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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
1.出会いと成長
51/106

開戦②


 【ログイン26日目】※ゲーム内時間換算(19日)

 


 それは降り注いだ。

 白銀の鎧を、黒焦げに変えようと。


 草原エリアで俺が食らった、あのファイヤウェーブだ。

 それが合計5個、レイクさんに降り注ぐ。


 範囲は広い。 

 回避はもう厳しいだろう。


 流石にHPが500あっても、100は持ってかれそうな勢い。

 思わず顔を蹙める。


 レイクさんは斧を両手で持つ。

 もう合図なのか?


 レイクさんは柄の中心を持った。

 何をするつもりなのか分からない。


 すると。

 斧が回転した。


 速い。残像が見えるほど速い。

 高速回転させた斧を、ファイヤウェーブに向ける。


 ま、まさか。

 次の瞬間、ファイヤウェーブと斧が衝突する。


 そして、その炎が一瞬にして掻き消される。

 五重になったファイヤウェーブが、まるで風前の灯だった。


 レイクさんが斧の回転を止め、片手に持ち直す。

 その動作も、さっきと比べて華やかに見える。


 レイクさん、本当に何者なの?

 今すぐ《念話》で聞きたい。


 そんな事を思った束の間。

 間髪入れずに、二人のプレイヤーが斬りかかる。


 剣と槍を使う二人だ。

 それぞれが同じタイミングで武器を振り下ろす。


 レイクさんはその攻撃を二つ纏めて難なく受け流した。

 その流れに沿うように、がら空きとなった二人の身体に斧を三閃。


 二人のプレイヤーは一瞬硬直し、ポリゴンとなって爆散する。

 これで残りは30人。


 その30人も、レイクさんの動きを見て完全に動きを止めている。

 呆気なく二人が倒されたのが、信じられない気持ちなのだろう。


 俺もそうだ。

 正直、俺よりレイクさんのが強いんじゃないか?


 数値的なステータスは確かに俺の方が上だが、プレイヤースキルという面では圧倒的にレイクさんが上だろう。

 それに比べたら俺はゴリ押しだ。


 レイクさん、マジで何者?

 今の日本で斧を容易く振り回せる人なんているのか?

 ちょっと、聞いてみよ。


 俺が5秒ほどくだらない思考をしていると、プレイヤー達が動いた。

 見た感じ、会話をしているようには見えなかったが《念話》などのスキルを誰かが持っているのかもしれない。


 レイクさんに向かっていくのは盾を持ったプレイヤー。

 中途半端な前衛だと、人数を減らされるだけだと判断したのだろう。


 まぁ、その盾も純魔銀製の斧にかかれば、一撃で粉砕されそうだが。

 そんな俺の予想とは反対に、盾はレイクさんの攻撃を防いだ。


 だが、あまりの衝撃に盾を持ったプレイヤーは次の動きに移れない。衝撃までは防げなかったようだな。


 その間に、レイクさんは次の攻撃を繰り出す。

 斧を、盾の守りが届いていない横腹へ水平に振る。


 また一人減ったかな、と思った。

 しかし、盾持ちプレイヤーの横から矢が飛来する。

 レイクさんから見えない方向から撃たれた。


 既に斧を振っているレイクさんに回避は出来ない。

 そう思っだが、レイクさんは攻撃をやめて身体を捻る。


 側を通過しようとする矢を、斧を持っていない左手で掴んだ。

 身体の捻りを利用して矢を投げる。


 その方向には身長が低めの女の子がいる。

 まさかの不意打ちに驚いた様子だったが、矢を躱した。


 

 「ファイヤボム!」



 「ウォーターカッター!」


 

 「パラライズ!」



 「ロックハンド!」



 「エアカッター!」



 体勢を元に戻したレイクさんだが、その前にはもう盾を持ったプレイヤーはいない。

 そして、待ってましたとばかりに魔法が降り注ぐ。


 これは回避できない。

 斧を回そうとしても遅いし手遅れ。


 確実に当たるかと思えた。

 だが、こういう時のためにマカがいるのだ。


 レイクさんの鎧の隙間、本当に少しの隙間から液体(スライム)が外に出る。

 そして、レイクさんを覆うほどに肥大化した。


 魔法が激突。

 それは全て飲み込まれる。


 直ぐに鎧の中に戻り、何事もなかったかのように居なくなる。

 白銀の鎧にはまだ傷一つ付いていない。


 結構大規模な魔法だったのに気の毒だ。

 やはりマカも壊れてるな。


 でも、レイクさんの方がヤバイ。

 明らかに見えてない位置から飛んできた矢を、かなりスピードも出ていたのに片手で掴むのはどう考えても人間業じゃない。


 これは本物の魔物だな。

 ステータスは魔物以上でPS(プレイヤースキル)も人外。


 一体誰がこんな化け物に勝てるのでしょうか。

 30人のプレイヤーも再び唖然としている。


 

 『マカ、大丈夫か?』



 俺はその隙に《念話》でマカに連絡する。

 念のため、マカのHPが減っていたりしたら良くないからな。


 それに、《念話》でしかマカの状態が分からない。

 レイクさんの鎧に阻まれて《鑑定》が出来ないのだ。


 

 『大丈夫よ。1もHPは削れてないわ』



 《無限吸収》は伊達じゃない。

 文字通り全て吸収したようだ。


 マカと同様に、レイクさんもHPは減っていない。

 30人に突っ込まずに、一人一人と戦っていれば消耗は少ない。


 勝ちの目は全然あるのだ。

 これは予め決めていたことなので、レイクさんは動かない。

 プレイヤー達が唖然と固まっていても、だ。


 レイクさんは斧を構える。

 斧を片手で持って、もう片方の手は空けている。


 かなり大きい斧だが、片手で持つのか。

 やはり300の筋力は凄まじい。


 

 「作戦は伝えた通り! 決して深追いするな!」



 漸くプレイヤー達が動き出す。

 再び魔法を発動。



 「「ファイヤアロー!」」



 「「ウォーターアロー」」



 「「ブリーズアロー!」」



 「「ソイルアロー!」」



 それぞれの属性の同魔法がレイクさんに向かう。

 その後ろから、魔法を追いかけるように武器を持ったプレイヤーが続く。


 盾、剣、槍、短剣、鎚などを持っている。

 盾が先頭だ。


 レイクさんは自分に向かってくるプレイヤーを一瞥すると、意識を魔法に向ける。


 先程のファイヤウェーブなどの魔法と比べると、やはり速度が速い。また吸収されないように、マカが肥大化する前にレイクさんに当てようとしているのだろう。


 だが、マカを使わずともレイクさんは軽々しく避けた。

 器用に身体を傾けて、全ての魔法を躱しているのだ。


 これまた人間の体捌きじゃない。

 その重そうな鎧でも、よく動けるものだな。


 速力300も伊達じゃないようだ。

 俺がそう思考している間に、レイクさんは一度も魔法に当たることなく避けきった。


 しかし、まだ終わりではない。

 魔法の次は物理攻撃。


 盾を持ったプレイヤーがレイクさんに近づく。

 さっきと同じプレイヤーだ。


 きっともうHPは回復しているのだろう。 

 僧侶っぽい女の子に回復してもらっているところを見たからな。


 レイクさんは斧を突き出す。

 盾の正面を突く攻撃だ。本格的な武器破壊が狙いなのだろう。


 恐らく、プレイヤーが正面から斧を受け止めれば盾は壊れる。

 だが、プレイヤーもそんなに甘くない。


 レイクさんが突いた斧を受け流した。

 本来、盾は攻撃を受けるもの。そういう認識を覆してきたのだ。


 予想外の流しに一瞬動きが止まるレイクさん。

 その隙を逃さずに、盾を持ったプレイヤーが動く。


 レイクさんの頭目掛けて上段回し蹴り。

 重そうな盾を持っているのに綺麗なフォームだ。


 素人が出来る域じゃない。 

 リアルで何かやっていたのだろうか。


 だが恐らく、レイクさんも素人ではなく玄人。

 斧を受け流され体勢を崩してもおかしくないが、レイクさんは冷静に対応する。


 自分の頭に向かってくる脚を、斧を持っていない左手でガードする。

 頭はクリティカル判定がありそうで怖いからかな?

 

 このゲームに急所とかあるのか分からないが、もしあるなら頭は不味いだろう。

 HPが減るのは確実。しかし、レイクさんは腕で受けたのでそれ程減っていない筈だ。


 だが、プレイヤー()の攻撃は止まっていない。

 レイクさんは斧を受け流され、左手もガードしている。


 そんな状態で。

 盾を持ったプレイヤーの後ろから現れた、槍を持ったプレイヤーと剣を持ったプレイヤーの攻撃を避けれるはずが無かった。


 それぞれの攻撃がレイクさんの胴に命中した。

 それだけでは止まらず、続けて攻撃が当たる。


 だが、その攻撃はここまで。

 レイクさんは左手でガードしていた脚を掴み、その筋力にものを言わせるように盾プレイヤーを、槍と剣を持ったプレイヤーの方向に投げ飛ばす。


 その結果、空中で身動きが取れない盾プレイヤーと衝突した二人のプレイヤーは木にぶつかる。

 かなりの勢いだったので、HPが減ったのは確実。


 漸く両手が自由になったレイクさん。

 だが、そこに余裕は無い。三本の矢が迫る。


 さっきの矢より速度が速い。

 これを掴むのは無理だろう。


 レイクさんもそう判断したのか、矢を斧で受けた。

 一本、二本と危なげなく弾く。


 そして三本目を受け――

 

 ――た瞬間、矢が爆発した。

 爆発はレイクさんの鎧を巻き込む。


 そこへ追い討ちをかけるように、二本の短剣が投げられる。

 しかし、爆発でレイクさんの姿は見えない。


 あまり効果的とは言えない攻撃だが、何が狙いなのか。

 二本の短剣は、おおよそレイクさんが居るであろう位置に飛んでいく。


 次の瞬間、更なる爆発がレイクさんを襲った。

 あの短剣が爆弾のような役割を果たしたのか?


 だが、爆発効果のある短剣なんか作れるのだろうか。

 俺の《錬金術》で火薬を作れない事は無さそうだが、それを短剣に合成して爆発する短剣を作るのは難しそうだ。


 まず、短剣が作れないし。

 火薬の素材も分からない。


 本当に何処から入手したのか。

 爆発する短剣に爆発する矢。

 なかなか一筋縄ではいかないな。


 爆発が収まると同時にレイクさんを《鑑定》する。

 現在のHPは140。

 

 あの爆発でHPを150近く削られた。

 不味いな。また爆発を食らったらその瞬間に終わり。


 白銀の鎧にも傷が付いており、状況が悪いのは一目瞭然。

 もう、斧で攻撃を受けるのはやめた方が良いだろう。


 というか出来ない。

 あの矢と短剣は危険すぎる。

 

 

 『レイクさん、大丈夫ですか?』



 一応、助けがいるかどうか聞く。

 レイクさんが倒されてしまっては元も子もないからな。



 『大丈夫です。ようやく身体の使い方に慣れてきました。もうあのような攻撃は受けません』



 何とも頼もしい返事が来た。

 あんな動きが出来たのに、まだ身体の使い方に慣れてなかったらしい。


 レイクさんがパラメータを完全に使えるようになったら、どんな動きが出来るようになるのか。

 もはや想像がつかない。


 だが、この戦いがまだ終わっていないことは確かだ。

 いや、レイクさんが漸く自分のパラメータに慣れたのだ。


 本当の戦闘はここからかもしれない。


  

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