻撃を当てる事も可能になる。

 パラメータの差が埋まり始めたのだ。


 塵も積もれば山となる。

 この武技スキルはこの言葉を表しているようだな。


 確実に、着実に勝利へ向かっているのが分かる。

 気を抜かずに剣を操る。


 大事なのは決して欲張らないこと。

 そして、深追いしないことだ。


 だからこそ反応が遅れた。


 今まで見せなかった、後ろへの大きな後退。 

 白騎士の誘いとも取れる行動に身体が止まってしまった。


 深追いはしない。

 確実な勝利の道を優先したのだ。


 その結果。

 俺は許してしまった。


 白騎士が斧を地面に突き刺すという行動を。


 そして。

 その結果起こる事を。


 この戦いにおいて、この行動が意味することを。

 俺はまだ知らなかったのだ。


 次の瞬間。



 ――何かが現れた。


 

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