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遊戯開始  作者: 羽ぐいす
1.出会いと成長
49/106

進攻する者達


 【ログイン26日目】※ゲーム内時間換算(19日)

 side:とあるプレイヤー



 「壮絶なメンツだなぁ」



 俺はもう何回目か分からない台詞を吐く。

 無意識かどうかも分からない。


 あの森エリアを進んでいるのに、こんなに無警戒でいいのかと思うが、他のプレイヤーが周りを警戒しているので問題ない。


 人任せだと思うかもしれないが、こういうのはその分野が得意なやつに任せたほうが良い。

 役割分担、適材適所というやつだ。


 事前に打ち合わせもしてある。

 それに逆らうのも駄目なのだ。


 

 「何言ってんだ。お前もその一人だろ?」



 俺のパーティメンバーであり、リア友でもあるカムイが笑いながら言う。随分こいつも余裕あるな。


 ふと周りを見るが、俺達以外に談笑してるプレイヤーはいない。雰囲気が引き締まっているのは良いが、緊張し過ぎなのも良くないだろ。


 そう思ったが、俺が気にすることでもないと思い直す。

 俺は楽しめれば良い。


 

 「だってよー、あのエリカやブランと歩いてるんだぜ? 一人のプレイヤーとして感動しないわけないだろ」


 

 「よく言うよ。プレイヤーランキング4位のロイさん?」



 うるさいぞ、プレイヤーランキング14位のカムイさん。

 俺の方が上なんだから敬えよ。


 俺は自分より上を敬ってるぞ?

 例えば……サクヤさんとエリカさんとブランさんとノウズさんとか。


 有名プレイヤーは好きだ。

 しかも、その内の3人がこの場にいる。


 嬉しすぎて、フレンド登録をお願いしたくらいだ。

 エリカさんには断られたけど。


 この時点で俺はすでに満足。

 これから森エリアのエリアボス討伐をするけど、あんま興味ないかも。


 

 「そこ、うるさい」



 ムッとして、声がした方向を見ると弓を持った女性がこちらを向いていた。

 エリカさんだ。



 「いや、すいません」



 プレイヤーランキング2位には媚びとかないと。

 後が怖いし、仲良くしたい。


 現在、レイドを組んでいる人数は32。

 パーティが6のソロが4人だ。


 6人パーティが二つ、5人パーティが二つ、4人パーティと2人パーティが一つずつ。


 ソロは、エリカさんノウズさんブランさん。

 あと、よく分かんないやつ。


 ソロで攻略が出来るのは、皆レベルが高い証。

 そうでもなきゃ、ハイリスクハイリターンなソロなんてやっていないだろう。


 やはり凄い。

 これが俺とランキング上位者の違いか。


  

 「いやー、森エリアなんて初めて来たけど……思ったより鬱蒼なところだねー」



 「ちょっとリリ! 他の人が静かにって注意されてたでしょ?」



 元気のいい子達だな。

 見た感じ、中学生くらいの子達だ。


 確かこのゲームって中学生はやって良いはずだったよな。

 ギリギリの年齢だった気がする。


 だが、あまり見かけたことはない。

 このゲームをやるために必要なVR本体が、結構いい値段するのだ。


 一般的な中学生のお財布では賄えないだろう。

 余程お金に余裕があるのか?


 まぁ、俺が気にすることでも気にかけていい事でもない。

 

 しかし、この状況で話をするとは肝が座っているな。

 俺がエリカさんに怒られたばかりだというのに。


 

 「おーい、君たち中学生?」



 俺は声をかけてみた。

 決して、出会い目的に声をかけたわけじゃない。


 単純に気になったのだ。

 よく見るとこの子達、装備がやたら高価だ。


 ランキング上位プレイヤーしか呼ばれないこの場にいる時点でかなり強いのは確かだが、戦士っぽい方の女の子が持っている剣、下手したら俺よりも良い装備かもしれない。


 魔法使いっぽい子も見たことない装備を着ているようだし。

 俺が知らないだけで、かなり有名なプレイヤーなのか?


 それを確かめるためにも、俺は声を掛けたのだ。


 歩きながら、その子達の方へ近寄る。

 かなり端の方だ。


 戦士っぽい子が、察知スキルを持っているというのを今更ながら思い出す。だから端にいるのか。


 

 「はーい、中学生ですー」


 「お兄さんは高校生くらいですかー?」



 「そうだよ。良かったらフレンド登録しない?」



 「いいですよー。はい、メルも」



 驚くほどスムーズに話が進む。

 初対面とは思えないほどのフランクさだ。


 コミュ力が高いのか、こういうのに慣れているのか。

 いずれにせよ好都合だ。


 

 「ち、ちょっとリリ!? そんな簡単にフレンド登録とかしていいの!?」



 しかし、もう一方の子はそうでもなかった。

 相対的にガードが固そうだな。


 ま、これが普通の反応だろ。

 この、リリって子の反応が少しおかしいのだ。


 

 「あのね、メル。私達ってフレンド全然いないんだよ? この機会に強いプレイヤーのフレンドになっといた方がいいって思わない?」



 「そ、それは……そう……だけど」



 「じゃ、決まりねー。ほら早くー」



 リリがコソコソとメルに耳打ちしていたが、全て聞こえている。これでも基礎パラメータは高いのだ。


 リリとメルの二人ともとフレンド登録する。

 ついでにカムイにも申請させといた。


 あいつも何だかんだ人見知りだからな。

 俺らのパーティ以外のプレイヤーでフレンドがいるのか怪しい。


 

 「それにしても凄いね君達。二人パーティでここまで強いのは珍しいよ」


 

 「いえいえ、ロイさんの方が強いじゃないですか」


 

 「俺らの場合は四人パーティだからなぁ。効率っていう面だと悪いんだよ」


 

 このゲームのパーティは、メンバーの数だけ経験値が割られる。二人なら二等分、三人なら三等分だ。


 はっきり言って、ソロが最も経験値的には美味しい。

 しかし、その分のリスクがある。


 単純に魔物が強いのだ。

 パーティで挑んでも普通に勝てない時があるほどに。


 六人のフルパでも、ボコされる。

 そんな中にソロで挑むような馬鹿は少ない。


 人数を掛けて確実に倒した方がいいのだ。

 一部の強者を除いて。


 それが、プレイヤーランキング上位の中でも更に上位のプレイヤー達。サクヤさんやエリカさんだな。


 ソロでも戦えるって純粋に凄い。

 そして、それと同時に二人パーティでこの場にいる二人も凄いのだ。


 

 「ねぇ、リリちゃん。察知の方は大丈夫なの?」



 メルの言ったことに同意する。

 察知スキルはかなり神経を使うと聞いたが……。

 

 こんなに話していて大丈夫なのだろうか。

 


 「うん、大丈夫だよー。私のスキルは常時発動型のスキルだからねー」



 なんと。

 それは羨ましいな。


 常時発動型スキルは珍しい。

 このゲーム内で、分かっている所持者も二桁いないのだ。


 レアスキル。

 本当に羨ましいな。


 

 「それは便利だな。俺はそっち系のスキルは持ってないからなぁ」



 「あははー。そうでもないよ? だっ――」



 ――そう言葉を発しようとした瞬間。

 リリが勢いよく後ろを振り向く。


 かなり切羽詰まった様子だ。

 咄嗟に、腰に刺さった剣を抜こうとする。


 が、遅かった。


 俺が手を伸ばし始めたと同時に。

 リリが向いた方向の茂みから、ウルフが現れる。


 体長はかなり大きい。

 恐らくレベル5はある大きさだ。


 ウルフは速い。

 俺との距離を一秒も経たずに詰める。


 狙われたのはリリ。

 一番近くにいたのだから当然だ。


 リリの方を見る。

 不幸なことに、リリも武器を抜くのが遅れていた。


 俺より早くウルフに反応していたから、武器を抜くことができたと思ったのだが……遅かったみたいだ。


 ウルフはリリに接近する。

 その凶悪な爪を振り下ろす。


 誰しもがリリの大ダメージを予視し、動きが止まる。

 

 しかし。

 その瞬間にリリは動いた。


 今にも、爪を振り下ろさんとしているウルフに。

 正面から一歩近づく。


 間合いが崩れたため、ウルフの爪は当たらない。

 身体の大きさが災いしたのだ。


 文字通り、懐に入り込んだリリ。

 だが、その手には何も無い。


 ……と思った。

 リリが右手の拳を強く握りしめると同時に、リリの手が淡く光った、気がする。


 それを認識した瞬間、リリの右手が真上に閃く。

 それは見事にウルフの顎を捉えていた。


 リリを超える身体を持つウルフを宙に浮かせる。

 その光景だけでも、今の威力がわかってしまう。


 ウルフは無防備に地面に横たわる。

 が、ポリゴンとなって消滅しない。


 {気絶(スタン)}だ。

 頭や顎などに強い衝撃を与えると、低確率で発生する状態異常。


 効果時間は10秒だ。

 強力な状態異常な故、これを出すのは難しい。

 今みたいな正確無比な攻撃が必要となるからだ。


 リリは落ち着いた様子で、腰に刺さった短剣を抜く。

 そして、ウルフの胸部に刺す。首を落とす。


 ウルフはポリゴンとなり消えた。

 


 「お見事」



 「ありがとー」



 今のスキルが何なのか、それを聞きたい衝動を我慢して。

 とりあえず、賛辞の言葉をかける。


 

 「おい、今のスキルは何だ?」



 横から知らない男が入ってきたな。

 誰だこいつ。

 

 本人のスキルを聞くってマナー違反だろ。

 誰でも自分のステータスは隠したいはずだからな。


 それが上位プレイヤーなら尚更だ。

 今回のレイドに参加したなら、そこら辺を理解してほしい。


 そうは思いながらも、いつの間にか隣にいるカムイに聞く。



 「おい、あいつ誰だ? 知ってるか?」



 「確か、ランキング20位前後の……オニギリムスビって名前のやつだった。名前が凄いから覚えてる」



 見るからにヤバそうな名前だな。

 何だよ、オニギリムスビって。



 「え? えー、あのー」



 ほら、リリも困ってる。

 答えたく無いが、答えないのも不味いと思ったんだろう。


 

 「お、おっと。すいませんな。余りに凄かったものですから、つい。私、オニギリムスビと申します」


 「お嬢さん方のお名前は?」



 咳払いしながら、そう言い直す。

 さっきの雰囲気とは一転して良い人そうな感じだ。


 稀に見る、頭のおかしい奴とは違うようだな。

 大丈夫そうで安心した。


 

 「私がリリで、こっちがメルって言いますー」



 「おお、そうですか。良ければフレ登しませんかな?」



 「フレ登? まぁー、いいですよ」



 会話は進む。

 リリは友達多そうだな。


 何となくそう思ってしまった。

 ちょっと羨ましい気もする。


 メルの方は大人しい。

 カムイと気が合いそうだな。


 ちなみにフレ登というのは、フレンド登録の略だったりする。

 誰が最初に言い始めたのか分からないが、略す意味があまり感じられないな。


  

 「あ、オニギリムスビさん。俺ともフレ登いいかな?」


 

 「ムスビだけで良いですよ、ロイさん。もちろんフレ登しましょうか」



 俺はムスビさんともフレンド登録した。

 ついでにカムイのもしといた。これは忘れない。


 

 「しかし、リリさんは凄いですねぇ。私は身体を動かすのが苦手で苦手で。気づいたら遠距離からのネチネチタイプになってましたよ」



 ムスビさんは苦笑しながら言う。

 身体を動かすのが苦手というのはリアルでだろうか。


 リリにマナー違反ともなる事を聞いた詫びなのか。

 だが、遠回しに伝えようとしても伝わらないと思うがな。


 

 「メルさんも魔法タイプですよね、見た感じから。語れることが多そうです」


 

 「い、いえ。そんなことはないです、よ?」



 苦笑いしながら言うメル。

 初対面だし仕方ないな。


 逆にこれに対応できるリリがおかしい。

 繰り返す。リリがおかしいのだ。


 

 「……!? 前から何か来る」



 リリが前を見ながらそう言う。

 前、とは俺らが歩いている方向だ。


 

 「前方から何かがこちらに向かっています!」



 リリと同時に、別のプレイヤーが叫ぶ。

 そんなに慌てることなのか?



 「そんなに大変なの?」



 俺と同じ疑問を口にしたのはエリカさんだ。

 叫んだプレイヤーに聞いている。


 そのプレイヤーは一瞬驚いたのか言葉に詰まっていたが、はっきりとした口調で告げた。


 

 「妙なんです。魔物の気配には思えないし、プレイヤーがこんなところにいる訳もありませんから」


  

 そうなのか?

 というか、魔物の気配とそうではない気配の区別とかつくのが凄いな。


 俺はリリの方を見る。

 その視線を感じたのか、リリと目が合った。



 「確かに変だねー。魔物ってよりはプレイヤーに近いかな?」



 俺の意を汲み取ってくれたようだ。

 なかなか聡い子だな。


 しかし、魔物よりプレイヤーに近いのか。

 まさか本当にプレイヤーってことはないよな。


 まあ、ないか。

 ここは森エリア。それもかなり深いところだ。


 ここに来れるプレイヤーはごく僅か。

 それもここにいるメンバーでも一握りしか無理だろう。


 そうなると、本当に何が近づいてきているのか分からない。

 魔物ではない何か。


 イベントでも始まるのか?

 少し期待してもいいかもしれない。



 「全員止まれ。武器を構えるんだ」



 先頭にいたブランさんが指示する。

 全員が完全に戦闘態勢に入る。


 

 そして、それは現れた。


 太陽の光も遮られるような深い森。


 その林の隙間から姿を現す。



 白銀の全身鎧を纏った騎士。



 僅かな光さえ反射しているように見える。


 その佇まいは宛ら歴戦の戦士だ。


 

 俺の身長ほどある、またも白銀の戦斧。



 長い柄に片刃の戦斧。

 

 その大きさは明らかに人が扱えるものではない。


 それを片手で持つ白銀鎧の膂力は人知を越えているだろう。


 その証拠に、鎧の下に人がいる気配がない。

 

 現環境では全身鎧も珍しいのに、如何にもレアそうな白銀の鎧に白銀の斧とは冗談ではない。


 32人の息を飲む音が聞こえた気がした。


 得も言われぬ緊張感が辺りを包んでいる。


 そして。


 その沈黙は。


 予想だにしない言葉で破られた。



 

 『――我の(ことば)が聞こえぬか、この雑種(プレイヤー)共』




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